岩国市ミクロ生物館

岩国市ミクロ生物館 メールマガジンバックナンバー

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 このメールは、過去にミクロ生物館主催の行事に
 参加された皆様、およびミクロ生物館からの情報
 配信を希望された皆様にお送りしています。各種
 お問い合わせ、配信停止についてはこのメールの
 後方をご覧ください。
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■━━  岩国市ミクロ生物館ニュース  ━━■
      ---  第 3 9 号  ---

  * * * * ミクロの世界にようこそ! * * * *

“本誌はミクロ生物好きな方のネットワークづくりの
サポートを目的として発刊されました。ここでしか
得られない情報など特典盛りだくさんで毎月26日
(26日が火曜日の場合は27日)に配信致します。
ぜひご活用ください!”


<目次>

☆ミクロ生物スペシャルコラム
 “「種」を考える”
   立命館大学 生命科学部 助手 保科 亮

1】訃報 ゾウリムシ研究の第一人者、樋渡宏一博士
  が逝去されました

2】“映像集 淡水のミクロ生物たち”販売スタート!

3】ミクロ生物館館長に末友専門職員が就任しました

4】4月10日(金)閉館時刻変更のお知らせ

5】2月27日から3月26日までのミクロ生物館 NEWS

◎ 編集後記


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      ミクロ生物スペシャルコラム
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      *** 「種」を考える ***

 保科 亮(HOSHINA、 Ryo)
         立命館大学 生命科学部 助手

 「タネ」じゃなく「シュ」のはなし。ヒグマとか、
ノコギリクワガタとか、イチョウとか、身の回りの
生物は家畜や園芸品種でない限り、おおよそ種をその
もっとも小さな分類の単位として用いる。「種とは
なにか」、非常にクラシカルな匂いのする話題だが、
実はいまだ議論の渦中にあったりする。

 現在最も受け入れられている種は、子孫を残すこと
のできる生殖的な集団の単位であり、これは「生物学
的種概念」と言いあらわされる。たとえば、ロバと
ウマの間に子(ラバ/ケッティ)は生まれるが、子は
生殖能力が欠落するため子孫を残すことができない。
すなわち、ロバとウマは近縁ではあるが「別種」と
いうわけだ。

 ミクロの生物世界ではどうだろうか。まず、形態的
に区別のつかない2生物を考えてみる。具体例として、
生殖しない2匹(株)のゾウリムシ(Paramecium caudatum)
をあげよう。雄同士だったから? もちろんそれも
あろうが、そう単純な問題では済まないようだ。
ゾウリムシには性とはまた別個に生殖可能なグループ、
すなわち生殖的に隔離されたグループが16も知られて
いる。こうした生殖グループをシンジェンと呼び、
ヒメゾウリムシ(P. aurelia-complex)では15の
シンジェン各々を別々の種として記載しなおされた。
既述の生物学的種概念のもとでは、シンジェンは
確かに種である。しかし、いくつかのシンジェン間
では「生殖しようと」するし、DNAを調べてみても、
それぞれのシンジェンの独立性を示す証拠どころか、
どちらかというと否定的な結果ばかりが出てきている。

 そもそも有性生殖を行わない生物はどうだろうか。
健康食品として有名なクロレラ(Chlorella)は、分裂
(自生胞子)によってのみ増殖する。湖沼、土壌表面
やコンクリートの壁面等ユビキタスにみられるが、
どれも同一の種であろうか。現在、分類学的には
クロレラ属に3種が認められている。この3種、形態
では区別がつかないが、わずかに生理特性が異なり、
DNAでみるとしっかりとした隔たりがある。しかし、
未同定のクロレラ(保存機関の株や野外採集株、
原生動物の共生藻など)のDNAを調べると、3種の
どれにもあてはまらないものが多く、クロレラには
まだまだ種がありそうである。上記3種のいずれかに
同定されている株でも、DNAでみると全然違って
いたりもする。つまり、形態と生理特性に依存して
いるだけでは埒が明かないのだ。では、どのように
種を定義できるだろうか。

 集団を分ける場合、たとえばA、Bの2つに分ける
とすると、AとBの間の不連続性が鍵となる。しかし、
どの程度異なれば別種といえるのか、その範囲指定が
難しく、DNAは種を区分する道具としてはまだ確立
されていない。最近、ここさえ読めば(シークエンス
すれば)生物の種同定ができるという、夢のDNA
バーコードとして注目されつつあるのがITS2
(internal transcribed spacer 2)というリボゾーム
RNA遺伝子のスペーサー領域である。ITS2が注目
される理由はいくつかあるのだが、そのひとつがITS2
の二次構造上で起こるある変化と有性生殖可能な
グループが様々な分類群で一致をみせていることだ。
すなわち、このITS2を利用することで、クロレラの
ように交雑試験が不可能な分類群に関しても種の境界
を示せる可能性があるわけだ。

