岩国市ミクロ生物館

岩国市ミクロ生物館 メールマガジンバックナンバー

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 このメールは、過去にミクロ生物館主催の行事に
 参加された皆様、およびミクロ生物館からの情報
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 後方をご覧ください。
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■━━  岩国市ミクロ生物館ニュース  ━━■
       --- 第 6 7 号 ---

  * * * * ミクロの世界にようこそ! * * * *

“本誌はミクロ生物好きな方のネットワークづくり
サポートを目的として発刊されました。ここでしか
得られない情報など特典盛りだくさんで毎月26日
(26日が火曜日の場合は27日)に配信致します。
ぜひご活用ください!”

<目次>

☆ミクロ生物スペシャルコラム
 “ストラメノパイル : 珪藻とその仲間たち”
    神戸大学 内海域環境教育研究センター
        学術推進研究員  甲斐 厚

1】8月1日 ミクロ生物館特別講演会
 「微生物とヒトの病気」を開催します
 予約不要、参加費無料! ぜひお越しください

2】8月7日「青少年のための科学の祭典 in 岩国
  由宇会場」(岩国市)に出展します!
  ほかにもこの夏はイベント盛りだくさん!

3】6月27日から7月26日までのミクロ生物館NEWS

4】<お知らせ>8月の休館日について

◎ 編集後記


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      ミクロ生物スペシャルコラム
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 *** ストラメノパイル : 珪藻とその仲間たち ***

            甲斐 厚(KAI、 Atsushi)
      神戸大学 内海域環境教育研究センター
                学術推進研究員


 ミクロ生物としてなじみの深い藻類である珪藻を
含む“ストラメノパイル”という生物群がいます。
“Stramenopiles=ストラメノパイル”とは、
“stramen=ストロー”、“pile=毛”を意味する
ラテン語であり、遊泳のための推進器官である鞭毛に
ストロー状(=管状)の小毛が付いており、鞭毛の
推進力を逆転させていることに由来します。
ストラメノパイルは、光合成性の珪藻や、コンブ、
ワカメなどの大型の海藻である褐藻を含む不等毛藻
(オクロ藻)、菌類のような吸収栄養性の卵菌類と
ラビリンチュラ類、食作用で捕食するビコソエカ類、
寄生性のオパリナ類に分けられています。

<不等毛藻(オクロ藻) -最も多様化した藻類->
 不等毛藻は、中生代ジュラ紀における珪藻の大繁栄
を皮切りに出現し、海や湖沼などの水圏における一次
生産者として主要な役割を果たしています。当時、
陸上は恐竜の時代であり、陸上植物として既に巨大な
シダ植物が繁茂していたため、生命の歴史から見ると
その誕生はかなり最近の出来事であると言えます。
不等毛藻は、数μmしかないピコプランクトンから、
ジャイアントケルプのような数十メートルの海藻まで
多様な種で構成され、16ものグループ(綱)に分け
られており、現在の地球で最も多様化を果たした藻類
と言えます。

<珪藻 -ガラス細工の藻類->
 熱帯から北極、南極にかけて、淡水から海水、
ときには土や樹皮の表面までいたるところに生息して
おり、現在の地球上で最も普遍的な藻類であると言え
ます。またガラス質の殻を持ち、非常に繊細な造形
から様々な種類の珪藻の殻を並べてスライドガラスに
封入した珪藻プレパラートとよばれる作品も作られて
います(“diatom art”などの検索ワードでインター
ネット上の画像を検索するとみることができます)。

<黄金色藻 -変幻自在の藻類->
 ほぼすべての種が淡水域に生息しており、ヒカリモ
とよばれる種が有名で千葉県の竹岡では天然記念物に
指定されています。古い井戸や洞窟で、水表面
いっぱいに繁茂して水面が黄金に輝いて見えること
からこう呼ばれており、井戸や洞窟に差し込んでくる
弱い光を反射するために光るのではないかと考え
られています。また雪や氷上で増殖して黄色く染める
彩雪現象を引き起こす雪上藻(Ochromonas smithii)
など通常の淡水域だけなく特殊な環境でも観察され
ます。さらに混合栄養(mixotrophy)と呼ばれる
光合成をするだけでなく、バクテリアなどの捕食も
行うものや、土壌に生息し、退化的な葉緑体しかない
捕食性の鞭毛虫(Paraphysomonasなど)まで存在し、
不等毛藻の中でもその生息する環境や栄養様式に
おいてとりわけ変化に富んだグループと言えます。

