岩国市ミクロ生物館

岩国市ミクロ生物館 メールマガジンバックナンバー

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 このメールは、過去にミクロ生物館主催の行事に参加
 された皆様、および当館からの情報配信を希望された
 皆様にお送りしています。各種お問い合わせ、配信
 停止についてはこのメールの後方をご覧ください。
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 ■━━  岩国市ミクロ生物館ニュース  ━━■
        --- 第 6 8 号 ---

  * * * * ミクロの世界にようこそ! * * * *

“本誌はミクロ生物好きな方のネットワークづくり
サポートを目的として発刊されました。ここでしか
得られない情報など特典盛りだくさんで毎月26日
(26日が火曜日の場合は27日)に配信致します。
ぜひご活用ください!”

<目次>

☆ミクロ生物スペシャルコラム
 “謎多き生物・放散虫”
  国立科学博物館 植物研究部
           特別研究生  大金 薫

1】専門家も感動の造形美!「放散虫シルバーモデル」
  の委託販売を9月より開始します!

2】山口県東部海域で魚類をへい死させる赤潮原因藻
  カレニア・ミキモトイの赤潮警報が発令中!
  漁業関係者の皆様はご注意ください

3】7月27日から8月26日までのミクロ生物館NEWS

4】<お知らせ>9月の休館日について

◎ 編集後記


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      ミクロ生物スペシャルコラム
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      *** 謎多き生物・放散虫 ***

           大金 薫(OOGANE、 Kaoru)
     国立科学博物館 植物研究部 特別研究生


 私は、国立科学博物館で放散虫(ほうさんちゅう)
という生物の研究をしています。放散虫は、それほど
よく知られた生物ではありません。しかし、大変に
面白い生物です。

 放散虫は 0.02 〜 0.2 mm ほどの非常に小さな生物
です。単細胞で、アメーバ状の体を持っています。
放散虫の細胞からは軸足(じくそく)という糸のような
器官が多数放射状に伸びています。この軸足は、伸ばし
たり縮めたりすることができます。これで浮力を調節
していると言われています。

 放散虫は小さな生物でありながらも、骨格を持って
います。この骨格は硫酸ストロンチウムや二酸化ケイ素
という物質でできています。このうち、二酸化ケイ素の
骨格は放散虫の死後も分解されず、海底に堆積し、化石
となります。最も古い放散虫化石は、約5億年前の地層
から産出しています。このことから、放散虫は遅くとも
5億年前には出現したと言われています。これ以降、
放散虫は様々な種が出現・絶滅を繰り返しつつ、現在に
至ります。放散虫化石は盛んに研究されていて、進化
系統、生息年代、分布といった、化石として基本的な
データもそろっています。一方で、生物としての放散虫
の研究はあまり進んでいません。何を食べているのか、
どうやって繁殖しているのか、天敵はいるのか、
そういった生物として基本的なことすら謎のままです。

 そこで、私は放散虫のうち化石となるグループを対象
に、生物としての放散虫の研究をしています。私は、
元々は放散虫の化石の研究していました。しかし、放散
虫そのものがどうやって生きていたのか未だ謎のままで
あるため、化石データをどう解釈すればいいのか、悩み
どころでした。あるとき、生きた放散虫の生態が分か
れば、もっと化石のことも分かるのではないかと考え、
生きた放散虫の研究に取り組むようになりました。
現在の具体的な研究テーマは、放散虫の共生藻類です。
化石となる放散虫を対象に、共生がどの程度普遍的な
現象なのか、共生と進化系統に関係があるのかを調べて
います。

 化石となる放散虫は、陸から離れたところに住んで
います。なぜか、東京湾や瀬戸内海のような陸の影響を
強く受ける海域にはほとんどいません。このために、
毎年沖縄や父島のような離島に行ったり、調査船で外洋
に出たりして、サンプルを採集しています。この夏は、
北海道大学水産学部の練習船・おしょろ丸の実習航海に
ご一緒させて頂き、博多-那覇-東京-函館と35日程の
航海をしてきました。

 この航海では、放散虫の飼育を試みました。放散虫は
飼育が難しく、長くても60日程度の飼育に成功した例が
あるのみです。特に繁殖に成功した例がありません。
このため、生きた放散虫を用いた飼育実験、特に比較
実験を行うことが難しくなっています。私は航海中、
どうすればより長く放散虫を元気な状態で維持できるか
実験しました。

