岩国市ミクロ生物館

岩国市ミクロ生物館 メールマガジンバックナンバー

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 このメールは、過去にミクロ生物館主催の行事に
 参加された皆様、およびミクロ生物館からの情報
 配信を希望された皆様にお送りしています。各種
 お問い合わせ、配信停止についてはこのメールの
 後方をご覧ください。
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■━━  岩国市ミクロ生物館ニュース  ━━■
       --- 第 5 5 号 ---

  * * * * ミクロの世界にようこそ! * * * *
“本誌はミクロ生物好きな方のネットワークづくり
サポートを目的として発刊されました。ここでしか
得られない情報など特典盛りだくさんで毎月26日
(26日が火曜日の場合は27日)に配信致します。
ぜひご活用ください!”

<目次>

☆ミクロ生物スペシャルコラム
 “ミクロの生物から明らかになってきた
  細胞の起源や増殖の仕組み”
    山口大学 理学部 生物・化学科
           准教授  三角 修己

1】自由研究のヒントが見つかる! 夏休みの
  ミクロ生物体験イベント案内

2】8月上旬より“赤潮・貝毒プランクトン展”を
  開催します!

3】6月27日から7月26日までのミクロ生物館 NEWS

4】<お知らせ>8月の臨時休館日について

◎ 編集後記


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      ミクロ生物スペシャルコラム
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 *** ミクロの生物から明らかになってきた
         細胞の起源や増殖の仕組み ***

 三角 修己 (MISUMI、 Osami)
     山口大学 理学部 生物・化学科 准教授


※ 本コラムは以下のURLの図を参照しながらご覧
  ください。
http://shiokaze-kouen.net/micro/info/page344.html


 私たちヒトを含めた地球上の全ての生物は「細胞」
という基本単位から出来ています。細胞はとても
小さいのでその一つ一つを目で見る事は難しいの
ですが、顕微鏡を使うことによってその様子を見る
ことが可能です。顕微鏡で細胞を注意して観察して
みると、細胞の中にもまた小さな構造体(細胞小器官
:さいぼうしょうきかん)がたくさんあることが
わかります。ミトコンドリアや葉緑体という言葉を
聞いたことがあるかと思いますが、これらは細胞の
なかで生物が生きていくために必要なエネルギーを
作り出す細胞小器官です。このメールマガジンを講読
されている方なら既にご存じの人も多いかと思います
が、このミトコンドリアと葉緑体は太古に独立して
生きていた細菌(バクテリア)が宿主の細胞に取り
込まれた細胞内共生によって出来たものと考えられて
います(バックナンバーを参照)。それでは、自由に
生きていた細菌が自立性を失って、どのようにして
細胞の中のエネルギーを作り出す細胞小器官になって
いったのでしょうか。

 私たちの研究グループは、「イデユコゴメ」と
呼ばれる高温・強酸性の温泉に棲む、小さな単細胞の
藻類(そうるい)を使って、このミトコンドリアと
葉緑体をはじめとした細胞小器官の研究をおこなって
います。イデユコゴメの仲間であるシアニジウム
(学名:Cyanidium caldarium)は日本の草津温泉
などからも見つかっていますが(草津の湯畑の岩が
緑色になっているのはこのシアニジウムが付着して
いるからです)、我々が使っている通称“シゾン”
(学名:Cyanidioschyzon merolae)と呼ばれる種は
イタリアのナポリの温泉から採取されたものです。
シゾンの細胞は1-2マイクロメートルの大きさで、
まさにミクロの細胞です。この小さな細胞の中には、
細胞核、ミトコンドリア、葉緑体、小胞体、ゴルジ体、
リソソーム、マイクロボディなどの細胞小器官が
1つずつ含まれていています(図1)。私たちのヒト
の細胞1つにはミトコンドリアが数百個も含まれて
いますので、それと比べたらとても単純な細胞の
つくりであることがわかります。そしてシゾンの細胞
が2つに分裂して増える時には、細胞の中にある
細胞小器官も同時に2つに増えるので、複雑な構造を
している我々の細胞を使って細胞小器官の振る舞いを
調べるよりも、シゾンはその分裂の様子などを研究
するのにとても適しています(図1)。最初に
シアニジウムで細胞が分裂する過程を電子顕微鏡で
調べたところ、葉緑体が真ん中でくびれながら分裂
する時に、そのくびれている部分にリング状にミクロ
の糸が巻き付いて葉緑体を2つに分断させていること
がわかりました。また、シゾンでも同様の観察を
行なったところ、ミトコンドリアも同じような分裂
リングによって分裂していることがわかりました。
このミクロの糸からなるリング構造が、ミトコン
ドリアや葉緑体の祖先である細胞内共生体の分裂を
コントロールすることによって、それらを細胞小器官
に変えた真の立役者ではないかと考え、それが
どのような分子や物質から出来ているのかを調べる
ことにしました。