<褐藻 -海の森->
 コンブやワカメなどの海藻であり、普段は細胞壁に
包まれた鞭毛を持たない栄養細胞で構成されています
が、遊泳細胞の鞭毛には、管状小毛が生えています。
褐藻は、一次生産者として重要な役割を果たしている
ほか、沿岸域で大規模な海中林を形成し、外洋ではサ
ルガッソー海に代表される流れ藻群落として、魚介類
に生息、繁殖域を提供している点でも、海洋生態系に
おいて重要な役割をしています。また最近の遺伝子
(DNA)配列を用いた分子系統解析から、褐藻と同じ
く細胞壁を持った単細胞や糸状体(細胞が数珠つなぎ
になってできた細い糸のような体制)の藻類とグルー
プを作ることがわかっており、現在のコンブやワカメ
のような大型の海藻も、元々は細胞壁を持つ微細な藻
類から分かれ、進化したのだと考えられています。

<卵菌類 -病原性を持つ菌的生活者->
 吸収栄養性、または寄生性の菌的な生活をする
原生生物であり、かつては真菌類(キノコやカビなど
の仲間)とされており、そのため偽菌類ともよばれて
います。褐藻同様に遊泳細胞の鞭毛に管状小毛がある
ことなどから、ストラメノパイルに分類されています。
ミズカビと呼ばれる仲間は、熱帯魚や、金魚の飼い主
には、水カビ病の病原虫として嫌われています
(もうひとつよく知られる熱帯魚や、金魚の感染症で
ある白点病は原生動物である繊毛虫が原因です)。
またツユカビの仲間であり、ジャガイモやトマト、豆
などの農作物に寄生して疫病を起こすフィトフトラ
(Phytophthora)は1845年〜1849年にヨーロッパで
当時の主食だったジャガイモの疫病として大流行し、
アイルランドを中心として深刻な食糧難を引き起こし
ました。

<ラビリンチュラ類 -陸と海をつなぐ分解者->
 卵菌と同様にかつては真菌類に分類されていた
紡錘形の細胞をもつアメーバ状の原生生物です。
吸収栄養性の種が多く、水面の落ち葉や水棲植物、
海藻の分解者として知られており、陸上植物を分解
してその有機物を水圏に供給するという特異な生態的
役割を持っています。春先に大量に風に飛ばされ、
我々を悩ませる花粉も水面に落ちるとラビリンチュラ
が分解しており、いくつかの種では餌として松の花粉
を水面にまいて採取されています。

<ビコソエカ類 -ミクロの生態系を裏で支える鞭毛虫->
 食作用によってバクテリアを捕食する鞭毛虫で、そ
の多くは細胞の後端を器物に付着させて半固着性の生
活をしています。ビコソエカ類は細胞サイズが小さく
種の分類が難しいため研究が進んでいませんが、分解
者であるバクテリアを捕食するため、生態系において
一般的に知られている分解者から分解産物を介した一
次生産者への食物連鎖とは異なり、分解者から捕食者
への直接的な連鎖経路を担い、その生態的な役割は非
常に興味深いと言えます。

