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岩国市ミクロ生物館
岩国市ミクロ生物館 メールマガジンバックナンバー
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このメールは、過去にミクロ生物館主催の行事に
参加された皆様、およびミクロ生物館からの情報
配信を希望された皆様にお送りしています。各種
お問い合わせ、配信停止についてはこのメールの
後方をご覧ください。
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■━━ 岩国市ミクロ生物館ニュース ━━■
--- 第 4 3 号 ---
* * * * ミクロの世界にようこそ! * * * *
“本誌はミクロ生物好きな方のネットワークづくりの
サポートを目的として発刊されました。ここでしか
得られない情報など特典盛りだくさんで毎月26日
(26日が火曜日の場合は27日)に配信致します。
ぜひご活用ください!”
<目次>
☆ミクロ生物スペシャルコラム
“酵母で進むミトコンドリア研究”
山口大学大学院 理工学研究科 教授 宮川 勇
1】8月7日(金)に放散虫化石の観察・学習会
“ミクロ生物から地球の歴史がみえてくる!”
を開催します!
2】放散虫化石の実物展示スタート!
3】“クロララクニオン植物のふしぎな生きかた”展
8月よりスタート!
4】8月9日の科学の祭典in岩国に出展します
5】ミクロ生物館培養コレクションにブレファリスマ
が仲間入りしました!
6】6月27日から7月26日までのミクロ生物館 NEWS
◎ 編集後記
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ミクロ生物スペシャルコラム
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*** 酵母で進むミトコンドリア研究 ***
宮川 勇 (MIYAKAWA、 Isamu)
山口大学大学院 理工学研究科 教授
酵母は単細胞で生きている菌類の総称であり、種や
属を厳密に表す言葉ではありません。現在、数百種の
酵母が分類されていますが、基礎研究には
サッカロミセス・セレビシエ(いわゆるパン酵母)が
最もよく使われており、私たちも主にこの酵母を
使っています。今から50年ほど前にフランスの
微生物学者エフルッシは、寒天培地で培養した酵母の
コロニーの1%ほどが他のものより小さいことに
気がつきました。彼は、これをフランス語で
「小さい」を意味する“プチ”コロニーと名付け
ました。実は“プチ”は好気呼吸(酸素を必要とする
細胞呼吸)ができない酵母のコロニーでした。
これが、ミトコンドリア遺伝学の始まりです。
すべての生物のミトコンドリアには共通して、
固有のDNA (mtDNA)が存在します。エフルッシの発見
からしばらくして、酵母のmtDNAは部分的欠失が
出来易く、そのため容易にプチコロニーを形成する
ことが分かりました。プチの研究が発展して、酵母は
ミトコンドリア・ゲノムが最も詳細に研究される生物
となりました。ミトコンドリア遺伝子にいくつかの
突然変異を持った酵母同士を交雑(遺伝的に異なる
2個体間の交配)する実験から、細胞内にある
ミトコンドリアは頻繁に遺伝子の組換えを行っている
ことが、遺伝学者の研究で明らかになりました。
1980年代に私たちは酵母のミトコンドリアの形態変化
を調べ、酵母の生活環のいたるところで
ミトコンドリアがお互いに融合と分裂を繰り返して
いることが、ミトコンドリア遺伝子組換えの基礎
となっていることを示しました。
では、二重の膜で囲まれたミトコンドリアは
どのような仕組みで融合や分裂を行うのでしょうか?
この疑問は、やはり酵母を中心として分子生物学者
により研究され、酵母からヒトに至るまで、共通して
ミトコンドリア融合タンパク質Fzo1pと分裂タンパク質
Dnm1pが存在することが明らかになりました。酵母で
明らかになったことはヒトにも通用することが多く、
酵母は真核モデル生物とよばれます。確かに酵母の
威力は大きいと言えます。
mtDNAはどのような仕組みで複製され、子孫に分配
されるのでしょうか?
この問題へのアプローチのひとつとして、私たちは
酵母のmtDNAが特定のタンパク質と結合して核様体
(ヌクレオイド)とよばれる凝縮した高次構造を
形成していることを明らかにしました。
ミトコンドリアは電子伝達系により活性酸素を発生
するため、ミトコンドリア核様体は活性酸素による
障害からmtDNAを保護する機能も保持していると
考えられます。現在は医学研究者によって、ヒトの
老化や病気とミトコンドリア核様体タンパク質との
関連が調べられ、興味深い結果が発表されています。
細胞内にある数十個(動物細胞では数百個以上)の
ミトコンドリアは全て同じように、mtDNAの複製を
しながら二分裂によって増殖しているのでしょうか?
mtDNAの複製と子孫への継承を専門に行う
ミトコンドリアや呼吸を専門に行うミトコンドリア、
といった役割分担はないのでしょうか?