 生物は皆、ゲノムDNAに書かれた遺伝情報(生命の
設計図)に従って生命活動を営んでいますので、
私達はシゾンのゲノムDNAの配列情報を全部解読する
計画を立てました。シゾンの生命設計図の全貌が
わかれば、そこにミトコンドリアや葉緑体の分裂装置
の設計図もあるはずです。そして私たちの研究
グループと日本の研究者が協力して、シゾンのゲノム
情報を完全に解読し、ミトコンドリアや葉緑体の分裂
にはFtsZ(エフティーエスゼット)とダイナミンと
いう遺伝子(タンパク質)が働いていることを
突き止めました。そしてこの両者はシゾン以外の
多くの生物でも同様に細胞小器官の分裂に関わって
いることがわかってきました。間もなくミトコン
ドリアや葉緑体に巻き付いてその分裂を引き起こす
ミクロの糸の正体も解明できそうです。また、ゲノム
解析の結果、ミトコンドリアや葉緑体に含まれる遺伝
情報は祖先の細菌の数十分の1に減っていて、自立
して生きていくにはもはや設計図が足りないことが
わかりました。

 このようにシゾンというミクロの細胞を用いた研究
から、動物、植物、菌類に至る全ての細胞に共通する
細胞の起源や増殖の仕組みの一端が明らかになって
きました。最近ではリソソーム(真核生物の細胞内
消化に関わる細胞小器官)の分配に関わる「ツキソイ」
遺伝子が発見され、ツキソイタンパク質がミトコン
ドリアの上にリソソームをのせて娘細胞に運ぶという
面白い現象も見つかっています。更に、シゾンが高温・
強酸性という過酷な環境に棲息していることから、
生物の極限環境への適応機構の解析や、シゾンの
ストレス耐性遺伝子を用いた有用植物の作出、
さらには環境修復への応用など、シゾンの特性や
ゲノム情報を用いた研究が様々な分野に展開されつつ
あります。これからも研究対象として大変魅力的な
シゾンを使って、このミクロの細胞に眠っている
大きなお宝を探し続けていきたいと考えています。


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1】自由研究のヒントが見つかる! 夏休みの
  ミクロ生物体験イベント案内

夏休み真っ盛り! 子供達にとっても、お父さん
お母さんにとっても大きな課題である“夏休み
自由研究”。内容に悩んでおられませんか?

“自由研究お悩み相談会”の募集は定員に達して
しまいましたが、ある程度テーマを固めておられる
方なら、大学並みの実験設備を誇る、当館の実験室
を使って、さまざまな研究成果を挙げることが可能
です。
しかも、消耗品、備品使用量込みでお1人あたり
1日たったの350円でご利用いただけます!

事前予約制ですので、以下の申し込みフォーム
http://shiokaze-kouen.net/micro/info/page135.html
より必要事項をご記入のうえ、お申し込み
ください。

また、
“ミクロ生物採集・観察体験学習会”
http://shiokaze-kouen.net/micro/info/page261.html
や、
“ミクロ生物模型作り体験”
http://shiokaze-kouen.net/micro/info/page327.html
も予約制にて開催しております。

既にかなりのご予約をいただいてはおりますが、
まだ空きがございますので、まだお申し込み
されていない方はぜひ、この夏にミクロ生物
たちとのふれ合い体験をされてみてはいかが
でしょうか。

さらに! 山口県、広島県、福岡県にお住まいの方
に朗報です。
8月8日には岩国市由宇町のふれあいパークで、
8月19、20日には防府市青少年科学館ソラール
にて、
8月22日には山口大学理学部サイエンスワールド
にて、
いずれも無料で“ミクロ生物模型作り”体験が
できます!
この機会にぜひご参加ください。

やる気あふれる皆様のご参加を、スタッフ一同、
心よりお待ちしております。
楽しく充実した夏休みにしましょう!


