岩国市ミクロ生物館

岩国市ミクロ生物館 メールマガジンバックナンバー

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 このメールは、過去にミクロ生物館主催の行事に
 参加された皆様、およびミクロ生物館からの情報
 配信を希望された皆様にお送りしています。各種
 お問い合わせ、配信停止についてはこのメールの
 後方をご覧ください。
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■━━  岩国市ミクロ生物館ニュース  ━━■
       --- 第 5 2 号 ---

  * * * * ミクロの世界にようこそ! * * * *
“本誌はミクロ生物好きな方のネットワークづくり
サポートを目的として発刊されました。ここでしか
得られない情報など特典盛りだくさんで毎月26日
(26日が火曜日の場合は27日)に配信致します。
ぜひご活用ください!”

<目次>

☆ミクロ生物スペシャルコラム
 “シロアリの共生原生生物と木材分解”
  琉球大学 熱帯生物圏研究センター
            助教   徳田 岳

1】日本原生動物学会春の若手研究集会が、岩国市を
  会場に開催されました(参加報告)

2】今年も模型作り体験や体験学習会が楽しい季節が
  やってきました!

3】<お知らせ>5月の臨時休館日について

◎ 編集後記


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      ミクロ生物スペシャルコラム
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  *** シロアリの共生原生生物と木材分解 ***

 徳田 岳 (TOKUDA、 Gaku)
    琉球大学 熱帯生物圏研究センター 助教

 第35号に引き続き、またまたシロアリ腸内共生
原生生物のお話です。とはいえ、最初にお断りして
おかなくてはならないのですが、私はどちらかと
いうとシロアリそのものを研究しており、原生生物の
専門家ではありません。ですので、少々聞きかじりで
話を進めさせていただきますが、あまり細かいことは
気にしないで読み進めていただけたらと思います。
なお、シロアリ類の中には共生原生生物をもたない
グループが存在しますが、その話はまた別の機会に
したいと思います。

シロアリが腸内原生生物の力を借りて木材を分解して
いるという話を聞いたことがある方もいらっしゃると
思います。シロアリの腸を実際に観察しますと、一部
が大きく膨らんでおり、そこに数千から数万個体の
原生生物が通勤ラッシュのようなすし詰め状態で
うごめいているのを見ることができます。観察には
ふつう、顕微鏡が必要なのですが、かつて最も原始的
なムカシシロアリを解剖したときには、肉眼で見える
ほど巨大な原生生物が出てきてびっくりしたことが
あります。

では、シロアリの腸内にはどんな原生生物が棲んで
いるのでしょうか?近縁のキゴキブリ(文字通り木を
食べるゴキブリです)とシロアリ(最近の研究で、
シロアリはゴキブリであるということがわかって
きました!)から、これまでに400種類以上の原生生物
が見つかっています。一見多様に感じますが、実は
これらはある特定の分類群だけに属するようです。
第38号のメールマガジンで大田さんが紹介されている
分類体系に従いますと、シロアリ原生生物はエクス
カバータ(Excavata)生物群(界)のパラバサリア
(Parabasalia)門とプレアクソスティラ(Preaxostyla)
門に属しているということになるようです。
パラバサリア(Parabasalia)門の原生生物は、トリコ
モナスの仲間(Trichomonada)や、超鞭毛虫類
(Hypermastigia)など、シロアリとキゴキブリだけに
特有な系統群で構成されています。
プレアクソスティラ門は、主にオキシモナスの仲間
(Oxymonadida)で構成されています。

シロアリの腸内共生原生生物は、シロアリとキゴキブリ
の祖先の腸内に約1億5千万年前に共生し、それ以来
ずっと腸内で通勤ラッシュに耐えながら生き延びてきた
と思われます。それでも彼らにとってはシロアリの腸内
が安住の地だったということなのでしょうが、長年の
ストレスを思うとなんだか気の毒な気がします。
そして、途方もない忍耐生活が原生生物に及ぼした影響
は何だったのだろうと思ったりもします。

これらの原生生物は、選択的に木片だけを体内に取り
込むことが知られています。また、電子顕微鏡で観察
すると、食胞内に取り込まれた木片に対して、何やら
分泌顆粒のようなものが放出されている像を見ることが
できます。おそらくこの中にセルラーゼなどの木材分解
酵素が含まれており、食胞内の木片を分解して
エネルギーを得ているのでしょう。

近年ではいくつかのシロアリで腸内原生生物が発現する
遺伝子の包括的な解析が進んでおり、その中から多様な
木質分解関連酵素の遺伝子が見つかってきています。
分子系統学的な観点から見ると、シロアリ共生原生生物
の木材分解系は2つの分子系統に属するセルラーゼを
中心に、いくつか異なる分子系統のセルラーゼやヘミ
セルラーゼが協調する形で成り立っているようです。
中心的な2系統のセルラーゼはシロアリの祖先に原生
生物が共生したときから存在しており、このうち一つは
かつて原生生物がバクテリアから水平伝搬によって獲得
したものであろうと考えられています。