 すべての種は同時に出現したわけではないし、
この一瞬も種分化(あるいは多様化)の流れの中にある
はずである。そう考えると、ゾウリムシの例は、今
まさに生殖的な隔離が起こり、種分化を成し遂げる
過程を見せられているような気になってくる。
種として認識できる範疇にどれだけの遺伝的均一性、
あるいは不均一性があるのか、そこから逆に種分化と
分子進化の関係がどう明らかになっていくだろうか。
さて、皆さんの意識の中にある「種」とはどんなもの
でしょうか。

ITS2の変化と種の境界についての日本語の記述
(pp. 182-183)
http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsproto/journal/jjp39/173-188.pdf


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1】訃報 ゾウリムシ研究の第一人者、樋渡宏一博士
  が逝去されました

日本原生動物学会名誉会員で、東北大学名誉教授、
日本学士院会員の樋渡宏一博士が、平成21年3月7日、
肺炎のため、宮城県仙台市の病院で逝去されました。
享年88歳でした。

樋渡博士は、ゾウリムシを用いた研究から、性的
未熟期を制御するタンパク質“イマチュリン”を
発見された、日本を代表する生物学者でした。

ご生前の輝かしいご功績を偲び、職員一同、心から
ご冥福をお祈り致します。


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2】“映像集 淡水のミクロ生物たち”販売スタート!

学校向けの学習映像教材の制作で、文部科学大臣賞
や科学技術長官賞などの名だたる賞を数多く受賞
されている、(有)EUGLENAの堀田康夫氏。

このたび、ミクロ生物館では、堀田氏のご厚意に
より、これまでに掘田氏が制作された4点の学習映像
教材をベースにした、美麗映像満載、学習・癒し効果
抜群のDVD
“映像集 淡水のミクロ生物たち”
の販売をホームページにて開始致しました!

より多くの人に微小生物の魅力を感じていただきたい
という、掘田氏とミクロ生物館職員の思いが詰まった
傑作です。もちろん、ミクロ生物館でしか購入でき
ません。

さまざまな微小生物たちの、貴重で衝撃的なシーン
や芸術作品のように幻想的なシーンが満載です。

じっくり眺めれば、微小生物物識り博士に、
リラックスして眺めれば、癒し効果抜群!

ぜひ、以下のURLにて、美麗画像を含めた詳細を
ご確認ください。

http://shiokaze-kouen.net/micro/info/page282.html

なお、通信販売に加えて、ミクロ生物館に隣接する
売店での販売も近日開始予定です。

さらに、本映像集のもととなった、学校の授業や
映像ライブラリー等でのご利用向け映像教材4点
「田んぼの中の不思議な生き物たち;水の中の食物
連鎖」、「ゾウリムシ」、「ボルボックス;謎の
球形生物」、「ツリガネムシ;そのユニークな運動
と生き方」
につきましても、当館にてご注文を承っております。
学校の授業等に、ぜひご活用ください。
(近日、ホームページでもご案内致します)


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3】ミクロ生物館館長に末友専門職員が就任しました

2009年3月1日より、ミクロ生物館館長に末友専門
職員が就任致しました。
また、同日付けで、中島篤巳館長は名誉館長に就任
致しました。

規模も扱う生き物も小さな小さな科学館ですが、
今後も、職員が一丸となって館の更なる充実と発展に
努めてまいりますので、引き続きご支援を賜ります
よう、よろしくお願い申し上げます。


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4】4月10日(金)閉館時刻変更のお知らせ

誠に恐れいりますが、出張会議のため、4月10日(金)
は13:30に閉館させていただきます。
ご了承下さいますよう宜しくお願い申し上げます。


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5】2月27日から3月26日までのミクロ生物館 NEWS

※ 詳細は各記事下のURLをご参照ください。

<< 3月13日(金)、14日(土)
専門職員がマイクロコズム研究会に参加
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page363.html

<< 3月15日(日)
「ふれパクフェスタ」で観察会
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page364.html

<< 3月20日(金)、 21日(土)
職員2名が放散虫研究集会に参加
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page365.html


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  編集後記
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 大変どうでも良い話なのですが、この半年の間
 に、ずいぶんと痩せました。一時期、タコと
 ところてんにはまり、運動量の割に、低いカロ
 リー摂取量という日が長く続いたことが勝因
 でしょう。軽くなったと同時に、なぜか冷え性
 にもなってしまいましたが、動作が軽快になる
 と、仕事も軽快にこなせるようになった気が
 するから不思議なものです。これからもこの
 調子で、たくさんの仕事を軽快にこなせるよう
 頑張ります!
 仕事後のリラックスには、本日発売のDVD
 “映像集 淡水のミクロ生物たち”。これしか
 ないでしょう。お世辞抜きで本当にすばらしい
 映像集ですので、皆様もぜひご覧下さい。
 本当にお勧めです。       (末友)
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 住所:〒740-1431
 山口県岩国市由宇町有家浦
 潮風公園みなとオアシスゆう 交流館内
 Fax:0827-62-0156(24時間受付)
 E-mail:micro@shiokaze-kouen.net
 Website: http://shiokaze-kouen.net/micro

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●次号の配信日は 4月26日です。お楽しみに!

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岩国市ミクロ生物館ニュースは、これからも
内容の充実に努めてまいります。
皆様のご意見、ご感想等、お待ちしております。
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