これらの問題についても、現在、酵母研究者により
ミトコンドリア遺伝の分子機構が研究されています。
ミトコンドリアは、かつて真核生物の祖先の細胞に
共生したαプロテオバクテリアを起源にもつと
考えられます。現在のミトコンドリアの真実を
明らかにすることは、真核生物の仕組みそのものを
明らかにすることに繋がります。
私たちの研究室でも、ミトコンドリア基礎研究への
貢献をめざして、酵母を用いた研究を続けています。
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1】8月7日(金)に放散虫化石の観察・学習会
“ミクロ生物から地球の歴史がみえてくる!”
を開催します!
8月7日(金)の13時から16時30分まで、ミクロ
生物館にて放散虫化石の観察・学習会“ミクロ生物
から地球の歴史がみえてくる!”を開催します。
放散虫(ほうさんちゅう)は、主に海の中を漂って
生活している原生生物です。死んでも分解されない
丈夫なカラを持ち、死ぬとカラのみが海底に堆積
します。海底に堆積したカラは、長い年月を経て
チャートなどの岩石となります。
これら化石としてみつかる放散虫のカラは、その
形状から地質の年代を特定することができるため、
地質学的に重要な役割を持っています。
また、カラそのものも、まるで美術品のように
多彩な姿をしているため、ただ眺めるだけでも
楽しめます。
本学習会では、山口大学准教授の鎌田祥仁先生を
講師にお招きし、チャートの顕微鏡観察、石の中
に含まれる放散虫化石の取り出し方、スケッチ
のしかた、生きている放散虫の採集・観察を通じ、
放散虫について広く、深く、そして楽しく学んで
いただけます。
小学校高学年から大人の方までお楽しみいただける
内容となっておりますので、皆様ぜひご参加
ください(事前予約が必要です)。
<概要>
日時: 8月7日(金)
13:00〜16:30
※ 8月5日までにご予約ください(先着順)
場所:ミクロ生物館・潮風公園
対象:小学校高学年以上 (小学生は保護者同伴)
参加費:1名あたり200円
準備物:筆記用具、動きやすい服装、タオル
講師:山口大学理学部 鎌田祥仁 先生
※ プログラムの内容は、天候の都合により変更
する場合があります。
参加ご予約はお電話にて受け付けております。
◇お電話: 0827(62)0160
(受付時間 11:00〜17:00)
※ ただし、時間帯によっては職員不在の場合が
ございます。
皆様のご参加、職員一同お待ちしております。
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2】放散虫化石の実物展示スタート!
今年の夏は放散虫が盛りだくさん! 観察会と一緒
にぜひ体験していただきたいのが、放散虫化石の
実物展示です。観察会には日程の都合で参加
できないけれど、放散虫の化石をぜひ観察して
みたいという方も、これで安心です。
チャートの中や、深海4、000 mの海底の泥などから
採集された放散虫化石の数々を思う存分観察して
いただけます。
山口大学理学部の鎌田准教授と愛媛大学理学部の
堀准教授のご協力により実現しました。
この夏は、放散虫の化石から、数千万、数億年前の
地球の姿を想像されてみてはいかがでしょうか。
8月上旬より展示スタート!
実物展示に合わせて、放散虫の特徴を詳しく紹介
した新たな展示も加わる予定です。
皆様ぜひ、放散虫の世界をお楽しみください。
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3】“クロララクニオン植物のふしぎな生きかた”展
8月よりスタート!
この夏はクロララクニオン植物も熱い!!
クロララクニオン植物は海にすむミクロ生物です。
葉緑体を持っているのですが、この葉緑体の構造が
他の藻類とはかなり異なることから、1984年に
全く新しいグループとして分類されました。
葉緑体には普通、設計図であるDNAはありますが、
核はありません。ところが、クロララクニオン植物
の葉緑体には核のような構造があります。
また、葉緑体を包む膜も、普通は2重膜なのです
が、クロララクニオン植物では4重膜と、ぜんぜん
違います。
どうしてこんなに変な葉緑体を持っているのか?
