岩国市ミクロ生物館

岩国市ミクロ生物館 メールマガジンバックナンバー

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 このメールは、過去にミクロ生物館主催の行事に
 参加された皆様、およびミクロ生物館からの情報
 配信を希望された皆様にお送りしています。各種
 お問い合わせ、配信停止についてはこのメールの
 後方をご覧ください。
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■━━  岩国市ミクロ生物館ニュース  ━━■
       --- 第 4 9 号 ---

  * * * * ミクロの世界にようこそ! * * * *
“本誌はミクロ生物好きな方のネットワークづくり
サポートを目的として発刊されました。ここでしか
得られない情報など特典盛りだくさんで毎月26日
(26日が火曜日の場合は27日)に配信致します。
ぜひご活用ください!”

<目次>

☆ミクロ生物スペシャルコラム
 “珪藻の新しい同定手法”
 秋田県立大学 流動研究員  渡辺 剛

1】“環境”をメインテーマにした展示を2月中旬
  よりスタートします

2】小・中学生向け自由研究相談、受付中です!

3】<お知らせ>2月の臨時休館日について

◎ 編集後記


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      ミクロ生物スペシャルコラム
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※ 本コラムは、以下のURL
http://shiokaze-kouen.net/micro/info/page328.html
内の図を開きながらお読みください。


     *** 珪藻の新しい同定手法 ***

 渡辺 剛 (WATANABE、 Tsuyoshi)
          秋田県立大学 流動研究員

 珪藻(けいそう)はガラス質の細胞壁に包まれた
微細な単細胞の藻類です(図A)。黄褐色の葉緑体を
もち(図A)、褐藻類(かっそうるい:コンブやワカメ
の仲間)が親せきにあたります。珪藻の分類はガラス
質の細胞壁に刻まれた模様によってなされてきました。
「ガラス」と聞くと、形の変化が少ないのでは、と
感じるかもしれませんが、同種内でも細胞の形や
大きさはさまざまで(図B、C)、さらにナノ単位で
繊細なガラスの構造も作ります(図C)。近年では
形態が全く同じでも、生物学的には別種(隠蔽種・
いんぺいしゅ)というものも報告されており、細胞壁
の形態に頼った分類は困難な局面を迎えています。
これまでに珪藻は1〜2万種が報告されていますが、
近年の遺伝子や生殖の研究などから、実際の種数は
20万〜100万種に上ると予想されており、珪藻の
種同定は今後さらに難しくなるでしょう。そこで、
新しい同定方法として、「DNAバーコード」が注目
されています。

 DNAバーコードとは、生物種の同定に用いる特定
の短い塩基配列(えんきはいれつ)のことです。
DNAバーコードの魅力は、わずか数100塩基のDNA配列
を読み取ることで、誰でも簡単かつ正確に種を同定
できる点です。塩基1つ1つの違いを1つの形態
情報(細胞の大きさや模様の特徴など)に置き換える
と、数100塩基の短い配列とはいえ、膨大な情報に
基づき同定していると考えることができます。
DNAバーコードに用いる配列は、同種間では同じで、
異種間では異なる、というのが理想的です。
現在、珪藻では2種類の配列がDNAバーコードとして
提案されています。ひとつはミトコンドリアのcox1
遺伝子を利用したcox1バーコードです。Cox1バー
コードは、既に動物、紅藻類(テングサやアサクサ
ノリの仲間)や小型の原生生物でも用いられています。
動物では98〜100%の確率で種を同定できるという
実績があります。珪藻のcox1バーコードは約650塩基
からなり、同種内で塩基配列の変化が非常に小さく、
種同定に十分利用できることが分かっています。
しかし、cox1バーコードは珪藻の多様な分類群を
対象とした研究がなく、さらに珪藻に共通の
プライマー(DNA合成酵素が DNA を伸長するために
必要な短い核酸の断片)が設計されていないことも
課題です。もうひとつは核のリボソームRNAの5.8S
rRNAとITS2領域を用いた、およそ300〜400塩基から
なる5.8S+ITS2バーコードです。ITS領域のDNA
バーコードは菌類や渦鞭毛藻類(赤潮の原因となる
小型の藻類)で利用されています。
5.8S+ITS2バーコードは珪藻の多くの種で利用可能な
共通のプライマーが開発されており、多様な珪藻種
で実践されている点で優れていますが、同種内でも
塩基配列が大きく変化するので、何塩基程度の違い
を別種とするのか、という基準を明確にしなければ
なりません。

