岩国市ミクロ生物館

岩国市ミクロ生物館 メールマガジンバックナンバー

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 このメールは、過去にミクロ生物館主催の行事に
 参加された皆様、およびミクロ生物館からの情報
 配信を希望された皆様にお送りしています。各種
 お問い合わせ、配信停止についてはこのメールの
 後方をご覧ください。
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■━━  岩国市ミクロ生物館ニュース  ━━■
      ---  第 4 0 号  ---

  * * * * ミクロの世界にようこそ! * * * *

“本誌はミクロ生物好きな方のネットワークづくりの
サポートを目的として発刊されました。ここでしか
得られない情報など特典盛りだくさんで毎月26日
(26日が火曜日の場合は27日)に配信致します。
ぜひご活用ください!”


<目次>

☆ミクロ生物スペシャルコラム
 “ゾウリムシと粘菌のはなし”
 山口大学大学院 医学系研究科 助教
 JSTさきがけ研究者(生命システム領域)
                  岩楯 好昭

1】新展示“放散虫 自然が生んだ美のかたち”
  5月1日よりスタート!

2】“映像集 淡水のミクロ生物たち”サンプル映像
  配信準備中!

3】3月27日から4月26日までのミクロ生物館 NEWS

◎ 編集後記


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      ミクロ生物スペシャルコラム
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    *** ゾウリムシと粘菌のはなし ***

 岩楯 好昭(IWADATE、 Yoshiaki)
    山口大学大学院 医学系研究科 助教
    JSTさきがけ研究者(生命システム領域)

 僕は、大学の卒業研究からゾウリムシを使って細胞
の中の情報処理や繊毛運動の研究を行い、その後、
現在は細胞性粘菌を使ってアメーバ運動の研究を
やっています。今回、このコラムを書く機会を与えて
頂いて、これまでのコラムをもう一度改めて読ませて
頂き、皆さんがそれぞれに携わっておられるミクロ
生物に深い愛情を持っていることがよく分かりました。
この携わっている生き物への愛情は、同業者の方と
直接お話させて頂くときにもよく感じることです。
研究者の間でも、昆虫採集好きの子供よろしく、
どこの池に行けばどんな繊毛虫が採れるなんてことが
たまに話題になります。しかし、白状しますが、
恥ずかしながら僕は野外でゾウリムシも粘菌も探した
ことが無いばかりか、そもそも池の水をくんで顕微鏡
で覗いてみようと思ったことすらありません・・。

 ミクロ生物を扱っていながら、僕のミクロ生物に
対するこの愛情の無さはなんなのかと考えると
(いや、本当は、周りの研究者の愛情の深さに
びっくりしているんですが)、どうもそれは、今に
至るまでのバックボーンの違いなんだろうと思います。
生物研究者の中には、生物出身の人のなかにちらほら
物理出身の人間がコンタミ(混入)しています。
僕もその1人です。思い返せば、高校一年生でメンデル
の法則に辟易してから、生物学に僕は縁がなく、大学
では物理を勉強していて、ATP(アデノシン三リン
酸・生物体内でのエネルギーのやり取りに重要な働きを
する高エネルギーリン酸化合物)がなんなのか知った
のは大学4年生の生物物理の卒業研究を始めてから
です。そんなわけで、僕は、今に至るまで生物学を
系統だててまともに勉強したことが無く、今も無免許
運転の生物学者かもしれません。だからでしょうか、
どうやら僕は、ゾウリムシを見るときも、粘菌を見る
ときも、それらを生き物という愛情を感じる対象と
して見てはおらず、生命現象という難解な物理現象が
起きる場としてのみ見ているみたいです。そんな愛情
の欠けた?目から見たゾウリムシや粘菌の話ですが、
読んでいただければ幸いです。

 僕の研究対象はゾウリムシでも粘菌でも細胞の運動
です。ゾウリムシはうすい界面活性剤に浸すと細胞膜に
穴を開けることができます。この状態に置いておくと、
やがて自前のATPを使い果たし動きが止まります。
この死んだゾウリムシをATPを含んだ水の中に入れる
と、そのゾウリムシの死体は動き始めます。
僕がゾウリムシの運動を本当に面白いと思ったのは、
初めてこの死んだゾウリムシが動くのを見た時でした。
生き物(ゾウリムシ)は、人の理解の及ばない摩訶
不思議な法則で動いているのではなく、機械と同じで
理解できるものなんだと実感したからです。
ゾウリムシは体表全体を覆う繊毛(せんもう)を使って
泳いで動きます。したがって、ゾウリムシの動きを理解
するためには繊毛の動きを理解しないとなりません。
繊毛は、その内部にダイニンやチューブリンとよばれる
多くの種類のタンパク質群が、機械式の腕時計のように
精密に配列していることが知られています。そして、
それらのタンパク質が時間空間的に、一糸乱れぬ秩序
だった動きをすることで、1本の繊毛の運動が成り
立っています。僕にとってゾウリムシの魅力は、人間の
手では決して作ることができない、極めて緻密な
精密機械としての魅力で、その仕組みを理解するのは、
ちょうど、自動車の高性能のエンジンがどういう仕組み
になっているのかを理解したいという気持ちと同じもの
でした。

