岩国市ミクロ生物館

岩国市ミクロ生物館 メールマガジンバックナンバー

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 このメールは、過去にミクロ生物館主催の行事に
 参加された皆様、およびミクロ生物館からの情報
 配信を希望された皆様にお送りしています。各種
 お問い合わせ、配信停止についてはこのメールの
 後方をご覧ください。
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■━━  岩国市ミクロ生物館ニュース  ━━■
       --- 第 6 5 号 ---

  * * * * ミクロの世界にようこそ! * * * *

“本誌はミクロ生物好きな方のネットワークづくり
サポートを目的として発刊されました。ここでしか
得られない情報など特典盛りだくさんで毎月26日
(26日が火曜日の場合は27日)に配信致します。
ぜひご活用ください!”

<目次>

☆ミクロ生物スペシャルコラム
 “小さな芸術家、円石藻(えんせきそう)”
  筑波大学大学院 生命環境科学研究科 助教
                 吉田 昌樹

1】6月4日「岩国と自然きずなフェスタ2011」に
  出展します! ぜひご参加ください

2】7月30、31日の2日間、「科学の祭典全国
  大会」(東京)に出展します

3】6月19日「第2回西日本原生生物コロキウム」
  が琵琶湖博物館にて開催されます

4】自由研究をこの時期からスタートしたい方に朗報
 です! 自由研究相談に随時個別対応致します

5】4月27日から5月26日までのミクロ生物館NEWS

6】<お知らせ>6月の休館日について

◎ 編集後記


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      ミクロ生物スペシャルコラム
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 *** 小さな芸術家、円石藻(えんせきそう) ***

  吉田 昌樹 (YOSHIDA、 Masaki)
    筑波大学大学院 生命環境科学研究科 助教

円石藻(えんせきそう)、というミクロの藻類が
います。円石藻は特にめずらしい生き物ではなく、
世界中の海におり、コップ一杯の海水を汲めば
たいていその中に入っています。このコラムを読んで
いる人たちなら、海水中の生物を顕微鏡で観察した
経験があって、そんなの見たこと無いよ、と思うかも
しれません。残念ながら円石藻は直径が数十マイクロ
メートル程度と、目に見える光を使う普通の顕微鏡
ではよく見えないくらい小さいのです(頑張れば
見えます)。それゆえに知っている人も少なく、図鑑
にもなかなか載っていません。ミクロ生物館の末友
先生が編集された「日本の海産プランクトン図鑑」
でも、あまりにも小さすぎるということで省略されて
しまいました(本を持っている人は136ページを開いて
みて下さい)。円石藻が好きな私としては大変に
悲しいことです。それはともかく、ミクロの生物図鑑
で「小さすぎ」と言われてしまうほど極小の生物なの
です。

今回はそんな小さな円石藻についてお話したいと
思います。円石藻は分類学的には「ハプト植物門」
という分類群に含まれる単細胞の藻類です。
細胞の中には細胞核やミトコンドリア、ゴルジ体、
それに葉緑体などの細胞小器官があり、光合成を
行ってエネルギーを得ています。鞭毛(べんもう)
を生やして泳ぐ円石藻もいます。またハプト藻の仲間
はみな「ハプトネマ」という毛を一本持っていて、
これでバクテリアを捕まえたり、障害物を検知したり
と便利に使っています。ハプト藻は海・池・湖など
いろいろなところに棲んでいますが、円石藻の仲間は
海だけに棲んでいて、海を漂ったり泳いだりして生活
しています。

藻類なのに「石」とは変な名前ですが、円石藻は
その名の通り、円(まる)い石「円石(えんせき)」
を作る藻類なのです。作った円石は自分の周りに
並べます。
以下のページより、並べた様子をご覧ください。

筑波大学 植物系統分類学研究室の写真:
http://www.biol.tsukuba.ac.jp/~inouye/ino/etc/
coccolithophorids.jpg