<オパリナ類 -正体不明の原生生物->
 オパリナはカエルなどの消化管に寄生しており、
繊毛虫のように細胞表面に多数の鞭毛が生えています
が管状小毛はありません。かつては繊毛虫の一種と
考えられていましたが、遺伝子(DNA)配列を用いた
分子系統解析から、動物や、時に人に感染する病原虫
Blastocystis、他の原生生物を捕食するアメーバで、
球形の細胞から放射状に糸状仮足を伸ばす特徴的な
形態から太陽虫の仲間と考えられていたActinophrys
(タイヨウチュウ)、Actinosphaerium(オオ
タイヨウチュウ)などともにストラメノパイルである
ことが支持されています。オパリナ類は形態的に、
他のストラメノパイルと大きく異なり、管状小毛も
確認されていません。系統解析が明らかにした新たな
ストラメノパイルであり、その独自の進化が非常に
興味深い原生生物といえます。

 ストラメノパイルは、これまでの体制や栄養様式
(光合成、捕食、吸収(分解)栄養)に基づく五界説
における植物、菌、原生生物にまたがっており、
真核生物において有数の多様化を遂げた生物群である
といえます。またその生態系的役割や、人や農作物
への病原性などからこれまで考えていたよりずっと
人類の生活に身近で重要な存在であることがわかって
きています。ストラメノパイルについてさらに知りた
い人は以下のホームページでさらに詳しく紹介されて
います。

筑波大学 植物系統分類学研究室
藻類画像データベース ストラメノパイル

http://www.biol.tsukuba.ac.jp/~inouye/ino/st/
st_intro.html


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1】8月1日 ミクロ生物館特別講演会
 「微生物とヒトの病気」を開催します
 予約不要、参加費無料! ぜひお越しください

岩国市ミクロ生物館では、以下の日程で特別講演
会を開催致します。参加費無料、予約不要でどなた
でもご参加いただけます。皆様奮ってご参加くだ
さいますよう、宜しくお願い申し上げます。

日時: 2011年8月1日(月) 13時開始 14時終了

演題: 「微生物とヒトの病気」

講師: 西村 謙一 博士
  1931年 高知県生まれ。九州大学医学部卒。
  医学博士。西九州大学客員教授(脳神経外科
  専門医、救急医学専門医)

内容: 教科書で有名なミドリムシやゾウリムシ。
これらミクロな世界に生きる生き物たちのなか
には、私たちのからだの中に入り込み、ときに
悪さをするものもいることをご存じですか?
本講演ではそれら“怖〜い”ミクロ生物の知られ
ざる姿や病気について、専門家がわかりやすく
ご紹介致します。

定員: 24名(座席数)・当日参加可(予約不要)

対象: どなたでも可

料金: 無料

場所: 岩国市ミクロ生物館(潮風公園みなと
    オアシスゆう内) 体験学習室


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2】8月7日「青少年のための科学の祭典 in 岩国
  由宇会場」(岩国市)に出展します!
  ほかにもこの夏はイベント盛りだくさん!

8月7日の日曜日に、岩国市由宇町にあります山口県
ふれあいパークにて「青少年のための科学の祭典
in 岩国 由宇会場」が開催されます。

東京での全国大会とは異なり、「赤潮をつくる
ミクロ生物」をテーマに、実物を観察しながら
学習したり、模型を作ったりとお楽しみいただけ
ます!

また、当館以外にも、約20程度の科学ブースが
出展されますので、身近な科学について遊びながら
学べる良い機会になるかと存じます。

小学校低学年の方よりお楽しみいただける内容と
なっておりますので、ご来場可能な方はぜひ
お立ち寄りください。
皆様のご来場、心よりお待ち申し上げます。


ほかにも、岩国市ミクロ生物館では、先月号
でもお伝えしました「OCEAN! 海はモン
スターでいっぱい」展(鳥取県立博物館)や、
8月29〜31日にかけて東京の科学技術館にて開催
される「青少年のための科学の祭典 全国大会」、
そして随時好評開催中の「夏休み自由研究お悩み
相談会」など、この夏はさまざまなイベントを
実施致します。皆様ぜひご来場、ご活用ください。


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3】6月27日から7月26日までのミクロ生物館NEWS

※ 詳細はミクロ生物館ホームページをご覧ください
 (一部記事は近日掲載予定です)

7月3日>
山口県ふれあいパークと共催でミクロ生物模型作り
教室を実施しました
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page546.html