シロアリは自分自身でも(原生生物とは異なる)
セルラーゼを作っており、シロアリが食べた木片は
最初、シロアリ自身が分泌するセルラーゼによって
部分的に分解されると考えられます。溶け残った木片は
共生原生生物が待ち受ける後腸に運ばれ、原生生物の
体内に取り込まれます。原生生物はシロアリ自身の酵素
よりも何倍も強力なセルロースやヘミセルロースの分解
システムを使って、取り込んだ木片を徹底的に分解する
ようです。このような二重の木材分解システムを
使って、シロアリは効率よく木材からエネルギーを得て
いるわけです。


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1】日本原生動物学会春の若手研究集会が、岩国市を
  会場に開催されました(参加報告)

4月1、2日の2日間の日程で、日本原生動物学会に
所属する全国の若手研究者が一堂に会し、研究発表や
懇親会で親睦を深めるという研究集会が、当館と
山口県ふれあいパークを会場に開催されました。

ミクロ生物館館長の私(末友)も、若手役員兼会場
提供者として終始参加させていただいたのですが、
原生生物という共通の研究材料以外にほとんど共通点
の無い、さまざまなバックグラウンドを持つ若手
研究者どうしが、日頃の疑問をぶつけ合い、議論し
合い、親睦を深め合うことで、互いに大きく成長
する、この上ない機会であったと、今も感動の余韻に
浸っています。

技術面でも得たものがありました。専門家を招いての
特別実習“シロアリ腸内原生生物観察会”では、
シロアリの腸内に住み、シロアリの消化を助けて
くれるさまざまな原生生物たちの採集、観察法を
学習、修得させていただいたのですが、この技術は
近く、ミクロ生物館の展示にも役立てていく予定です。
ご期待ください。

当日の様子は近く、日本原生動物学会若手の会
ホームページ
http://www.geocities.jp/youngprotozoologists/
にて公開される予定ですが、概要について気になる方は、
以下のURL
http://www.geocities.jp/youngprotozoologists/A_Files/2010pampjlet.pdf
より、パンフレットをダウンロードできますので、
ぜひご覧ください。

本研究集会は、日本原生動物学会に所属する若手
会員(概ね30代前半まで)であれば、どなたでも
参加可能です。
会場は未定ですが、来年も開催予定です。

学校教育においても原生生物や顕微鏡に関する
知識や技術が重要になりつつある昨今、学校の
先生のご参加も大歓迎ですので、ぜひ、将来、
研究職や教育職を目指す大学生や若手研究者、
教育者の皆様も、これを機に日本原生動物学会に
ご入会いただき、来年度以降、参加をご検討
されてみてはいかがでしょうか。

若手役員一同、大歓迎で皆様をお迎え致します。


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2】今年も模型作り体験や体験学習会が楽しい季節が
  やってきました!

緑がまぶしい季節になってきましたが、ミクロの
世界も緑や黄色、茶色などなど、色とりどり、まぶしい
季節の到来です。

ミクロ生物館では、各種体験学習会を、今年も
開催しております。
5月は既に予約がいっぱいですが、6月以降は
まだ空きがございますので、ぜひ、この機会に、
ミクロの世界の生き物たちと友達になってみられ
ませんか?

イベント内容の詳細、ご予約は以下のアドレスから
どうぞ。
どちらも、ご家族やグループにぴったりの内容です。
小学生なら、自由研究になるかも!?

ミクロ生物の模型作り体験
http://shiokaze-kouen.net/micro/info/page327.html

海のミクロ生物探検
http://shiokaze-kouen.net/micro/info/page261.html

皆様のご参加、心よりお待ち申し上げます。


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3】<お知らせ>5月の臨時休館日について

職員出張等の理由で、誠に勝手ながら以下の日程を
臨時休館日とさせていただきます。
なにとぞご了承くださいますよう、よろしくお願い
申し上げます。

5月6日(木・ゴールデンウィークの振替休み)
5月31日(月)

なお、火曜日ですが、5月4日は祝日のため、
開館致します。


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  編集後記
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 ここ数ヶ月、毎日ほぼ徹夜で、あるものの執筆に
 勤しんでおります。現時点ではまだ公表でき
 ませんが、学校教育にも、自由研究にも、漁業
 関係者の方にも、研究者にも役立つ、(自画
 自賛ですが)素晴らしいものですので、公表
 できるその日まで、今しばらくお待ちいただけ
 れば幸いです。恐らく、今年の夏休みまでには
 公表できると思います!     (末友)
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●岩国市ミクロ生物館 お問い合わせ先
 住所:〒740-1431
 山口県岩国市由宇町有家浦
 潮風公園みなとオアシスゆう 交流館内
 Fax:0827-62-0156(24時間受付)
 E-mail:micro@shiokaze-kouen.net
 Website: http://shiokaze-kouen.net/micro

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●次号の配信日は 5月26日です。お楽しみに!

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岩国市ミクロ生物館ニュースは、これからも
内容の充実に努めてまいります。
皆様のご意見、ご感想等、お待ちしております。
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発信元: 岩国市ミクロ生物館
館長・メールマガジン担当: 末友 靖隆

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