もっと見たい人は「coccolith」「coccolithophore」
(それぞれ「円石」「円石藻」の意味です)などの
言葉で、インターネット上の画像を検索してみてくだ
さい。幾何学的で不思議な形をした円石藻がたくさん
見つかると思います。この円石は炭酸カルシウムの
結晶でできています。炭酸カルシウムは石灰質とも
呼ばれ、鉱物として考えれば方解石(ほうかいせき、
カルサイト)や霰石(あられいし、アラゴナイト)
になります。このメールマガジンの第37号で木元先生
が有孔虫について書かれていますが(以下のURLを
ご参照ください)、

http://shiokaze-kouen.net/micro/content/mail2
.php?nmb=355

その骨格と同じ材質です。有孔虫も非常にユニークな
形状をしている一方、円石藻も有孔虫に負けない
美しい形をしています。もし円石藻が星砂のように
肉眼で見える大きさだったならば、きっと同じように
人気のお土産物になっていたでしょう。残念ながら
最初に書いたとおり、円石藻は非常に小さく、電子
顕微鏡を使わなければ形が分かりません。
先ほどの画像も全て電子顕微鏡を使って撮影された
写真です。

円石には細胞の中で作られるものと、細胞表面で直接
作られるものとがあります。細胞の中にある円石の
工場は「ココリス小胞」という袋で、ここに材料で
あるカルシウムが運ばれてきます。円石の形成には
多糖やタンパク質など様々な物質が関わっていますが、
詳しいことはまだ分かっていません。円石は属や種
ごとに実に様々な形をしていますが、どんな物質が
どうやって円石の形を決めているのか、その形態制御
も謎に包まれています。また、円石は細胞内で作ら
れた後に細胞表面に配置されるのですが、どうやって
適切な位置に置かれるのかも分かっていません。
円石藻はまだまだ研究が必要な生物です。

ところで、円石は特徴的な形をしているので、形を
見れば円石藻が同定でき、すぐに名前が分かりそう
です。実際、今までに多くの円石藻が円石の形態に
基づいて記載・命名されてきました。しかし、研究が
進むに従い、困ったことが明らかになります。
それは円石藻がたいてい2種類、種によってはもっと
たくさんの種類の円石を作るということです。
つまり同一人(植)物でも、その時持っている円石に
よって全く見た目が変わってしまうのです。中には
円石を作らなくなってしまう円石藻もいて、そうなる
と円石藻なのかどうかも外見では分かりません。
円石の形が変わるのは、円石藻の「生活環」が進む
ことによります。これは円石藻を培養して、その
生活ぶりを一部始終眺めていないと把握できません。
しかし円石藻は一部の種類を除いて培養が非常に
難しく、なかなか生活環を明らかにすることができ
ないのです。円石藻は化石も多く産出しますが、
円石しか残っていない化石種ではこの問題は確かめ
ようがありません。円石藻の化石は示準化石
(しじゅんかせき:地層の年代を推定する手がかり
となる化石)や示相化石(しそうかせき:当時の環境
を推定する手がかりとなる化石)としての意味があり、
種の同定を正しく行うことは地質学的にも重要なこと
です。学術的な話を抜きにしても、全く見た目が違う
円石藻のどれとどれが本当は同じ種なのか、という
ことは、生物好きならばとても気になるところです。

化石の話をしましたが、円石藻は約3億5千万年前の
石炭紀ごろには出現し、現代まで生き続けてきたと
考えられています。円石藻は光合成で二酸化炭素を、
円石の形成で海水中の炭酸水素イオンを使うため、
大気中の二酸化炭素濃度の変動に大きく関わって
きました。そのため、円石藻は地球温暖化の軽減
にも役立つのではないかと考えられ、環境問題の
視点からも研究が行われています。現在最も多く
存在し、また有名なEmiliania huxleyi(エミリア
ニア・ハクスレイ)という円石藻では、ゲノム
プロジェクトが進められています。これは全遺伝子
を含めた円石藻の「設計図」を読み解き、様々な
方面の研究に役立てようという計画です。今はまだ
解読が不完全ですが、この計画が完了すれば円石藻
の研究が飛躍的に進むことが期待されます。飛躍的
に、というよりも、そこでようやく研究の基盤が整う
に過ぎないのかもしれません。そもそもこんな立派な
円石が何のためにあるのかという理由すら、まだ
誰にも分からないのです。小さな体にいろいろな期待
を背負った円石藻ですが、小さな藻類の大きな役割を
考えることも、また単純にその美しい形を眺めること
も、ミクロの生物の楽しみ方であると思います。


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1】6月4日「岩国と自然きずなフェスタ2011」
  に出展します! ぜひご参加ください

6月4日の10時から15時まで、岩国市役所本庁
1階ホールにて「岩国と自然きずなフェスタ2011」
が開催されます。
市水道局や環境局、ミクロ生物館、それに市内の
企業などがブースを展開し、水道や環境のことに
ついて楽しく学んでいただける祭典となっており
ます。
また、各ブースでの工作やゴーヤの苗など、素敵な
プレゼントもあります!

