岩国市ミクロ生物館

岩国市ミクロ生物館 メールマガジンバックナンバー

◇=============================================◇
 このメールは、過去にミクロ生物館主催の行事に
 参加された皆様、およびミクロ生物館からの情報
 配信を希望された皆様にお送りしています。各種
 お問い合わせ、配信停止についてはこのメールの
 後方をご覧ください。
◇=============================================◇

■━━  岩国市ミクロ生物館ニュース  ━━■
       --- 第 4 7 号 ---

  * * * * ミクロの世界にようこそ! * * * *
“本誌はミクロ生物好きな方のネットワークづくりの
サポートを目的として発刊されました。ここでしか
得られない情報など特典盛りだくさんで毎月26日
(26日が火曜日の場合は27日)に配信致します。
ぜひご活用ください!”

<目次>

☆ミクロ生物スペシャルコラム
 “ノリの核分裂からみる紅藻のはなし”
 新日本製鐵株式会社 技術開発本部
     先端技術研究所 研究員  植木 知佳

1】11月28日 絵画コンテスト受賞者発表!

2】マイクロ王第三弾 予約受付開始!

3】<お知らせ>12月の臨時休館日について

◎ 編集後記


☆---------------------------------------------☆
      ミクロ生物スペシャルコラム
☆---------------------------------------------☆

※ 本コラムは、以下のURL
http://shiokaze-kouen.net/micro/info/page321.html
内の写真、図を開きながらお読みください。


  *** ノリの核分裂からみる紅藻のはなし ***

 植木 知佳 (UEKI、 Chika)
       新日本製鐵株式会社 技術開発本部
       先端技術研究所 研究員

 海苔との出会いは、もちろん生まれて初めて
おにぎりを食べたときですが、研究対象としては、
7年前に遡ります。もともと、海藻に興味があった
わけではなく、学生実験でノリの培養をしたこと
すら忘れてしまうくらい、なんてことのない存在
でした。しかし、縁あって研究室に入り数日たった
ある日、初めて観たノリの胞子のかわいさは今でも
忘れることはありません。その姿は、赤い花模様の
入ったビー玉そっくりで、まだ細胞壁をもたない
ため、ぷるんとした儚げな形といったら…、もう
「かわいい」の一言です(微分干渉装置をつけた
顕微鏡で観察したら格別です)。また、動物のように
餌を食べることなく、光合成をして健気に命を
つないでいるのですから、かわいさ倍増です(図1)。

 と、若干気持ちの悪い入りですが、すっかりノリに
魅せられた私は、生きているノリの外観だけでなく、
細胞の中がどうなっているかを知りたくなり、
電子顕微鏡観察を始めました。実際に、観察までの
試料作製方法等を勉強しながらノリの微細構造に
ついてどれくらいわかっているかを調べてみると、
ノリが成長するために絶対に必要な核分裂や細胞質
分裂の様式についてすら明らかにされていないことが
分かりました。

 生物を勉強したことのある人であれば、核分裂と
聞けば中心体や中心子を思い浮かべる方が多いと
思いますが、それらを有するのは動物とコンブなどの
褐藻類です。間期には1対のみが核膜付近に存在し、
核分裂期に入ると複製して、分裂極となり、その周辺
から微小管の伸長を観察することができます。
核分裂後、中心体は1対ずつ娘核へと分配され、次の
核分裂を待ちます。この一連の核分裂様式は、動物と
褐藻類で共通していることが知られています。

 一方、ノリをはじめとする紅藻類は、中心体とは
姿形が全く異なる構造、NAO(Nucleus-associated
organelle)を有します。一般的に、リングが2段に
重なった形態をしているので極環(polar ring)と
呼ばれます。ノリで観察できるもので、直径約90 nm
(0.00009 mm)、高さ約60 nm(0.00006 mm)と
非常に小さい構造です。機能としては、中心体に
類似、つまり核分裂期における紡錘体としての役割
を有しているのではないかと考えられています。
NAOの挙動に関しては、単細胞性のチノリモや大型
紅藻のイトグサなどでいくつかのパターンが報告
されていますが、系統立てた整理が困難なのが現状
です。ノリの場合、NAOはどの細胞でも常に観察
できます。核分裂期に入ると2個のNAOは移動して、
分裂極となります。そして、核分裂期の前期から
前中期、つまり染色体が現れるころから2段に
重なっていたリングが離れ始めます。娘核が
各娘細胞に移動し、染色体の脱凝縮が完了するころ
には、2個のリングが核膜上に配列し、次の段階では、
2個のリングが重なったNAOが1つの娘核に対して
2個観察されました。これは、核分裂の最終段階で
NAOが複製したことを示唆する観察結果となりました
(図2)。

 ノリは、中心体付近に局在するタンパク質
“セントリン”の遺伝子を有しています。これは、
ノリの核分裂において中心体を有する生物と類似
した分子機構の存在を暗示するものであり、その
遺伝子の発現部位の特定が求められます。このほか
にも、NAOの機能を決定づけるには多くのナゾが
残されています。NAO付近の領域に紡錘体形成部位に
局在するγ-チューブリンはあるのか? NAOと中心子
との関連性は? あるなら、どうして、形態が劇的に
変化したのか? などなど。細胞を見ていると
「どうやって生きているのか?」と、ふしぎは
尽きません。


*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*

1】11月28日 絵画コンテスト受賞者発表!

