岩国市ミクロ生物館

岩国市ミクロ生物館 メールマガジンバックナンバー

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 このメールは、過去にミクロ生物館主催の行事に
 参加された皆様、およびミクロ生物館からの情報
 配信を希望された皆様にお送りしています。各種
 お問い合わせ、配信停止についてはこのメールの
 後方をご覧ください。
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■━━  岩国市ミクロ生物館ニュース  ━━■
      ---  第 3 7 号  ---

  * * * * ミクロの世界にようこそ! * * * *

“本誌はミクロ生物好きな方のネットワークづくりの
サポートを目的として発刊されました。ここでしか
得られない情報など特典盛りだくさんで毎月26日
(26日が火曜日の場合は27日)に配信致します。
ぜひご活用ください!”


<目次>

☆ミクロ生物スペシャルコラム
 “「有孔虫」その小さく偉大な生き物”
   独立行政法人 海洋研究開発機構
         技術研究主任  木元 克典

1】淡水産微小生物の映像展示が大幅パワーアップ!

2】図鑑のご注文はどうぞお早めに!

3】臨時休館日のお知らせ

4】12月27日から1月26日までのミクロ生物館 NEWS

◎ 編集後記


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      ミクロ生物スペシャルコラム
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  *** 「有孔虫」その小さく偉大な生き物 ***

 木元 克典 (KIMOTO、 Katsunori)
  独立行政法人 海洋研究開発機構 技術研究主任

 皆さんは沖縄や南の島にある真っ白な砂浜をご覧に
なったことがあるでしょう。これらの白い砂浜を構成
する砂の多くは、沿岸に住まうサンゴや貝殻の欠片
ですが、虫眼鏡を使ってさらにじっくり観察してみる
と、乳白色の丸い粒子や星形の粒子が混じっている
ことがわかります。実はこれらの粒子は、原生動物が
つくりだした骨格そのものなのです。今回は、この
小さな粒子の正体、有孔虫(ゆうこうちゅう)という
生き物についてお話ししたいと思います。

 有孔虫は、世界の海に生息している微小なアメーバ
状の原生動物です。乳白色の粒は、細胞質を保護する
ためにつくる炭酸カルシウムでできた骨格で、隔壁を
持つ連続した室(チェンバーといいます)で構成
されています。有孔虫の名前の由来は、この骨格に
細胞質が出入りするための小さな孔が無数にあいて
いることによります。この孔から仮足とよばれる糸状
の粘りのある細胞質をのばし、プランクトンや有機物
などの餌を採って生活しています。有孔虫の骨格は
頑丈で壊れにくいため、化石として海底堆積物の中
にもたくさん保存されています。地質学的な研究に
よると、すでに5億年前のカンブリア紀とよばれる
太古の時代の地層から出現することが明らかになって
います。

 この有孔虫の魅力はなんといってもそのユニークな
骨格のかたちでしょう。大きさは数十ミクロンから
数ミリ程度と小さいため、顕微鏡を使わないとその形
の詳細はみることができません。しかし、ひとたび
顕微鏡を使って海底に堆積した粒子を観察すると、
そこにはありとあらゆる形をした有孔虫の世界が
広がっているのを目の当たりにすることができます。
アンモナイトのように規則的な渦を巻いたもの、
ダンゴ3兄弟のような串ダンゴ型の形のもの、陶器の
壺のように滑らかで光沢質のもの、ポップコーンに
よく似た形をしたもの、などなど、その複雑かつ精密
な造形には驚かされるばかりです。さらには、自身
では骨格はつくらないが、海底の砂や鉱物など、周り
にある素材を巧みに組み合わせて骨格をつくる器用な
ものや、他の有孔虫がつくった骨格を複数拝借して、
自分の骨格にしてしまう図々しいやつらもいます。
このような骨格の形態の違いで分類すると、化石種を
含めてなんと20万種以上にもなるといわれています。
単細胞の生物がどのようにして精密な骨格をつくる
ことができるのか、まだほとんどわかっておらず、
さらなる研究が必要とされています。

 有孔虫は生物学的な研究対象として興味深いだけ
ではありません。地球環境に密接に関係した働き
をしていることがわかってきています。有孔虫がその
殻をつくる際、海水中の炭酸水素イオンを使います
が、このときの反応で二酸化炭素が海水中に放出され
ます。これは結果的に大気中の二酸化炭素を増加
させる方向に働きます。しかし一方で、有孔虫が
死んだのち、堆積物として埋没した炭酸カルシウムの
骨格は、長い時間を経て徐々に海底で溶解します。
炭酸カルシウムを多量に溶解した海水は、より
アルカリ性側に傾きますので、酸性ガスである大気中
の二酸化炭素を海水中に溶かし込むことができるよう
になります。つまり大気中から効果的に二酸化炭素を
取り除くことができるというわけです。言い換える
と、有孔虫の骨格の形成と溶解のプロセスは、大気中
の二酸化炭素量を調節する調整弁としての役割を
担っているといえます。有孔虫は人類が存在する
ずっと以前から今日にいたるまで、地球の環境形成に
深く関わってきたに違いありません。

