岩国市ミクロ生物館

岩国市ミクロ生物館 メールマガジンバックナンバー

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 このメールは、過去にミクロ生物館主催の行事に
 参加された皆様、およびミクロ生物館からの情報
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■━━  岩国市ミクロ生物館ニュース  ━━■
       --- 第 4 6 号 ---

  * * * * ミクロの世界にようこそ! * * * *
“本誌はミクロ生物好きな方のネットワークづくりの
サポートを目的として発刊されました。ここでしか
得られない情報など特典盛りだくさんで毎月26日
(26日が火曜日の場合は27日)に配信致します。
ぜひご活用ください!”

<目次>

☆ミクロ生物スペシャルコラム
 “不可思議な真核生物 〜真正紅藻の果胞子体〜”
 台湾・国立台湾海洋大学
         博士後研究員  鈴木 雅大

1】11月3日より“ミクロ生物絵画コンテスト”展示・
  投票スタート! 皆様のご投票お待ちしています

2】11月8日“科学の祭典in岩国”に出展します

3】11月14日、15日“山口大学理学部サイエンス
  ワールド”に出展します

4】「マイクロ王! 第3弾 もっと拡張セット」
  の発売開始が11月上旬に延期されました

5】9月27日から10月26日までのミクロ生物館 NEWS

◎ 編集後記


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      ミクロ生物スペシャルコラム
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  *** 不可思議な真核生物
         〜真正紅藻の果胞子体〜 ***

 鈴木 雅大 (SUZUKI、 Masahiro)
   台湾・国立台湾海洋大学 博士後研究員

 私が研究している紅藻類(こうそうるい)という
仲間は、単細胞生物から大型藻類まで含む大きな
グループですが、実は、すべての紅藻は、鞭毛、
基底小体(きていしょうたい:鞭毛の根元にある
粒状の構造)、中心子(ちゅうしんし:動物細胞に
多くみられる中心体の構成要素)を持っていません。
中心子を持たない紅藻類の核分裂がどのように
行なわれるかについては、別の号のコラムでご紹介
します。この特異な細胞学的特徴により、紅藻は
真核生物の中で最もユニークな分類群の一つとして
知られています。今回のコラムでは、そんな紅藻の
奇妙な特徴の一つとして「果胞子体(かほうしたい)」
を紹介したいと思います。

 果胞子体の説明の前に、紅藻全体の分類を簡単に
網羅してみたいと思います。かつて紅藻は、果胞子体
の有無によって、原始紅藻(げんしこうそう)と真正
紅藻(しんせいこうそう)の2綱に分けられており
ました。近年、分子系統解析、ゴルジ体の配置などの
細胞構造、同化産物の違いなどから、原始紅藻綱は
イデユコゴメ綱、ロデラ綱、チノリモ綱、ベニミドロ
綱、オオイシソウ綱、ウシケノリ綱の6綱に改編され
ました。イデユコゴメ綱に属する仲間はいずれも高酸、
高温といった極限環境に生息する特殊な単細胞紅藻
です。この仲間の一種、シアニディオシゾンは、
すでに全ゲノム塩基配列の解読が終了しており、
研究の世界では最も良く知られた紅藻類となりました。
ロデラ綱とチノリモ綱は共に単細胞紅藻で構成されて
います。ベニミドロ綱は単細胞、群体、多細胞藻を
含んでおり、将来、多細胞化の過程を研究する材料に
もってこいのグループとなる可能性を秘めています。
オオイシソウの仲間は淡水から汽水域に生育する
多細胞藻で、通常緑がかった褐色をしており、とても
紅藻とは思えません。本藻群はレッドデータブックで
絶滅危惧I類とされる稀少藻類ですが、人里近くの
河川やしばしば水槽に出現したりする身近な生き物
です。ウシケノリ綱は、私たちが普段食べている
海苔(ノリ)が含まれるグループで、おそらく最も
身近な紅藻類と思われます。最後に、真正紅藻綱に
注目してみましょう。前述のように原始紅藻綱は
6綱に分けられましたが、真正紅藻綱はこれまでと
変わらず、とても良くまとまったグループです。
世界に約6、500種が報告されており、紅藻全体の9割
以上を占めています。トコロテンや寒天の原料となる
テングサや海藻サラダのトサカノリなどが有名です。
このように、紅藻類は単細胞から群体性、あるいは
多細胞まで多様なグループから構成されています。

