岩国市ミクロ生物館

岩国市ミクロ生物館 メールマガジンバックナンバー

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 このメールは、過去にミクロ生物館主催の行事に
 参加された皆様、およびミクロ生物館からの情報
 配信を希望された皆様にお送りしています。各種
 お問い合わせ、配信停止についてはこのメールの
 後方をご覧ください。
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■━━  岩国市ミクロ生物館ニュース  ━━■
       --- 第 5 3 号 ---

  * * * * ミクロの世界にようこそ! * * * *
“本誌はミクロ生物好きな方のネットワークづくり
サポートを目的として発刊されました。ここでしか
得られない情報など特典盛りだくさんで毎月26日
(26日が火曜日の場合は27日)に配信致します。
ぜひご活用ください!”

<目次>

☆ミクロ生物スペシャルコラム
 “渦鞭毛藻類の多様な生き方”
  長崎大学 環東シナ海海洋環境資源研究センター
   日本学術振興会PD特別研究員  高野 義人

1】6月5日(土)岩国市環境月間イベント“温暖化と
  水と環境と私たち2010”に出展します!
  あなたもミドリムシの模型を作ってみませんか?

2】4月27日から5月26日までのミクロ生物館 NEWS

3】<お知らせ>6月の臨時休館日について

◎ 編集後記


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      ミクロ生物スペシャルコラム
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    *** 渦鞭毛藻類の多様な生き方 ***

 高野 義人 (TAKANO、 Yoshihito)
  長崎大学 環東シナ海海洋環境資源研究センター
          日本学術振興会PD特別研究員

 渦鞭毛藻類(うずべんもうそうるい)は、淡水域から
海水域まで広く生育している単細胞性のミクロ生物で、
水圏生態系において生産者、消費者として重要な役割を
担っています。このコラムをお読みになっている
ほとんどの方は、すでに顕微鏡を通して海や池の水中を
泳ぐ渦鞭毛藻類をご覧になっていると思います。
そうです、池や湖などの淡水中や海水中を“クルクルと
回りながら泳いでいる”あいつらです。渦鞭毛藻類
(dinoflagellate)というその名は、まさしく「‘渦’
を巻きながら泳ぐ(= ギリシャ語dino = 英語whirl)+
鞭毛藻類(flagellate)」に由来します。もちろん、
クルクル回らずに泳ぐものや、クルクル回る他の生き物
もいますのでご注意を。

 渦鞭毛藻類の基本的な特徴は、細胞を水平軸方向に
走る横溝とそれに直行する縦溝を持ち、各溝それぞれに
特徴の異なる鞭毛を1本ずつ持つことです。渦鞭毛藻類
の核は他の生き物と違ういくつかの特徴を持っていて、
真核生物型のヒストン(染色体を校正するタンパク質の
一群)を欠き、ヌクレオソーム構造(ヒストンにDNAが
巻き付いた構造)はなく、また、細胞周期を通して
染色体が凝集しています。そのため、顕微鏡でよ〜く
見てみると、細胞の中にしましまか、もしくは、粒々が
見える部分が確認できると思います。そこが核です。
また、渦鞭毛藻類に典型的な葉緑体は、3重の包膜
(通常の陸上植物は2重)で、クロロフィルa+cを
持っていて、茶褐色〜オレンジ色をしています。
この葉緑体は、分子系統解析(遺伝情報などから生物
の進化を探る手法)の結果から、紅藻類の二次共生
(細胞内共生)に由来することが明らかとなっています
が、渦鞭毛藻類の葉緑体にしかない以下の特徴
1) 他の藻類には見られないペリディニンという光合成
  補助色素を持つ
2) 他の植物の葉緑体では環状DNA上に複数の遺伝子が
  並ぶのに対し、渦鞭毛藻類の葉緑体遺伝子は基本的
  に一つの遺伝子が一つの小さなサークル(ミニ
  サークル)を作って存在している
を持っています。

 渦鞭毛藻類は、その名の通り葉緑体を持つ“藻類
(そうるい)”として扱われていますが、これまで
約2、000種が知られている中で、その約半数しか葉緑体
を持たず、残りは葉緑体を持っていません。この
葉緑体を持たない種は、二次的に典型的な葉緑体を
消失した(元は葉緑体を持っていた)ことが分子系統
解析から分かっています。

 上述のように渦鞭毛藻類は葉緑体をもつ生産者で
あり、葉緑体をもたない消費者でもあります。この
葉緑体の有無によって大きく二分できますが、その
栄養獲得様式と生活様式は非常に多様で
1) 葉緑体を持ち自由生活する独立栄養性(autotroph)
2) 葉緑体を持つが捕食もするもの(mixotroph)
3) サンゴやシャコ貝などに共生しているもの(褐虫藻
  とも呼ばれる;symbiotic)
4) 他の生物を捕食する従属栄養性(heterotroph)
5) 他の藻類を捕食する、もしくは、他の藻類を捕食
  し利用している繊毛虫をさらに捕食し、その葉緑体
  を一時的に利用する“クレプトクロロプラスト”を
  行うもの
6) 緑藻類の一種を細胞内共生体として持つもの
7) ラン藻類(シアノバクテリア)を細胞外共生体と
  して持つもの
8) 他の生物や渦鞭毛藻類に寄生するもの(parasitic)
が知られています。