 私は大学時代に初めてこの生物を知り、その形と
役割に魅了されて有孔虫の研究を始めました。
しかし、この「ひと粒で2度おいしい」有孔虫たちの
存在については、一般にはあまり知られていません。
私は最近、この実に魅力的な有孔虫たちをより多くの
皆さんにより良く知っていただきたいと思い、様々な
分野の方々と協力して手に取ることのできる有孔虫
立体モデルをはじめて制作しました。これは実物の
有孔虫の形態を忠実に拡大した模型ですので、顕微鏡
がなくとも誰でもその形をより良く知ることができ
ます。この模型は4月19日まで、横浜市みなとみらい
地区の日本郵船歴史博物館の展示館で展示されて
います。機会がありましたらぜひご覧になって頂き、
その形の魅力と生命の不思議さを感じていただければ
と思っています。

日本郵船歴史博物館のURL:
http://www.nyk.com/rekishi/exhibitions/event
/eco/index.htm


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1】淡水産微小生物の映像展示が大幅パワーアップ!

当館で一番人気の展示といえば、なんといっても
顕微鏡観察コーナーです。さまざまな微小生物の
生の姿をいつでも観察することができる本コーナー
は、いつもたくさんの人で賑わっております。

そしてこの度、このコーナーに、観察できる各生物
とコラボレーションする形で、各生物の餌の捕まえ
かた、増殖のしかた、天敵に襲われるようすなどの
貴重で衝撃的なシーン満載の映像展示が仲間入り
しました! 制作は、微小生物の映像撮影のプロ中
のプロでおられる、(有)EUGLENA。何度でも
繰り返し観たくなるほど楽しい映像作品です。
生の姿を顕微鏡で眺めつつ、運がなければなかなか
目にすることのできない衝撃的なシーンを映像で
補完することで、気がつけばいつのまにやらその
生物について詳しくなってしまう。 そんな展示を
目指しました。

紹介する生物も、ゾウリムシ、ボルボックスなど、
教科書にもよく登場する身近な生きものが中心と
なっております。“ああ、教科書では原始的な生物
だと習ったけど、よくよく見ると我々よりすごい
ところがたくさんあるじゃない!”と、新鮮な驚き
を感じていただければ幸いです。

寒さが身にしみる今日この頃。 こんなときこそ、
暖房の効いたミクロ生物館で、じっくりたっぷりと
微小生物たちとの楽しいひとときを過ごしてみられ
てはいかがでしょうか。


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2】図鑑のご注文はどうぞお早めに!

現在、“瀬戸内海プランクトン図鑑”をご購入いた
だくと、初回特典としまして、もれなく“微小生物
サイズ比較表”が付属します(1つの注文につき1枚
まで)。この表があれば、観察した生物がどういう
種類か一目瞭然! 自由研究や日頃の調査で役立つ
こと間違い無し!

1月31日までに当館ホームページの通信販売にて
ご注文いただいた方のみの限定サービスです。
図鑑の在庫も少なくなりつつありますので、どうぞ
お早めにご注文ください。実物は届いてからの
お楽しみ!


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3】臨時休館日のお知らせ

2月9日(月)は、職員研修のため臨時休館とさせて
いただきます。ご理解、ご了承の程、よろしく
お願い申し上げます。


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3】12月27日から1月26日までのミクロ生物館 NEWS

※ 詳細は各記事下のURLをご参照ください。

<< 1月4日(日)
「瀬戸内海プランクトン図鑑」発刊!
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page355.html

<< 1月11日(日)
海のミクロ生物探検開催
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page357.html

<< 1月20日(木)
県ふれあいパークで出張観察会
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page358.html


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  編集後記
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 図鑑の売れ行きがおかげさまで絶好調です。
 大学や水産関係の研究員の方、漁協の方、学校
 の先生はもちろんのこと、主婦やお子様、それ
 にご年配の方まで、実に幅広い職業、年齢層の
 方、総勢数百名様にご購入いただいております。
 そして何より嬉しいことに、ご購入いただいた
 多くの方からご好評いただいております。制作
 サイドとして、これ以上の幸せはございません。
 これから先も、初めての方からプロの方まで
 楽しくご活用いただけるような書籍、グッズの
 開発を目指してまいりますので、どうぞご期待
 ください。この春には、美しい映像と決定的
 瞬間もりだくさんの原生生物学習DVDの新作
 を販売予定です。今号で紹介しました、当館の
 展示映像更新でもお世話になっている、超一級
 の映像制作者の方による超大作です。来月号
 では、DVDの内容についても詳細にご紹介
 できるかもしれません。お楽しみに!(末友)
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 住所:〒740-1431
 山口県岩国市由宇町有家浦
 潮風公園みなとオアシスゆう 交流館内
 Fax:0827-62-0156(24時間受付)
 E-mail:micro@shiokaze-kouen.net
 Website: http://shiokaze-kouen.net/micro

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●次号の配信日は 2月26日です。お楽しみに!

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岩国市ミクロ生物館ニュースは、これからも
内容の充実に努めてまいります。
皆様のご意見、ご感想等、お待ちしております。
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メールマガジン担当: 末友 靖隆(専門職員)

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