 それでは、「果胞子体」についての説明を始め
ましょう。まずは、シダ植物の生活環を思い出して
下さい。シダ植物では、胞子体の葉の裏に形成された
胞子嚢(ほうしのう)内で減数分裂が起こり、胞子嚢
から放出され、定着した胞子(n)は発芽して前葉体
(ぜんようたい)と呼ばれる配偶体となります。
配偶体には造精器と造卵器が作られ、造精器から放出
された精子(n)は造卵器の卵細胞(n)にたどり着き、
受精が行われます。受精卵(2n)は胚となり、生長
して胞子体となります。生活環が完結するために
胞子体と配偶体の2つの世代が関わる二世代交代です。
ところが、真正紅藻には胞子体(2n)と配偶体(n)
に加えて果胞子体(2n)という三つめの世代が
あります。このため、真正紅藻の生活環を「三世代
交代」と呼びます。胞子体で形成された胞子嚢(2n)
で減数分裂が起こり、放出、定着した胞子(n)は
発芽して雄性又は雌性配偶体となります。雄性配偶体
では精子(n)が、雌性配偶体では生卵器(n)が形成
されます。生卵器(n)は受精毛という糸状の突起を
持っており、受精毛の先端付近に精子が付着して
受精が起こります。このとき、受精卵(2n)は放出
されることなく雌性配偶体(n)の体上で発芽、
もしくは周囲の体細胞(n)と細胞融合して、
果胞子体(2n)という体を作り上げます。生長した
果胞子体は果胞子(2n)を形成、放出します。
放出された果胞子は定着、発芽して胞子体(2n)と
なります。胞子体(2n)、配偶体(n)、雌性配偶体
の体上に形成された果胞子体(2n)の三つの世代が
あること、ご理解頂けたでしょうか。
この話はとてもややこしいので、ミクロ生物館
ホームページ
http://shiokaze-kouen.net/micro/info/page303.html
に掲載した生活環の図をご覧下さい。

 それにしても、一体なぜこんなややこしい生活環が
出来上がったのでしょう。その最大の理由は、最初に
挙げた「鞭毛を持たない事」に起因します。精子に鞭毛
がない、つまり自由遊泳が不可能であることから、受精
は偶然に頼るしかありません。わずかなチャンスで得た
受精卵をいかにして胞子体に育て上げるか、ここに
三世代交代の意義があります。果胞子体で作られる大量
の果胞子、これは全て受精卵のクローンです。真正紅藻
は果胞子(=受精卵のクローン)を大量生産することで、
胞子体の生存確率を高めているのです。とても良く
できた生存戦略です。ここでは触れませんでしたが、
紅藻には他にも、ユニークな細胞学的現象が知られて
います。しかし残念なことに、それらの多くは、あくま
でも現象として知られているだけで、そのメカニズムは
現在でもほとんど明らかとなっていないのです。
今後の紅藻の細胞学に期待したいところです。


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1】11月3日より“ミクロ生物絵画コンテスト”展示・
  投票スタート! 皆様のご投票お待ちしています

第一回ミクロ生物絵画コンテスト、おかげさまで
日本全国のたくさんの方からご応募いただくことが
できました。皆様、本当に有り難うございました。
素晴らしい力作揃いで感動致しました!