 さらに面白いことに、他の藻類では分類群ごとに
同じタイプの葉緑体を共有していますが、渦鞭毛藻類
には典型的な葉緑体ではない3つのタイプが知られて
います。
1) 緑藻類の一種のプラシノ藻類に由来する
  (Lepidodinium属)
2) ハプト藻類に由来する(Karenia属、Karlodinium属
  やTakayama属)
3) ケイ藻類に由来する(Durinskia属やKrypto
  -peridinium属など)
いずれの場合においても、典型的な葉緑体、つまり
二次共生による紅藻由来の葉緑体を消失し、新たな
葉緑体に置き換えたと考えられます。このように、
渦鞭毛藻類は他の生物と仲良く、さらには支配し利用
するのに長けている生物であると言えます。

 渦鞭毛藻類は単細胞生物でありながら、その基本構造
や形、生活戦略において特異的な特徴を持ち、他の
生き物に類を見ないほど多様です。渦鞭毛藻類を
見つけたら、顕微鏡で追いかけて行って、細胞の形だけ
ではなく、細胞の中(葉緑体の有無や色、何を食べて
いるのかなど)までじっくり観察してみてください。


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1】6月5日(土)岩国市環境月間イベント“温暖化と
  水と環境と私たち2010”に出展します!
  あなたもミドリムシの模型を作ってみませんか?

2010年6月5日(土)に岩国市環境月間イベント
「温暖化と水と環境と私たち2010」が、岩国市役所
1階多目的ホールにて開催され、当館も一角にブースを
出展します。

今年は水道局との連携による錦川に生息するミクロ
生物の顕微鏡展示をはじめ、下水道課のご協力による
“下水をきれいにしてくれるミクロ生物の展示”
など、市民の生活に深いかかわりのあるミクロ生物
たちを幅広く展示する予定です。

岩国市の飲み水の源となる錦川にはどのような
ミクロ生物がいるのかな?
ミクロ生物から見えてくる錦川の環境とは?
水をきれいにしてくれるミクロ生物って?
・・・などなど、日常わき起こる疑問の数々が
一気に解決すること間違い無し!

しかも! 今年は“ミドリムシの模型作り”体験
まで行っていただけます!
栄養バランスが良く、健康食品としても最近話題の
ミドリムシの、かわいくてリアルな模型を作って
みませんか?

さまざまな体験を通じて、身の回りの環境や
そこに生息する生き物たち、そして私たちの暮らし
との関係についてみられてはいかがでしょうか。

開催時間は午前10時より午後3時まで。入場無料
で、ミクロ生物館以外にも、水と環境、温暖化に
関連したさまざまな展示やゴーヤの苗の無料配布
など、いろいろなイベントが同時に開催されます
(会場内ではビニール袋の配布はされておりません
ので、必ずマイバッグをご持参ください)。

メールマガジン読者の皆様も、お時間がございまし
たらぜひ、岩国市役所まで足をお運びください
(JR岩国駅より路線バスで5分)。


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2】4月27日から5月26日までのミクロ生物館 NEWS

※ 詳細は各記事下のURLをご参照ください。

<< 4月28日(水)
岩国市立天尾小学校のみなさんが社会見学に来られ
ました
http://www.shiokaze-kouen.net/micro/news/page439.html

<< 5月10日(月)
通津中学校で出前授業を行いました
http://www.shiokaze-kouen.net/micro/news/page440.html

<< 5月14日(金)
周防大島町の和田小学校のみなさんが見学に来られ
ました
http://www.shiokaze-kouen.net/micro/news/page441.html

<< 5月16日(日)
日本宇宙少年団周南分団で科学教室を行いました
http://www.shiokaze-kouen.net/micro/news/page442.html

<< 5月22日(土)
岩国高校生物部のみなさんが研究に来られました
http://www.shiokaze-kouen.net/micro/news/page444.html


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3】<お知らせ>6月の臨時休館日について

誠に勝手ながら以下の日程を臨時休館日とさせて
いただきます。
なにとぞご了承くださいますよう、よろしくお願い
申し上げます。

6月14日(月)、28日(月)
理由:館内設備保守・展示準備のため


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  編集後記
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 眠る暇の無い忙しさが続く今日この頃ですが、
 “世に無いものを作ることの楽しさ”や“未来
 ある子供達に科学の魅力”を同時に発信できる
 当館の仕事はまさに天職で、おかげさまで毎日
 とてもやり甲斐を感じながら仕事しています。
 先月のメールマガジンでもちらっとお伝えした
 各種プロジェクトも鋭意進行中です。公表は
 もう少し先になりますが、子どもから学校の
 先生、研究者まで、誰もが役に立ち、楽しめる
 内容のものに仕上がりつつありますのでご期待
 ください! 早く内容を公表したくて仕方が無い
 今日この頃です。
 なお、6月6日ですが、午後6時半からテレビ
 朝日系列で放送される科学番組にて、当館より
 提供したアミミドロが少しだけ紹介される予定
 です。こちらもお時間のある方はぜひご覧くだ
 さい。多角形構造がきれいです。 (末友)
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●岩国市ミクロ生物館 お問い合わせ先
 住所:〒740-1431
 山口県岩国市由宇町有家浦
 潮風公園みなとオアシスゆう 交流館内
 Fax:0827-62-0156(24時間受付)
 E-mail:micro@shiokaze-kouen.net
 Website: http://shiokaze-kouen.net/micro

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●次号の配信日は 6月26日です。お楽しみに!

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岩国市ミクロ生物館ニュースは、これからも
内容の充実に努めてまいります。
皆様のご意見、ご感想等、お待ちしております。
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発信元: 岩国市ミクロ生物館
館長・メールマガジン担当: 末友 靖隆

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