岩国市ミクロ生物館

岩国市ミクロ生物館 メールマガジンバックナンバー

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 このメールは、過去にミクロ生物館主催の行事に
 参加された皆様、およびミクロ生物館からの情報
 配信を希望された皆様にお送りしています。各種
 お問い合わせ、配信停止についてはこのメールの
 後方をご覧ください。
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■━━  岩国市ミクロ生物館ニュース  ━━■
       --- 第 4 5 号 ---

  * * * * ミクロの世界にようこそ! * * * *
“本誌はミクロ生物好きな方のネットワークづくりの
サポートを目的として発刊されました。ここでしか
得られない情報など特典盛りだくさんで毎月26日
(26日が火曜日の場合は27日)に配信致します。
ぜひご活用ください!”

<目次>

☆ミクロ生物スペシャルコラム
 “鉄砲を使う殺し屋!?
     〜線虫寄生性卵菌ハプトグロッサ〜”
 筑波大学大学院 生命環境科学研究科
            研究生  計屋 昌輝

1】「人類の未来を明るくする!?
   光るプランクトンたち」展 開催中!

2】芸術の秋・ミクロ生物の秋
 「第一回 ミクロ生物絵画コンテスト」作品募集中!

3】お待たせしました!
  「マイクロ王! 第3弾 もっと拡張セット」
           10月中旬販売開始です!!

4】「放散虫の世界」展、続々増強中!!

5】8月27日から9月26日までのミクロ生物館 NEWS

◎ 編集後記


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      ミクロ生物スペシャルコラム
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 *** 鉄砲を使う殺し屋!? 
     〜線虫寄生性卵菌ハプトグロッサ〜 ***

 計屋 昌輝 (HAKARIYA、 Masateru)
   筑波大学大学院 生命環境科学研究科 研究生

 水槽の中で死んだ金魚に、白いカビのようなものが
生えているのを見たことはありますか? カビのような
ものがワタのようにぽわぽわと金魚全体を覆っている
としたら、それはミズカビの仲間かもしれません。
ミズカビの仲間はその名前通り、主に水の中に生息
している生物で、その形や生き方はまるでカビのよう
に見えます。しかし、実際にはカビやキノコ(真菌類)
とはかなりの遠縁で、現在ではコンブやワカメ、
あるいは、珪藻類などを含むストラメノパイル生物
(鞭毛にストロー状の細かい毛が生えている一群)の
仲間であると考えられています。

 ミズカビの仲間は、卵胞子という耐久性の胞子を
作るため卵菌類とも呼ばれており、この卵菌類には
死んだ生物を分解する腐生性のものと、生きた生物に
感染する寄生性のものが存在します。寄生性の卵菌の
中では、ジャガイモやブドウなど農作物に寄生する
ものが有名ですが、土壌中や水中に生息する線虫など
のミクロ生物に寄生するものも数多く知られています。
その感染方法は様々ですが、通常は胞子が宿主生物に
付着して感染します。しかし、中には通常とは全く
異なった感染方法を持つ卵菌も存在します。土壌や
水中に住む線虫に寄生する、ハプトグロッサ属の卵菌
もそのうちの一つです。

 ハプトグロッサ属は、現在11種のみが記載されて
いる小さなグループで、林や畑の土、牛のフンなどに
生息していることが知られています。この属は
「鉄砲細胞」と呼ばれる特殊な胞子を使い線虫を
攻撃するという特徴を持っています。鉄砲細胞は、
およそ10マイクロメートル(100分の1ミリメートル)
程度の大きさで、胞子の内側には、するどくく尖った
針のような構造物を持っています。この鉄砲細胞は、
普段は土の中でじっと線虫が通りかかるのを待って
います。そして、通りかかった線虫が鉄砲細胞の
先端部に接触すると、瞬時に針が飛び出し線虫の表皮
に穴を開けます。それとほぼ同時に、鉄砲細胞の中の
原形質が小胞子として、表皮に開いた穴を通って線虫
の体内に撃ち込まれます。線虫と鉄砲細胞の接触から
小胞子の撃ち込みが終了するまでは、およそ0.3秒。
肉眼ではほとんど捉えることの出来ない、凄腕の
ガンマンのような早技です。攻撃を受けた線虫は
徐々に弱っていき、1日後には死んでしまいます。
小胞子は死んだ線虫の栄養を吸収しながら、徐々に
大きくなっていき、成熟すると胞子のうとなり胞子を
放出します。放出された胞子は発芽して鉄砲細胞を
形成し、線虫が再度通りかかるのを待つのです。