7月9日>
柳井高等学校で文化祭が開催されました(当館も
生物地学部の活動をお手伝いしました)
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page547.html

7月10日>
神東小学校子ども科学教室体験学習プログラム
「神東地域にすむミクロ生物調査」を実施しました
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page548.html

7月12日>
FMやまぐちの番組に出演しました
(HP記事未完成)

7月13日>
岩国高等学校で文化祭が開催されました(当館も
生物部の活動をお手伝いしました)
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page549.html

7月16日>
周南市大津島で湿原の調査を行いました
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page550.html

7月17日>
親子7組の体験学習会を実施しました
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page551.html

7月21日、22日>
大竹市玖波公民館で夏休みサマースクールを実施
しました
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page552.html

7月23日、24日ほか>
自由研究支援活動 好評実施中!(HP記事未完成)

7月24日ほか>
模型作り体験学習会を実施しました
(HP記事未完成)

7月25日>
大島商船高等専門学校と共同調査を実施しました
(HP記事未完成)

7月25日>
岩国市美川コミュニティセンターにて科学教室を
開催しました
(HP記事未完成)

7月26日>
岩国市美和公民館にて科学教室を開催しました
(HP記事未完成)


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4】<お知らせ>8月の休館日について

8月末までは、台風の直撃等緊急事態を除き、原則
無休となります。
ただし、当館は職員数の都合上、出張等により、
館内に職員が不在の場合がございますので、もし
来館のうえご相談等を希望される方がおられまし
たら、当館メールアドレス

micro@shiokaze-kouen.net

まで、お気軽にご連絡いただければ幸いです。

また、北海道から遠路はるばるやってきたクリオネ
たちですが、日曜日限定で展示を継続しております。
いつまで展示できるかは未定ですが、機会がござい
ましたらぜひ、応援にいらしてください。

※ 諸事情により、休館日が変更になる場合がござい
ます。最新の情報は予定表
http://www.shiokaze-kouen.net/content/calendar.php
をご覧ください。


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  編集後記
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 夏休み真っ只中、今年は例年にも増してホットな
 夏となっておりまして、毎日、朝起きてから夜中
 まで、全力疾走しています。ハードですが実に
 有意義な毎日です。嬉しいことに、当館には毎年、
 やる気に満ち溢れる小・中学生たちが、自由研究
 に訪れては、大きな成果をあげて帰られるのです
 が、ほんの少しのヒントを与えるだけでぐんぐん
 伸びてくれる彼ら、彼女らの将来が本当に楽しみ
 でなりません。どんなに疲れても、笑顔で「楽し
 かった!」と言ってくれる子供達の姿を見ると、
 とたんに疲れも吹き飛んでしまいます。ときに
 失敗したな、と思うこともありますが、かの
 Einstein博士も“Anyone who has never made a
 mistake has never tried anything new.”との
 ありがたい言葉を遺しておられますし、失敗を
 恐れず、これからも魅力的なプログラムや展示、
 教材の開発に取り組んでまいります。8月1日
 の特別講演会も、ご参加可能な方はぜひご来場
 ください。恐いミクロ生物のお話しですが、
 私たちの健康にもかかわる、とても大事なお話し
 です。              (末友)
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●岩国市ミクロ生物館 お問い合わせ先
 住所:〒740-1431
 山口県岩国市由宇町有家浦
 潮風公園みなとオアシスゆう 交流館内
 Fax:0827-62-0156(24時間受付)
 E-mail:micro@shiokaze-kouen.net
 Website: http://shiokaze-kouen.net/micro

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●次号の配信日は 8月26日です。お楽しみに!

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岩国市ミクロ生物館ニュースは、これからも
内容の充実に努めてまいります。
皆様のご意見、ご感想等、お待ちしております。
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発信元: 岩国市ミクロ生物館
館長・メールマガジン担当: 末友 靖隆

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岩国市ミクロ生物館 山口県岩国市由宇町潮風公園みなとオアシスゆう交流館内 TEL 0827-62-0160 [メール]