 さて、粘菌はどうでしょう。粘菌アメーバの運動は
繊毛運動とは違って、まるでデタラメです。ぐにょぐにょ
してます。このとても精密機械とは思えない運動は、精
密機械のゾウリムシに慣れた僕にはすごい違和感
でした。しかし、よくよく考えてみると、細胞はぐにょ
ぐにょしながらも、壊れてしまうようなことは決して
無く、それどころか、ちゃんとある決まった方向に
進んでいくではないですか。もし、細胞の部分部分が
てんでんバラバラに勝手に動こうとしては、決まった
方向になんか進めないし、そもそも細胞がちぎれて破綻
してしまうはずです。ということは、細胞はぐにょぐにょ
してはいるものの、細胞全体としてシステマティックに
連動し、極性という秩序を自ら生み出していることに
なります。
アメーバ運動というものは、アクチンやミオシンといった
分子の運動から成り立っているといわれています。繊毛
と違い、不定形でぐにょぐにょした中での、分子運動の
ようなミクロな運動が、どうやって細胞のようなマクロ
なレベルでの秩序形成に発展できるのでしょう?僕に
とっての粘菌アメーバの面白さは、まさにこのミクロな
分子運動とマクロな細胞レベルの秩序形成との間の
ギャップです。

 以上のように、ゾウリムシも粘菌もどちらもミクロ
生物かもしれませんが、僕にとってはその面白さは全く
異なるものでした。ゾウリムシの繊毛は精密機械で、
粘菌のアメーバ運動は自己組織化とか秩序形成としての
面白さです。ただ、いずれも物理現象として見ている
ことは共通しています。バックボーンに生物学がある人
なら、たぶん、池に行ってゾウリムシを採取したり、
林に行って粘菌を採取するといった興味もあるので
しょう。そういう博物学的な知識や興味は僕にはとても
うらやましいものです。僕にはそういう知識が無く、
仕方ないので、今の時期は池でも林でもなく瀬戸内海に
釣りに行きます・・。


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1】新展示“放散虫 自然が生んだ美のかたち”
  5月1日よりスタート!

“放散虫(ほうさんちゅう)”をご存じですか?

5億年以上も昔から海中を漂って生活している単細胞
生物で、さまざまな形をした丈夫なカラを持って
います。放散虫が死ぬと、カラだけは分解されずに
残り、海の底に沈みます。沈んだカラは、長い年月を
経て化石となるのですが、その形が年代や環境に
よってさまざまであることから、地層から化石を取り
出し、種類を特定することで、地質の年代や大昔の
海の環境の解明に利用することが可能です。

このように、昔の環境を考えるうえで大変役に立って
いる放散虫たちですが、その幾何学的で美しい姿は
大昔から現在に至るまで、多くの科学者たちを虜に
してきました。

本展示では、放散虫が持つ“形”の魅力を中心に、
今から約150年も昔に放散虫の魅力を美しいスケッチ
で記したヘッケル氏のイラスト集、放散虫研究
集会所属の西村明子氏の提供による放散虫風呂敷、
筑波大学の井上勲教授提供の電子顕微鏡写真、
それに、愛媛大学の堀利栄准教授提供の放散虫映像
などの展示を行います。

宇宙船のような姿をした放散虫たちが織りなす美の
世界。海水浴シーズンを前に、“こんな生物たちと
一緒に泳いでいるんだ”という感動?を味わいに、
ぜひいらしてください。

なお、こちらは常設展となりますので、5月以降
でしたらいつでもご覧いただけます。夏休み限定の
体験イベントにつきましても、現在鋭意準備中です
ので、こちらもご期待ください!


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2】“映像集 淡水のミクロ生物たち”サンプル映像
  配信準備中!

前々号のメールマガジンでご紹介以来、大好評の
原生生物DVD“映像集 淡水のミクロ生物たち”。

これまでは、映像の一部を静止画像としてご紹介
することしかできませんでしたが、本作の魅力を
最大限伝えるべく、このたび、サンプル映像を
当館ホームページからダウンロードできるように
すべく、準備を進めております。

さまざまな微小生物たちの、貴重で衝撃的なシーン
や芸術作品のように幻想的なシーン満載!
じっくり眺めれば、微小生物物識り博士に、
リラックスして眺めれば、癒し効果抜群!

ご購入を検討されている方も、そうでない方も、
ぜひ一度、サンプル映像をご覧下さい。
“百聞は一見に如かず”です。

当館のシステム管理の都合上、具体的な日時を
お伝えすることはできませんが、本メールマガジン
発刊後1、2週間以内にはダウンロードできるように
致します。


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3】3月27日から4月26日までのミクロ生物館 NEWS

※ 詳細は各記事下のURLをご参照ください。

<< 3月29日(日)
赤潮プランクトンマップをつくる会 観察会を開催
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page366.html

<< 4月11日(土)
愛媛大学の研究室がゼミ合宿で館内見学
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page367.html


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  編集後記
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 すっかり初夏の陽気に・・・と思ったら、突然
 寒くなったりと、寒暖が激しい日が続いており
 ます。寒暖が激しいと、どうしても風邪をひき
 やすくなってしまいますが、怖いことに、遠く
 メキシコのほうでは、豚インフルエンザの流行
 が報告されています。なんとも怖い話です。
 皆様、本当にお気を付けください。 (末友)
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 潮風公園みなとオアシスゆう 交流館内
 Fax:0827-62-0156(24時間受付)
 E-mail:micro@shiokaze-kouen.net
 Website: http://shiokaze-kouen.net/micro

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●次号の配信日は 5月27日です。お楽しみに!

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岩国市ミクロ生物館ニュースは、これからも
内容の充実に努めてまいります。
皆様のご意見、ご感想等、お待ちしております。
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メールマガジン担当: 末友 靖隆

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