※ ハプトグロッサの“射出のしくみ”のようすは
以下のリンク先をご覧下さい(写真あり)
http://shiokaze-kouen.net/micro/info/page299.html

 このように特殊な感染方法を持つハプトグロッサ
ですが、感染方法がユニークなだけではなく卵菌類の
進化を考える上でも重要な生物であることが、分子系統
学(遺伝子の型の違いから生物進化の道筋を探る学問)
的な研究によってわかってきました。一般に、卵菌類
は海に住む寄生性のものから、陸に住む腐生性のもの
へと進化してきたと考えられています。しかし、最近の
分子系統学的な研究の結果、陸に生息する卵菌である
ハプトグロッサが、卵菌類の中で原始的な生物であり、
他の陸に住む卵菌とは別のルートで陸に適応進化した
可能性があることがわかりました。ハプトグロッサが
どのように陸に適応してきたのかはまだわかりませんが、
ハプトグロッサと近縁な、陸に住む卵菌を発見し、
研究することで、卵菌類の進化の道筋が解けるのかも
しれません。

 ミクロ生物は、土壌、水中、空中など自然界の至る所
に存在しており、その中には今回紹介したハプト
グロッサのように、私たちが普段生活している場所の
すぐ近くで生活しているものも数多く存在しています。
しかし、ミクロ生物はあまりにも小さく、肉眼で見る
ことが出来ないため、動物や植物に比べるとわかって
いないことが実に多く、日々新しい発見がなされて
います。みなさんの普段歩いている土の下にも、大発見
につながるミクロ生物が隠れているかもしれません。


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1】「人類の未来を明るくする!?
   光るプランクトンたち」展 開催中!

プランクトン、それは水の中をゆったりのんびり
漂いながら生活する生き物たち。
クラゲにミジンコ、ミドリムシと、癒し生物の
オンパレードですが、彼らのなかには、見た目の
かわいらしさに加え、幻想的な光で癒しを与えて
くれる、究極の癒し生物が存在します。

新月の日の夜の海に行くと、波打ち際がまるで
天の川のようにきらきらと青く輝く光景に出会う
ことがありますが、その正体は風船のような姿が
愛らしい“ヤコウチュウ”です。時折、流れ星の
ようにキラリと青い軌跡を描くのは、ミジンコの
親戚“ウミホタル”。この2種類については、
ご存知の方も多いのではないでしょうか。

光の癒しに加えて、我々人類の未来をも明るく
してくれる、ものすごいプランクトンもいます。
そう、日本人研究者である下村脩博士のノーベル
化学賞受賞で一躍有名になった“オワンクラゲ”
です! オワンクラゲは成長すると20cm近くに
なるため、もはやミクロ生物の範疇を超えて
しまっておりますが、彼ら、彼女らが持つ発光
物質“GFP(緑色蛍光タンパク質)”は、生物学、
医学、薬学分野の研究を飛躍的に進歩させた
ことから、“生物の発光”を語るうえで欠かす
ことのできない存在です。

本企画展では、目に見えない小さな光るプランク
トンたちとオワンクラゲを中心に、ミクロから
マクロまで、“生物の発光”について、一部
実物や映像を交えながら、楽しく学習できます.
オワンクラゲのGFPについては、バイオイメージング
学会所属の先生方のご協力により、実際に
どのように研究で活用されているか、美麗な
顕微鏡写真で楽しく学べます。

詳細は以下のURLでもご覧になれます。
http://www.shiokaze-kouen.net/micro/info/page296.html

皆様のご来場をお待ちしております。

展示協力:
 就実大学薬学部
  洲崎 悦子 先生、豊村 隆男 先生、森 宏樹 先生
 鶴岡市立加茂水族館
  奥泉 和也 様
 水産大学校
  上野 俊士郎 先生
 神戸大学大学院理学研究科
  洲崎 敏伸 先生
  福田 康弘 博士
 東京理科大学理工学部
  朽津 和幸 先生
 産業技術総合研究所
  加藤 薫 先生
 山口大学大学院医学系研究科
  長谷川 昭洋 先生
 東京大学循環器内科
  西村 智 先生
                  (順不同)


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2】芸術の秋・ミクロ生物の秋
 「第一回 ミクロ生物絵画コンテスト」作品募集中!