ミクロ生物館でも「錦川や下水処理場にすむミクロ
生物の観察」「赤潮原因プランクトン“ヤコウチュ
ウ”の模型作り」など、各種ブースを展開致します!

入場無料ですので、お近くにお住まいの皆様はぜひ
お気軽にお立ち寄りくださいませ。

市役所本庁は、JR岩国駅前の市バスに乗車5分、
“市役所”停留所目の前にございます。

市役所へのアクセス
http://www.city.iwakuni.lg.jp/www/contents/
1142595271141/index.html


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2】7月30、31日の2日間、「科学の祭典
  全国大会」(東京)に出展します

7月30、31日の両日、東京の科学技術館にて開催
されます「科学の祭典全国大会」に、当館も岩国市
科学センターとの共同出展の形で出展致します。

タイトルは「ミクロの世界を“体感”しよう!」。
肉眼では見えないけれど、実は身近な存在である
微小生物の世界を顕微鏡観察や模型作りを通じて
体感いただける内容となっております。

小学校低学年の方でもお楽しみいただける内容と
なっておりますので、全国大会に来場される方は
ぜひ、当館ブースにもお立ち寄りくださいませ。
皆様のご来場、心よりお待ち申し上げます。

(参考)科学の祭典ホームページ
http://www.kagakunosaiten.jp/index.php


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3】6月19日「第2回西日本原生生物コロキウム」
  が琵琶湖博物館にて開催されます

原生生物関係の研究室や小・中・高等学校の先生方
、高等学校の生徒さんを対象にした研究集会が6月
19日(日)に滋賀県立琵琶湖博物館にて開催され
ます。

(以下、大会案内より引用)

この研究会は、原生生物を研究材料とする幅広い
分野の研究者と、原生生物を生物学教育に利用する
ことをお考えの小・中・高等学校の先生の集まりと
して、昨年より西日本を中心に講演会や研究交流を
行う場として活動を行っています。
平成24年度から新しい高等学校の学習指導要領が
適用される予定ですが、この中でも実験生物として
の原生生物などミクロ生物の利用価値が一段と
高まることが予想されています。
この研究会では、最新の研究内容の紹介に加え、
教育の現場での原生生物の具体的な利用方法に
ついても考えていきたいと思います。

日時:6 月19 日(日)13:00-18:00

世話人:楠岡 泰(滋賀県立琵琶湖博物館)

場所:滋賀県立琵琶湖博物館
   http://www.lbm.go.jp/

懇親会:19:00-21:00

*講演予定

 13:00-13:20 大塚泰介(琵琶湖博物館)
 「たんさいぼうの会」のこれまでとこれから

 13:20-13:40 有田重彦(琵琶湖博物館はしかけ)
 エンジニアから見た珪藻の「かたち」

 14:00-16:00 一般講演

 16:00-18:00 体験実習
 「プランクトンの模型作り」

*会場への交通:
JR 琵琶湖線草津駅下車、草津駅西口から、近江鉄道
バス、烏丸下物線烏丸(からすま)半島行き乗車、
琵琶湖博物館前下車。(バス所要時間約25 分)

*参加費:無料
(コロキウム自体の参加は無料ですが、博物館を
見学する場合には別途入館料が必要です)

コロキウム終了後、JR 草津駅近くで懇親会を予定
しています(会費:一般4000 円、学生 1000 円程度。
会費は懇親会場で集めます)。

講演会および体験実習の参加希望者は6月6日(月)
までに電子メールで下記へお申し込みください
(当日の飛び入り参加も歓迎します)。

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<返信欄> 第2回西日本原生生物コロキウム
に参加される方は、以下をメールにて洲崎敏伸
(神戸大学)までご返送ください。
(返信先:suzaki@kobe-u.ac.jp)