 さて、おしょろ丸の航海のような海洋調査を行う航海
では、乗船しているのは私のようにプランクトンの採集
をする研究者ばかりではありません。化学分析のために
採水をする人、センサーを下ろして物理的な計測を行う
人、未知の生物を求めて海底の泥を採集する人、魚類の
採集を行う人など、様々な分野の研究者が乗船してい
ます。私にとって未知の分野も多く、色々な意味で刺激
になります。特に今回の航海で印象的であったのが、
流し網でした。流し網は、カーテン状の網を海に入れて
魚を採る刺し網の一種で、非常に効率の良い漁法だそう
です。しかし、あまりにもたくさんの魚が取れてしまう
ため、現在では原則禁止されている漁法だそうです。
ただ、ごく少数の船だけが漁獲調査のために特別な許可
を得て、流し網を行っているのだそうです。今回の航海
では、東経155°の経線に沿って何点か流し網を入れ
ました。南の方ではアカイカやシマガツオが、北に行く
に従ってマイカやサケなどがかかるようになり、
はっきりと生息している魚類の種類が変わっていくと
いうことを実感しました。この変化は、私が採集した
放散虫の群集とも重なる部分が多く、色々な意味で海が
繋がっていると実感しました。

 放散虫はまだまだ謎の多い生物で、研究したいテーマ、
研究すべきテーマがたくさん残されています。しかし、
生物としての放散虫を研究する研究者は世界中でも少数
になっている現状です。もっともっと多くの人が放散虫
に興味を持ち、研究をしてほしいと思います。


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1】専門家も感動の造形美!「放散虫シルバーモデル」
  の委託販売を9月より開始します!

今号の大金博士のコラムでも採り上げられた放散虫は、
その謎多き生態はもちろんのこと、細胞本体の死後も
残る二酸化ケイ素でできた殻が持つ造形美は、美術館
の作品に匹敵すると言って過言ではありません。

また、示準化石として、死後も地層ができた年代を
私たちに教えてくれるなんて、なんとも素敵な話では
ありませんか。

その放散虫が持つ魅力を本物の銀!で再現したRC GEAR
特製放散虫シルバーモデル。
銀細工が持つ造形美に加え、専門家も驚きの精緻さを
兼ね備える本モデルは、ペンダントやストラップなど、
アクセサリーとしての使用はもちろん、放散虫化石に
関する講義にも活用できてしまう、至高の逸品です。

このたび、RC GEAR様のご協力により、当館でも委託販売
を行うことになりました!

取扱商品は以下の通りです。
・放散虫パンタネリウム コレクションモデル
http://rcgear.cart.fc2.com/ca54/134/p-r30-s/

・ポドキルティス進化形態シリーズ
(ポドキルティス属の進化を追ったシリーズ!)
http://rcgear.cart.fc2.com/ca37/125/p-r30-s/
http://rcgear.cart.fc2.com/ca37/126/p-r30-s/
http://rcgear.cart.fc2.com/ca37/127/p-r30-s/

・ポドキルティス・ゲーテアナ ペンダント
http://rcgear.cart.fc2.com/ca37/124/p-r30-s/

・サイトウム属 ペンダント
http://rcgear.cart.fc2.com/ca37/123/p-r30-s/

・トリアエノスファエラ・ミヌタ ペンダント
http://rcgear.cart.fc2.com/ca37/122/p-r30-s/


以下の紹介動画もぜひご覧ください。
銀が持つ光沢と模型の精緻さが良くわかります。

パンタネリウム(殻孔の数が2動画で異なります)
http://youtu.be/0vkl9gLvCnk
http://youtu.be/LO0GbWpq7cI

当館でも放散虫モデル一式の在庫を取りそろえて
おりますが、もちろん、RC GEARホームページ
http://www.rcgear.jp/
からもご購入が可能です。

どのモデルも、金属加工素人の私からみると
「どうやったらこんなに緻密でリアルに作れるの?」
と驚くばかりですが、単に緻密なだけでなく、その
正確さは博物館に展示される高価な標本模型に勝るとも
劣りません。

放散虫研究者として世界の最前線でご活躍の東北大学
大学院理学研究科 鈴木紀毅先生も
「放散虫の専門家として言わせれば、GC GEARの放散虫
モデルはくやしいほどに素晴らしい。」
と絶賛されています。

なお、以前のメールマガジンでもご紹介しましたが、
当館でも
山口大学理学部 鎌田 祥仁 准教授
愛媛大学理学部 堀 利栄 准教授
国立科学博物館 大金 薫 博士
のご協力により、放散虫微化石の実物や学習パネル、
ぬいぐるみ等を展示しております。

シルバーモデルご購入でご来館の際はぜひ、実物が
もつ魅力の数々とともにお楽しみください。


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2】山口県東部海域で魚類をへい死させる赤潮原因藻
  カレニア・ミキモトイの赤潮警報が発令中!
  漁業関係者の皆様はご注意ください

渦鞭毛藻(うずべんもうそう)カレニア・ミキモトイ
(Karenia mikimotoi)は、過去に100億円を越える規模
の漁業被害を引き起こしてきた赤潮原因藻の一種で、
山口県内でも県水産振興課技師の方々によって重点的に
監視が行われています。

本種が山口県東部の広島湾から大島水道にかけて、
この数日、大発生しておりますので漁業関係者の皆様
はご注意ください。

どら焼きのように扁平で丸みを帯びた、茶色い姿は
泳ぎ方もひらひらと優雅でかわいらしいのですが、
ひとたび大発生すると、養殖いけす内の魚をはじめ、
多くの魚介類をへい死させてしまう凶暴な一面を持って
います(ただし、人には無害とされていますので、
海水浴等は問題ございません)。

