岩国市ミクロ生物館

岩国市ミクロ生物館 メールマガジンバックナンバー

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 このメールは、過去にミクロ生物館主催の行事に
 参加された皆様、およびミクロ生物館からの情報
 配信を希望された皆様にお送りしています。各種
 お問い合わせ、配信停止についてはこのメールの
 後方をご覧ください。
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■━━  岩国市ミクロ生物館ニュース  ━━■
       --- 第 4 8 号 ---

  * * * * ミクロの世界にようこそ! * * * *
“本誌はミクロ生物好きな方のネットワークづくりの
サポートを目的として発刊されました。ここでしか
得られない情報など特典盛りだくさんで毎月26日
(26日が火曜日の場合は27日)に配信致します。
ぜひご活用ください!”

<目次>

☆ミクロ生物スペシャルコラム
 “細胞内共生の生き証人?”
 カナダ Dalhousie大学 博士研究員 谷藤 吾朗

1】冬期の体験イベントは2本立て!

2】顕微鏡観察コーナーが来春パワーアップします!

3】<お知らせ>1月の臨時休館日について

◎ 編集後記


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      ミクロ生物スペシャルコラム
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※ 本コラムは、以下のURL
http://shiokaze-kouen.net/micro/info/page323.html
内の図を開きながらお読みください。

     *** 細胞内共生の生き証人? ***

 谷藤 吾朗 (TANIFUJI、 Goro)
       カナダ Dalhousie大学 博士研究員

 高校生の頃、“パラサイトイブ”というサイエンス
ホラー小説がベストセラーになりました。内容は、
“太古、細胞に入り込んだミトコンドリアが現代に
なって人類に対し反旗を翻す”というものでした。
随所にもっともらしい説明がちりばめられ、恐怖を
かき立てられる良作でした。私はその後、“細胞に
入り込んだ”というのは本当にあったことで、
“細胞内共生”という現象のことを指しているのだと
知りました。

 “細胞内共生”とは、2つの生物のうちの一方
(共生体)がもう一方の細胞(宿主)に取り込まれ、
新機能を獲得した新しい細胞が誕生することです。
何とも不思議な現象ですが、ミトコンドリアだけで
なく、植物の持つ葉緑体も細胞内共生によって誕生
しました。また、驚くことに細胞内共生を経て葉緑体
を獲得する過程は 進化上で複数回起きたことが
分かっています。

 葉緑体の細胞内共生には、光合成細菌が無色真核
生物に細胞内共生する“一次共生”と、それによって
生じた葉緑体を、さらに別な真核生物が細胞内共生
させることで光合成能を獲得する“二次(多次)共生”
が知られています。別の生物が合体するなんてことが
何回も起こったとは信じがたいかもしれません。
しかし、それを証明する変な生き物がいるのです。
それは“クリプト藻類”と“クロララクニオン藻類”
というミクロ生物です(URLリンク先の図参照)。
二次共生で生じた生物群は他にも知られていますが、
この2種は二次共生を明白に証明する構造を残して
います。それは、共生体の核の痕跡、“ヌクレオ
モルフ”です。

 ヌクレオモルフは当初、形態学的な特徴から
nucleo(核)-morph(のような形)という意味で名付け
られました。その後、ヌクレオモルフが共生体の
核ゲノム(核のなかにある遺伝情報)を維持して
いることが発見され、クリプト藻類は紅藻類
(テングサやアサクサノリのなかま)を、クロラ
ラクニオン藻類は緑藻類(クロレラやミカヅキモの
なかま)を細胞内共生させていたことが明らかに
なりました。まさに細胞内共生が何回も起こった
ことの生き証人という訳です。私はこの何とも不思議
なゲノムについて研究しています。
では、ヌクレオモルフの研究からは一体何がわかって
くるのでしょうか?

 細胞内共生は、進化上何回も起こったと述べました
が、だからといって簡単に起こるという訳でもあり
ません。以前のコラムでも紹介されている通り、
2つの細胞が1つの細胞になるためには様々な遺伝的
な統合が必要だと考えられます
(岩国市ミクロ生物館ニュース 第30号
http://shiokaze-kouen.net/micro/content/mail2.php?nmb=330
)。私はこのときどんな出来事があったのかを調べる
ためにヌクレオモルフを研究対象としています。

 他の二次共生生物では共生体の核を完全に消失して
いるので、ヌクレオモルフは消えていく途中の段階に
あると考えられます。実際、ヌクレオモルフは3本の
染色体の中に合計で33万から85万塩基のDNAを含んで
いますが、他の真核生物の核は、小さい部類でも
原始紅藻で1、650万塩基、酵母菌は1、200万塩基
(ヒトは30億塩基)のDNAを含んでいます。ヌクレオ
モルフがごくわずかなゲノムしか含んでいないことが
お分かりいただけると思います。また、ヌクレオ
モルフはクリプト藻類で約500個、クロララクニオン
藻類では約350個の遺伝子を含んでいますが、通常の
核ゲノムは一般に10、000〜30、000個の遺伝子を含んで
いると考えられていますから、やはりわずかな遺伝子
しか含んでいません。ヌクレオモルフは種によって
ゲノムの大きさが異なることが分かっており、私は
いくつかの種のヌクレオモルフゲノムを比較する
ことで、細胞内共生の過程でどんな遺伝的な出来事が
あったのか詳しく知ることができるのではないかと
期待しています。

 ちなみに冒頭の“人類に反旗を翻す”ということは
実際にはなさそうです。なぜならゲノム統合の結果、
細胞小器官にはわずかなゲノムしか残らなかった
ので、核から様々なタンパク質を輸送してもらわな
ければ維持できません。つまり、ほとんど核に支配
されていると言っても過言ではないのです。


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1】冬期の体験イベントは2本立て!