あっという間に夏が過ぎ、気がつけば、すっかり
秋らしくなりました。
秋といえば、食欲? スポーツ? そう、“芸術”
です。涼しくなり、落ち着いて顕微鏡観察できる
ようになった今こそ、ミクロ生物をじっくり観察
する好機です。

そこで! ミクロ生物館ではこの秋、ミクロ生物を
題材にした絵画コンテストを実施することに致し
ました!

テーマは“わたしの好きなミクロ生物”。
顕微鏡を使わなければよく見えない小さな生物で
あれば、どんな生物でも構いません。
絵筆書きでも、鉛筆書きでも、CGでもOK!
リアルさを追求したもの、絵心あふれるかわいい
イラストなど、皆様の個性を前面に押し出した
力作をお待ちしております。

応募作品は、11月3日(火)から23日(月)
まで館内及びホームページにて展示し、投票で
受賞者を決定します。

見事受賞された方には、特製ミクロ生物グッズ
をプレゼント!

詳細は以下のURLをご覧ください。
http://www.shiokaze-kouen.net/micro/info/page296.html

多数のご応募、お待ちしております!


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3】お待たせしました!
  「マイクロ王! 第3弾 もっと拡張セット」
           10月中旬販売開始です!!

日本全国のミクロ生物ファンの皆様、大変お待たせ
致しました! 原生生物カードゲーム「マイクロ王」
の第3弾セットが、ついに販売開始です!!
今回は、みんなの人気者“ボルボックス”や“透過型
電子顕微鏡”など、総勢18種類のカードが登場!
ユニークなカードも入っています。

10月中旬より、ホームページと当館前販売
コーナーにて販売開始! 定価は420円(税込)です。
お楽しみに!!


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4】「放散虫の世界」展、続々増強中!!

ウニ? 人形? 宇宙船? これらは全て、放散虫
(ほうさんちゅう)と呼ばれる単細胞生物を初めて
見た人が、放散虫に対して抱く印象です。
死んでも炭酸カルシウムの頑丈な骨格が残るため、
石の中でも見つかるのですが、近日、山口大学
理学部の鎌田祥仁准教授のご協力を得て、岩国市内
の石の中から取り出された、古生代から中生代に
かけて生きていた放散虫化石の実物展示を開始
します!

他にも、放散虫が持つさまざまな特徴や、現代科学
とのつながりに関する展示などを増強しております
ので、ぜひ一度、ご覧ください。


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5】8月27日から9月26日までのミクロ生物館 NEWS

※ 詳細は各記事下のURLをご参照ください。

<< 8月28日(金)
NACS山口研究会がミクロ生物と環境について学習
http://www.shiokaze-kouen.net/micro/news/page403.html

<< 9月6日(日)
広島市みどりの少年団がミクロ生物の体験学習
http://www.shiokaze-kouen.net/micro/news/page404.html

<< 9月19日(土)・20日(日)
萩高校科学部が研究活動
http://www.shiokaze-kouen.net/micro/news/page405.html


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  編集後記
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 ミクロ生物館では毎年、近所の中学校のボラン
 ティアさんを受け入れており、当館の仕事の
 お手伝いなどで大活躍してくれているのですが、
 今年の中学生達は例年に増して頻繁にお手伝い
 に来てくれます。 当館の活動内容に対しても
 いろいろとアドバイスしてくれる参謀たち。
 本当にありがとう! 彼らの力を借りて、当館
 の展示やイベントは更に進化していくことで
 しょう!            (末友)
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●岩国市ミクロ生物館 お問い合わせ先
 住所:〒740-1431
 山口県岩国市由宇町有家浦
 潮風公園みなとオアシスゆう 交流館内
 Fax:0827-62-0156(24時間受付)
 E-mail:micro@shiokaze-kouen.net
 Website: http://shiokaze-kouen.net/micro

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●次号の配信日は 10月26日です。お楽しみに!

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岩国市ミクロ生物館ニュースは、これからも
内容の充実に努めてまいります。
皆様のご意見、ご感想等、お待ちしております。
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発信元: 岩国市ミクロ生物館
館長・メールマガジン担当: 末友 靖隆

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