おかげさまで、全国各地より多数ご応募いただき
ました“第一回ミクロ生物絵画コンテスト”。

昨日で投票を締め切らせていただきましたが、
おかげさまで、その道の研究者から幼稚園児まで、
幅広い層の方の貴重な一票をいただくことができ
ました。
今回は素晴らしい作品がとても多かったので、
たくさんの賞を用意させていただきました!

28日の夜に、当館ホームページ上で受賞者を発表
致しますので、ぜひ皆様ご一覧ください。

受賞者の皆様には後日、豪華賞品と賞状を発送
させていただきます。
ご期待ください!


*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*

2】マイクロ王第三弾 予約受付開始!

皆様大変長らく大変お待たせ致しました!
第二弾の登場から早2年、第三弾は幻の作品と
なってしまうのではないか? そんな心配を抱いて
おられるマイクロ王ファンの方もおられたかも
しれません・・・が! ついに! 待望の第三弾が
完成致しました!

今回も、生物の特徴を忠実に再現しつつ、ユニーク
かつマニアックな仕上がりとなっています。
第一弾から第三弾まで組み合わせることで、戦略性
と奥の深さが更に広がります。

中学や高校の学校教材にも最適!
ぜひ、ご活用ください!

ご予約は当館ホームページ内お土産コーナー
http://www.shiokaze-kouen.net/micro/content/omiyage.html
ページ上部のインフォメーションにしたがい、メール
にてご予約ください。

お届けは12月中旬より順次開始予定です。
皆様のご注文、心よりお待ち申し上げます。


*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*

3】<お知らせ>12月、1月の臨時休館日について

正規職員1名体制への移行に伴い、出張等の理由で
以下の日程を臨時休館日とさせていただきます。
なにとぞご了承くださいますよう、よろしくお願い
申し上げます。

12月11日(金)、18日(金)

1月1日(金)、2日(土)、6日(水)、7日(木)
  8日(金)、18日(月)

なお、12月31日大晦日の開館時間は10:30-15:00まで
となります。
皆様、ご理解、ご了承の程、よろしくお願い申し上げ
ます。


*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*

★―――――――――――――――――――――
  編集後記
 ―――――――――――――――――――――
 このところ、日本の科学の未来に不安を抱かせる
 暗いニュースが飛び交っておりますが、当館で
 夏に自由研究を頑張った延べ50名の小・中学生
 たちや、大学生顔負けの本格的な研究活動に打ち
 込まれた高校生達、それに、遠方から勉学に、
 研究に励むようすを伝えてくれる中・高校生達
 より、“市の代表になった”“県大会で入選した”
 “科学者になるため頑張っている”など、思わず
 目頭が熱くなるような素晴らしいニュースが
 飛び込んで来て、その全てが仕事の励みとなり、
 原動力となっています。
 みんな、本当にありがとう! そしてこれからも
 宜しく! 心から応援しています!  (末友)
 ―――――――――――――――――――――★

●岩国市ミクロ生物館 お問い合わせ先
 住所:〒740-1431
 山口県岩国市由宇町有家浦
 潮風公園みなとオアシスゆう 交流館内
 Fax:0827-62-0156(24時間受付)
 E-mail:micro@shiokaze-kouen.net
 Website: http://shiokaze-kouen.net/micro

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
●次号の配信日は 12月26日です。お楽しみに!

---------------------------------------------
岩国市ミクロ生物館ニュースは、これからも
内容の充実に努めてまいります。
皆様のご意見、ご感想等、お待ちしております。
---------------------------------------------

発信元: 岩国市ミクロ生物館
館長・メールマガジン担当: 末友 靖隆

Copyright(c)2009 Iwakuni City Microlife Museum.
All rights reserved.
*本誌の無断複製・転載を禁止します。
転載を希望される方はミクロ生物館までご連絡
ください。

*本メールマガジンのレイアウトは、以下のフォント
での閲覧に最適化しております。
Windows: MSゴシック
Macintosh: 平成角ゴシック
岩国市ミクロ生物館 山口県岩国市由宇町潮風公園みなとオアシスゆう交流館内 TEL 0827-62-0160 [メール]