寒〜い寒い、本格的な冬がやってまいりました。
草木も枯れ、野山の動物たちも冬ごもりして姿を
みせなくなってしまうこの時期、ミクロの世界の
生き物たちは、どのように過ごしているのでしょう
か。

体験学習会“海のミクロ生物探検”に参加すれば、
自ずとその答えがみえてきます!
夏とはひと味もふた味も違う、冬の海のミクロ生物
たち。宝石のようなきらめく世界があなたの目の前
に広がります。

ご希望の日程の2週間前までに、当館ホームページ
内お申し込みフォーム
http://shiokaze-kouen.net/micro/info/page261.html
にてお申し込みください(日程によってはご希望に
そえない場合がございます)。
皆様のご参加、心よりお待ち申し上げます。

この冬からは、更にもう1つ、新たな体験イベント
が加わります!!
それは・・ “ミクロ生物の模型作り体験”です!
科学の祭典や山口大学サイエンスワールドで大好評
いただきましたので、急きょ、当館のイベントにも
加えることに致しました。

簡単に作れるけれど、意外にリアルなミクロ生物
模型を、実際に生きている姿を観察しながら作って
みませんか?

作れる生き物は“ミドリムシ”、“ボルボックス”、
“ミカヅキモ”、“ミドリゾウリムシ”の全4種。
だれでも簡単に作れるので、幼稚園や小学生にも
ご参加いただけます(小学生以下は保護者同伴)。

参加費は1グループ4名様まで一律200円。
これに、1種類あたり100円の材料費をいただき
ます。
所要時間は1種類あたり20〜30分程度となり
ます。

申し込みフォームやホームページ上でのご案内は
未完成ですが、ご参考までに、サイエンスワールド
でのイベントのようすをご覧ください。
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page416.html

受付は、
電子メール( micro@shiokaze-kouen.net )
お電話( 0827-62-0160 )
にてお承ります。
“代表者氏名”、“参加人数”、“ご希望の日時”、
“作りたい生物名”、“緊急連絡先”をご明記の
うえ、ぜひお申し込みください(近日中にホーム
ページ公開も予定しております)。

職員一同、皆様のご参加を、心よりお待ち申し上げ
ます。


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2】顕微鏡観察コーナーが来春パワーアップします!

“教科書の写真でしか見たことのなかったミクロ
生物たちが実際に泳いでいる!”、“ミクロ生物
って意外とかわいい!”と大好評の顕微鏡観察
コーナー。

唯一最大の弱点は、顕微鏡が古過ぎて、調節つまみ
が動かないものがあることでしたが、これらの悩み
が来春、一気に解決される予定です!
おまけに顕微鏡の数も更に増強されますので、皆様
どうぞご期待ください!!


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3】<お知らせ>1月の臨時休館日について

年始特別休暇、出張等の理由で、誠に勝手ながら、
以下の日程を臨時休館日とさせていただきます。
なにとぞご了承くださいますよう、よろしくお願い
申し上げます。

1月1日(金)、2日(土)、6日(水)、7日(木)
  8日(金)、15日(金)、16日(土)、25日(月)

なお、12月31日(木)と1月24日(日)の開館時間は
10:30-15:00までとなります。
新職員体制への移行が完了する3月末までは、職員
不足のため、大変ご不便おかけ致しますが、ご理解、
ご了承の程、よろしくお願い申し上げます。


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  編集後記
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 この年末は、ミクロ生物館でもさまざまな変化
 があり、今年の冬休みに間に合わせることが
 できませんでしたが、来年の1月には新たな
 特別展の開催を予定しております。
 身近なあの生き物のからだのなかに!? と
 驚かれること間違い無し! ですので、どうぞ
 ご期待ください。
 発送が遅れております“ミクロ生物絵画コンテ
 スト”受賞者ならびに参加者の皆様への賞品の
 発送ですが、ようやく準備が完了しました!
 新春早々には参加者の皆様全員のポストに、
 ささやかな賞品が届けられるはずです。
 参加者だけのサプライズ(?)プレゼントも
 ご用意しましたので、どうぞご期待ください。
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●岩国市ミクロ生物館 お問い合わせ先
 住所:〒740-1431
 山口県岩国市由宇町有家浦
 潮風公園みなとオアシスゆう 交流館内
 Fax:0827-62-0156(24時間受付)
 E-mail:micro@shiokaze-kouen.net
 Website: http://shiokaze-kouen.net/micro

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●次号の配信日は 1月26日です。お楽しみに!

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岩国市ミクロ生物館ニュースは、これからも
内容の充実に努めてまいります。
皆様のご意見、ご感想等、お待ちしております。
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発信元: 岩国市ミクロ生物館
館長・メールマガジン担当: 末友 靖隆

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