また、海水面より少し深い場所で増殖し、水面と水底を
行ったり来たりするため、見るからに赤潮、という状態
になっていなかったり、一見収まったようにみえても
注意が必要です。

当館では本種の生きている姿を常時顕微鏡展示しており
ますので、魚介類を大量へい死させてしまうミクロ生物
とはいったいどのような生物なのか、詳しく学ばれたい
方はぜひお立ち寄りください(「日本の海産プランク
トン図鑑」もお勧めです)。

なお、山口県水産振興課が運営・管理されている
「海鳴りネットワーク」

http://www.pref.yamaguchi.lg.jp/gyosei/suisan-s/
uminari/9/index.htm

では最新の赤潮警報発令状況について、随時確認が可能
です。こちらもぜひご活用ください。


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3】7月27日から8月26日までのミクロ生物館NEWS

※ 詳細はミクロ生物館ホームページをご覧ください
 (一部記事の写真は近日追加掲載予定です)

7月27日>
やまぐちフラワーランドで科学教室を開催しました
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page557.html

7月30〜31日>
科学の祭典全国大会(東京・科学技術館)に出展しました
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page558.html

8月1日>
ミクロ生物館特別講演会「微生物とヒトの病気」を実施
しました
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page559.html

8月3日>
岩国高校SPP研修(第一回)を実施しました
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page560.html

8月4・5日>
自由研究相談会を実施しました
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page562.html

8月5日>
KRYラジオの番組に出演しました
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page564.html

8月7日>
科学の祭典由宇会場に出展しました
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page565.html

8月8日>
由宇中学校で総合学習を行いました
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page566.html

8月10日>
広島女学院生物部の皆様が体験学習活動を行いました
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page567.html

8月11日>
岩国高校SPP研修(第二)を実施しました
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page570.html

8月12日>
岡山県中学校教育研究会の皆様が当館にて研修活動を
行いました
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page570.html

8月16・17日>
「おもしろサイエンスinソラール2011」に出展しました
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page572.html

8月19日>
錦ふるさとセンターにて科学教室を行いました
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page573.html

8月23日>
岩国市立米川小学校にて科学教室を行いました
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page574.html

8月24日>
岩国高校SPP研修の報告会を行いました
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page575.html

8月25日>
岩国市玖珂総合センターにて科学教室を行いました
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page576.html

8月26日>
由宇中学校で総合学習を行いました
(ホームページ記事は準備中)

他にも、ほぼ毎日、自由研究活動のため、たくさんの
小・中学生が研究活動をされたり、企業や個人の方々が
研究相談や実験のため、当館を活用されました。
皆様、本当に有り難うございました。


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4】<お知らせ>9月の休館日について

館内設備保守・点検ならびに調査・研究活動のため、
公園全体の休業日である火曜日に加え、以下の日程を
休館日とさせていただきます。

9月2日(金)、9日(金)、16日(金)、26日(月)

以上、なにとぞご了承願います。

※ 諸事情により、休館日が変更になる場合が稀に
ございます。最新の情報は潮風公園予定表
http://www.shiokaze-kouen.net/content/calendar.php
をご覧ください。


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  編集後記
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 休日ゼロで毎年大忙しの8月も気が付けばあと数日。
 今年も自由研究、出前授業、教材の企画・制作など
 など大忙しで、本当にあっという間の一ヶ月でした。
 仕事を増やし過ぎてしまい、睡眠時間的にかなり厳
 しい日もありましたが、子供達の目を輝かせて研究
 に取り組む姿や地域・全国の皆様に支えられ、有意義
 な活動を展開することができました。この場を借りて
 厚く御礼申し上げます。しかしながら、ここに来て
 あろうことか軽い食中毒?に苦しめられてしまい、
 発刊日の夕方(閉館後)から深夜にかけてダウンして
 しまいました。このハプニングによって発刊が1日
 ずれ込んでしまいましたこと、心よりお詫び申し上げ
 ます。今はおかげさまで大丈夫です。本日も近所の
 中学校での指導があるため、弱っている場合ではあり
 ません。この時期、皆様も食中毒にはどうかお気を
 付けください。また、今後の企画展にも9月より注力
 致します。こちらもどうぞご期待ください。(末友)
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 住所:〒740-1431
 山口県岩国市由宇町有家浦
 潮風公園みなとオアシスゆう 交流館内
 Fax:0827-62-0156(24時間受付)
 E-mail:micro@shiokaze-kouen.net
 Website: http://shiokaze-kouen.net/micro

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●次号の配信日は 9月26日です。お楽しみに!

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岩国市ミクロ生物館ニュースは、これからも
内容の充実に努めてまいります。
皆様のご意見、ご感想等、お待ちしております。
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発信元: 岩国市ミクロ生物館
館長・メールマガジン担当: 末友 靖隆

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