ご氏名:

ご所属:

連絡先:
TEL
FAX
E-mail

講演会: 参加者数(計 名)
同伴者名( )

体験実習: 参加者数(計 名)
同伴者名( )

懇親会: 参加者数(計 名)
同伴者名( )

〜〜〜〜〜〜
研究発表を申し込まれる方は以下にもお書き
ください

演題:

発表者氏名、所属:

口頭発表・ポスターの別:

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皆様のご参加、心よりお待ち申し上げます。


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4】自由研究をこの時期からスタートしたい方に朗報
  です! 自由研究相談に随時個別対応致します

今年の夏もミクロ生物館では「自由研究相談会」を
8月4日、5日の2日間の日程で開催する予定です
が、「この日では遅すぎる!」という意欲溢れる
子供たちのために、個別のご相談にも対応して
おります。

夏休みはなかなかご予約自体取れないことが多く
なってしまいますが、今の時期でしたら、大人気の
実験室のご利用も、まだまだ空きがございます。

我こそは! という方は、

「ご氏名」「学年」「ご連絡先」
「希望日程(第3希望まで)」
「やってみたいこと(漠然としていて構いません)」

を明記のうえ、ミクロ生物館

E-mail: micro@shiokaze-kouen.net

までご連絡ください。

皆様のご参加、心よりお待ち申し上げます。


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5】4月27日から5月25日までのミクロ生物館NEWS

※ 詳細は各記事下のURLをご参照ください。

4月18日〜30日>
大学院生が当館でのインターンに参加しました
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page522.html

4月29日>
科学教室「本郷と瀬戸内海のミクロ生物観察会」を
実施しました(岩国市本郷町)
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page524.html

5月13日>
岩国西ロータリークラブにて卓話を行いました
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page525.html

5月20日>
広島市立大学芸術学部の皆様がミクロの世界を体感
されました
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page528.html

5月23日>
岩国市立御庄中学校1、2年生が体験学習活動
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page529.html

5月24日>
山口県瀬戸内海環境保全協会総会にて講演を行い
ました
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page530.html


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5】<お知らせ>6月の休館日について

館内設備保守・点検、職員出張等のため、誠に勝手
ながら以下の日程を休館日とさせていただきます。
なにとぞご了承くださいますよう、よろしくお願い
申し上げます。

6月13日(月)、20日(月)、27日(月)

また、北海道から遠路はるばるやってきたクリオネ
たちですが、彼らにとっては猛暑ともいえる、
最近の暑さにも耐え、今も土日限定ですが、館内で
元気な姿を見せてくれています。
いつまで展示できるかは未定ですが、機会がござい
ましたらぜひ、応援にいらしてください。

※ 諸事情により、休館日が変更になる場合がござい
ます。最新の情報は予定表
http://www.shiokaze-kouen.net/content/calendar.php
をご覧ください。


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  編集後記
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 今号は過密スケジュールと編集用パソコンの
 トラブルにより、1日遅れの発刊となってしま
 いました。全国の読者の皆様に心よりお詫び
 申し上げます。
 折からの不景気に大震災が重なり、再び就職氷
 河期と呼ばれる昨今、やる気も実力も兼ね備えた
 学生の方々が、相当に苦労されているという話を
 頻繁に耳にします。
 世界最小規模の人員で動き続ける当館ではあり
 ますが、若手が育ち、100年先も子供達の未来や
 地域社会のお役に立ち続ける施設であるよう、
 何とかすることも私の責務の一つです。
 頑張ります!           (末友)
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●岩国市ミクロ生物館 お問い合わせ先
 住所:〒740-1431
 山口県岩国市由宇町有家浦
 潮風公園みなとオアシスゆう 交流館内
 Fax:0827-62-0156(24時間受付)
 E-mail:micro@shiokaze-kouen.net
 Website: http://shiokaze-kouen.net/micro

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●次号の配信日は 6月26日です。お楽しみに!

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岩国市ミクロ生物館ニュースは、これからも
内容の充実に努めてまいります。
皆様のご意見、ご感想等、お待ちしております。
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発信元: 岩国市ミクロ生物館
館長・メールマガジン担当: 末友 靖隆

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