これらの作品の公開と投票を、11月3日(火)より開始
予定です。
本メールマガジン読者の皆様には、当館ホームページ
よりご投票いただけるシステムを公開しますので、
ぜひご一覧のうえ、ご投票いただければ幸いです。

日時は11月3日(火)正午より、
以下の特設URL
http://shiokaze-kouen.net/micro/info/page301.html
にて、投票を開始致します。
23日(月)まで受け付け予定です。

作品をご出品いただいた方はもちろんのこと、
ミクロ生物たちに対する思い入れ溢れる読者の皆様
の温かいご一票をお待ちしております。

どうぞよろしくお願い致します。


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2】11月8日“科学の祭典in岩国”に出展します

11月8日(日)、岩国市役所にて、“青少年のための
科学の祭典 in 岩国”が開催されます。

ミクロ生物館も“ミクロ生物の模型を作ろう”
という名前で、顕微鏡で観察した生物の模型を
作るブースを設けます。
8月に山口県ふれあいパークにて開催した同イベント
の反省点を更に改良し、より洗練された模型を
実物を観察しながら作り、お持ち帰りいただけます。

当館のブース以外にも面白いブースが目白押しで、
しかも無料ですので、皆様ぜひご参加ください。
ご来場、心よりお待ちしております。


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3】11月14日、15日“山口大学理学部サイエンス
  ワールド”に出展します

11月14日(土)、15日(日)の2日間、山口市にある
山口大学第2学生食堂(きらら)にて“山口大学理学
部サイエンスワールド2009”が開催されます。
科学をテーマにした、さまざまな体験イベントや
展示の数々を、無料で心行くまでお楽しみいただける
年に一度のイベントです。

当館も“ミクロ生物を観察してリアルな模型を作ろう”
というタイトルで、ミクロ生物の実物を観察しつつ、
ミクロ生物の模型を作ることで、意外に複雑なミクロ
生物のからだの仕組みが理解出来る! というイベント
を実施予定です。

場所は、JR湯田温泉駅から徒歩15分ほどの、山口
大学吉田キャンパス内となっております。
規模が大きく、とても楽しいイベントですので、
近くにお住まいの方はぜひご参加ください。
楽しみにお待ちしております。

サイエンスワールド2009の詳細は以下のURLをご参照
ください。
http://www.sci.yamaguchi-u.ac.jp/sw/


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4】「マイクロ王! 第3弾 もっと拡張セット」
  の発売開始が11月上旬に延期されました

誠に申し訳ございません。カードの生産遅れにより
マイクロ王第3弾セットの発売開始予定日が11月
上旬に延期されることになってしまいました。

発売を心待ちにしていただいております皆様には
大変申し訳無く思っております。


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5】9月27日から10月26日までのミクロ生物館 NEWS

※ 詳細は各記事下のURLをご参照ください。

<< 10月4日(日)
「おおの自然を愛する会」が体験学習会に参加
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page408.html

<< 10月11日(日)
体験学習会「アメーバのエサやり体験」開催
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page409.html

<< 10月24日(土)、25日(日)
萩高校科学部が研究活動
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page410.html

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  編集後記
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 絵画コンクールへの多数のご応募、本当に有り難う
 ございました! 予想を超える応募数と、各作品の
 クオリティの高さに職員一同、感動の嵐でした。
 読者の皆様にはぜひ、来月3日から開始予定の
 投票にもご参加いただければ幸いです。
 どうぞよろしくお願い申し上げます。 (末友)
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●岩国市ミクロ生物館 お問い合わせ先
 住所:〒740-1431
 山口県岩国市由宇町有家浦
 潮風公園みなとオアシスゆう 交流館内
 Fax:0827-62-0156(24時間受付)
 E-mail:micro@shiokaze-kouen.net
 Website: http://shiokaze-kouen.net/micro

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●次号の配信日は 11月26日です。お楽しみに!

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岩国市ミクロ生物館ニュースは、これからも
内容の充実に努めてまいります。
皆様のご意見、ご感想等、お待ちしております。
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発信元: 岩国市ミクロ生物館
館長・メールマガジン担当: 末友 靖隆

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