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2】8月上旬より“赤潮・貝毒プランクトン展”を
  開催します!

先日、大手テレビ局でも取り上げられた“赤潮”。
水面を真っ赤に染め上げてしまう“ヤコウチュウ”
の赤潮が見た目のインパクトも強く有名ですが、
赤潮を作るミクロ生物は他にもさまざまなものが
いて、なかには養殖している魚たちに大ダメージ
を与えてしまうものもいます。

また、“貝毒”といって、アサリやカキなどの
二枚貝に食べられた有毒プランクトンが、貝を
食べた私たちの体に重大な害を及ぼしてしまう、
そんなミクロ生物もいます。

今年の夏は、そんな“怖い”ミクロ生物たちの
姿を顕微鏡でじっくり観察してみましょう。

その正体は“やっぱり怖い?”それとも“意外に
かわいい?” どっちかな??

正確な日程は申し上げられませんが、8月上旬
より、当館展示スペース(無料)にて展示を
開始致します。
皆様ぜひご来館ください。

※ 本企画は、山口県水産研究センター内海
研究部研究員、小柳様のご協力により実現致し
ました。この場を借りて御礼申し上げます。


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3】6月27日から7月26日までのミクロ生物館 NEWS

※ 詳細は各記事下のURLをご参照ください。

<< 7月2日 由宇小学校3年生が社会見学でご来館
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page454.html

<< 7月4日 ふれあいパークとの共催イベントを開催
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page455.html

<< 7月9日 柳井市立小田小学校で出前授業を開催
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page456.html

<< 7月10日 由宇町の子ども会が体験学習でご来館
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page457.html

<< 7月11日 廿日市市の子ども会が体験学習でご来館
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page458.html

<< 7月15日 岩国高校文化祭で生物部が研究成果発表
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page459.html

<< 7月18日 日本テレビ系列「ザ!鉄腕!DASH!!」
      にて当館提供生物画像が放送されました
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page462.html

<< 7月21日 周南市立八代小学校が体験学習でご来館
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page460.html

<< 7月22日 岩国西中学校で水辺の教室を開催
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page461.html

<< 7月26日 やまぐちフラワーランドにて採集・観察
      体験学習会を開催
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page463.html


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4】<お知らせ>8月の臨時休館日について

科学教室等出展のため、誠に勝手ながら以下の日程を
臨時休館日とさせていただきます。
なにとぞご了承くださいますよう、よろしくお願い
申し上げます。

8月19(木)、20(金)、22(日)

※ 8月は火曜日も開館しておりますので、休館日は
上記3日間のみとなります。ただし、授業等で職員
が出張している日も多いため、お申し込みやご相談
はなるべく電子メール(本マガジン下部に記載)
にてお願い申し上げます。


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  編集後記
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 この夏もたくさんの幼・小・中学生たちが当館
 でミクロ生物たちとふれ合い、“とっても楽し
 かった!!”という、嬉しくて涙が出そうな
 言葉と笑顔をプレゼントしてくれています。
 実のところ、夏はほぼ無休で、一年の内でも
 特にハードな期間ではありますが、子供達が
 科学の楽しさを感じ取るその姿を見るだけで、
 疲れなんて一気に吹き飛んでしまいます。
 これからが夏休み本番! 引き続き、たくさん
 の子供達に科学の魅力を伝えるぞ! (末友)
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●岩国市ミクロ生物館 お問い合わせ先
 住所:〒740-1431
 山口県岩国市由宇町有家浦
 潮風公園みなとオアシスゆう 交流館内
 Fax:0827-62-0156(24時間受付)
 E-mail:micro@shiokaze-kouen.net
 Website: http://shiokaze-kouen.net/micro

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●次号の配信日は 8月26日です。お楽しみに!

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岩国市ミクロ生物館ニュースは、これからも
内容の充実に努めてまいります。
皆様のご意見、ご感想等、お待ちしております。
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発信元: 岩国市ミクロ生物館
館長・メールマガジン担当: 末友 靖隆

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岩国市ミクロ生物館 山口県岩国市由宇町潮風公園みなとオアシスゆう交流館内 TEL 0827-62-0160 [メール]