気になりますよね!?
でも、クロララクニオン植物の魅力はそれだけ
ではないのです。
一生の過ごし方(生活環)もとってもユニーク!
どのようにユニークなのか!?
変な葉緑体を持っている理由は!?
その答えはミクロ生物館にあります!
日本でも数カ所でしか発見されていない、とても
レアなクロララクニオン植物ですが、筑波大学
大学院の石田健一郎先生の研究室の皆様、それに、
フランスロスコフ生物学研究所の大田博士のご協力
により、実物展示も行います!!
展示は8月上旬よりスタート!
ご期待ください!!
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4】8月9日の科学の祭典in岩国に出展します
8月9日(日)、岩国市由宇町の銭壺山上にある
“山口県ふれあいパーク”にて、“青少年のための
科学の祭典 in 岩国”が開催されます。
ミクロ生物館も“ミクロ生物の模型を作ろう”
という名前で、顕微鏡で観察した生物の模型を
作るブースを設けます。
当館のブース以外にも面白いブースが目白押しで、
しかも無料ですので、皆様ぜひご参加ください。
お待ちしております。
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5】ミクロ生物館培養コレクションにブレファリスマ
が仲間入りしました!
ブレファリスマ、和名“ベニイロミズケムシ”は、
ゾウリムシと同じく繊毛虫類に属する単細胞生物
です。
形はゾウリムシにどことなく似ているものの、
“ベニイロ”の名のとおり、紫がかった赤色の色素
を持ち、サツマイモのような姿をしています。
日本各地の田んぼなどにすんでいますが、意外と
なかなか発見できないブレファリスマ。
授業や研究でご入り用の方は、ぜひ当館まで
お問い合わせください。
◇お電話: 0827(62)0160
(受付時間 11:00〜17:00)
※ ただし、時間帯によっては職員不在の場合が
ございます。
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6】6月27日から7月26日までのミクロ生物館 NEWS
※ 詳細は各記事下のURLをご参照ください。
<< 7月3日(金)
山口県の赤潮・貝毒研修会に参加
http://www.shiokaze-kouen.net/micro/news/page378.html
<< 7月5日(日)
山口県ふれあいパークのイベント参加者が
ミクロ生物を観察
http://www.shiokaze-kouen.net/micro/news/page379.html
<< 7月8日(水)
岩国市立柱野小学校の皆さんが館内見学
http://www.shiokaze-kouen.net/micro/news/page380.html
<< 7月8日(水)・10日(金)・14日(火)
岩国市立由宇中学校3年生が「調べ学習」活動で
ラボ利用
http://www.shiokaze-kouen.net/micro/news/page381.html
<< 7月22日(水)
岩国市周東文化協会の皆様が館内見学
http://www.shiokaze-kouen.net/micro/news/page382.html
<< 7月23日(木)
「親と子の水辺の教室」を岩国市立岩国西中学校
にて開催
http://www.shiokaze-kouen.net/micro/news/page383.html
<< 7月24日(金)
周南市立八代小学校5、6年生が採集・観察活動
http://www.shiokaze-kouen.net/micro/news/page384.html
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編集後記
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今年の夏は、例年にも増して、ネイチャーラボ
が夏休みの自由研究等に活用され、日々小・中
学生たちで賑わっています。先着順ですが、
まだ空いている日もございますので、今年の夏
はミクロ生物で一旗揚げるぞ! というやる気
あふれる皆様は、ぜひご活用ください。
予約制ですので、ご利用の際は1週間前までに
当館までお電話ください。
(ミクロ生物館:0827-62-0160) (末友)
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●岩国市ミクロ生物館 お問い合わせ先
住所:〒740-1431
山口県岩国市由宇町有家浦
潮風公園みなとオアシスゆう 交流館内
Fax:0827-62-0156(24時間受付)
E-mail:micro@shiokaze-kouen.net
Website: http://shiokaze-kouen.net/micro
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●次号の配信日は 8月26日です。お楽しみに!
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岩国市ミクロ生物館ニュースは、これからも
内容の充実に努めてまいります。
皆様のご意見、ご感想等、お待ちしております。
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発信元: 岩国市ミクロ生物館
館長・メールマガジン担当: 末友 靖隆
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