 珪藻のDNAバーコードでは、このほかにもいくつか
の問題が残されており、まだ発展途上にあります。
今後、珪藻種のDNAバーコードとなる塩基配列データ
と形態や生態情報を統合したデータベースの構築が
期待されており、それが整備されれば珪藻研究に
おいて強力なツールとなるでしょう。将来は、DNA
バーコード配列さえ解読すれば、誰にでもクリック
一つで種同定が可能となり、さらに多くの形態や
生態情報が引き出せる・・・そんな時代が来るのかも
しれません。


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1】“環境”をメインテーマにした展示を2月中旬
  よりスタートします

顕微鏡観察コーナーの展示が、2月中旬より大幅に
増強されます!

・観察できる顕微鏡の台数が増える!

・“岩国城のお堀の水”など、岩国の身近な“環境”
 をテーマにした生物展示が続々登場!

・ミクロ生物をリアルタイムで画面に拡大!

などなど、
身近な環境にどんなミクロ生物がいるの?
ミクロ生物たちはそこで何をしているの?
という、誰でも一度は考えたことがあるであろう
素朴な疑問を解決できる展示を目指し、現在準備を
進めております。
小・中学校の授業にもお役に立てること間違い無し
です。

また、東北大学大学院農学研究科の先生方のご協力
により、
“牛はどうして草を食べているだけで生きていける
の?”
など、よくよく考えると不思議だな? と思える
日常の疑問を、ミクロ生物たちが次々に解決して
くれるパネル展示も行なう予定です。

日常生活のなかの意外なところで活躍するミクロ
生物たちの意外な能力や素顔について、楽しく
学んでいただけること間違い無し!

この冬に萩で採集された、元気いっぱいの
ボルボックスたちも、くるくる回りながら皆さんの
お越しをお待ちしております!

正確な展示開始日は当館ホームページよりお知らせ
致します。


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2】小・中学生向け自由研究相談、受付中です!

まだ1月なのに!?と思われるかもしれませんが、
一年を通して研究をする! というやる気溢れる
子供たちのために、ミクロ生物館ではこの時期も
自由研究相談、ラボ利用を随時受け付けております!

全国レベルで活躍する子供たちのなかには、実際に
既に研究をスタートされている方もいますので、
ご遠慮なくお気軽にご相談ください。
夏休みシーズンは自由研究相談が殺到して毎年
大変なことになっておりますので、今の時期は
じっくりご相談に乗れるチャンスです!

やる気溢れる子供たちのご相談、お待ちして
おります!

ご連絡は以下のメールアドレス、またはお電話
にてお願い致します。

メール: micro@shiokaze-kouen.net
お電話: 0827-62-0160(直通)

※ 返信に数日を要する場合がございます。
  予めご了承願います。


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3】<お知らせ>2月の臨時休館日について

職員出張等の理由で、誠に勝手ながら以下の日程を
臨時休館日とさせていただきます。
なにとぞご了承くださいますよう、よろしくお願い
申し上げます。

2月13日(土)、18日(木)、20日(土)


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  編集後記
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 新春早々、とある調査に同行させていただく形
 で、沖縄県の南大東島に行ってきました!
 お正月明けというのに日中の気温は20度近く
 もあり、広大なサトウキビ畑ではスズムシたち
 が大合唱するなど、山口の1月とは全く違う
 環境に日々驚きの連続でした。島の地下に広が
 る地底湖の水なども採集し、現在調査を進めて
 いるのですが、学術のみならず人類にとっても
 有益な生物が見つからないかと、日々ワクワク
 しています。ミクロ生物館の活動にも活かして
 いきたいと思いますのでご期待ください!
                  (末友)
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●岩国市ミクロ生物館 お問い合わせ先
 住所:〒740-1431
 山口県岩国市由宇町有家浦
 潮風公園みなとオアシスゆう 交流館内
 Fax:0827-62-0156(24時間受付)
 E-mail:micro@shiokaze-kouen.net
 Website: http://shiokaze-kouen.net/micro

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●次号の配信日は 2月26日です。お楽しみに!

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岩国市ミクロ生物館ニュースは、これからも
内容の充実に努めてまいります。
皆様のご意見、ご感想等、お待ちしております。
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発信元: 岩国市ミクロ生物館
館長・メールマガジン担当: 末友 靖隆

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