岩国市ミクロ生物館

岩国市ミクロ生物館 メールマガジンバックナンバー

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 このメールは、過去にミクロ生物館主催の行事に
 参加された皆様、およびミクロ生物館からの情報
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 後方をご覧ください。
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■━━  岩国市ミクロ生物館ニュース  ━━■
      ---  第 3 3 号  ---

  * * * * ミクロの世界にようこそ! * * * *

“本誌はミクロ生物好きな方のネットワークづくりの
サポートを目的として発刊されました。ここでしか
得られない情報など特典盛りだくさんで毎月26日
(26日が火曜日の場合は27日)に配信致します。
ぜひご活用ください!”


<目次>

☆ミクロ生物スペシャルコラム
 “ミドリゾウリムシの共生藻の種は何か?”
  千葉県立中央博物館 共同研究員
             中原-坪田 美保

1】企画展“クンショウモ・デザイン展
  - 微小藻が誘う美の世界 -”好評開催中!

2】8月27日から9月26日までのミクロ生物館 NEWS

◎ 編集後記


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      ミクロ生物スペシャルコラム
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 *** ミドリゾウリムシの共生藻の種は何か? ***

 中原-坪田 美保 (NAKAHARA-TSUBOTA, Miho)
        千葉県立中央博物館 共同研究員

 これまでコラムに何度か登場しているミドリ
ゾウリムシ、今回はその共生藻の種の話をしようと
思います。現在、生物の種名である学名scientific
nameはすべて二名法(ラテン語で1語の属名と1語の
種小名)で表記されます。例えば原生動物ミドリ
ゾウリムシは和名で、学名で表すとParamecium
bursaria(属名Paramecium種小名bursaria)と
なります。和名は日本で使用される名前で、学名は
世界共通の科学上の名前です。ちなみにゾウリムシ
はParamecium caudatumで、和名の“ゾウリムシ”の
部分が共通なのでゾウリムシとミドリゾウリムシは
仲間だとわかりますが、学名からも属名Paramecium
が共通なので仲間だとわかります。

 さて、単細胞生物であるミドリゾウリムシには
たくさんの単細胞性の緑藻が共生しています。
ミドリゾウリムシの共生藻の報告は19世紀後半から
あり、1882年Brandtにより、ズークロレラ
Zoochlorellaと名前が与えられ記載されました。
しかし1890年Beijerinck が池の水の中で単独で
自由に生育していた同様の形態学的特徴をもつ緑藻を
観察し、新しい属クロレラChlorellaを記載、
Zoochlorellaを同物異名(シノニム)として扱い
ました。その後研究が進み、Zoochlorellaと
Chlorellaは同じ藻類だという認識がなされ、命名
規約上はZoochlorellaに優先権があるのですが、
Chlorellaが広く使われていたため、命名規約で
Zoochlorella は破棄されました(St Louis Code)。

 ミドリゾウリムシやミドリラッパムシStentor
polymorphusなどの共生藻は宿主から分離・培養する
ことが可能です。これまで多くの研究でChlorellaに
似ている藻類であるとか、Chlorellaの仲間であると
報告されてきました。Chlorellaは体制が単純な生物
で、分類が難しい分類群の1つであるため種小名
までたどりつくのが難しいのです。これまで
Chlorellaは形で分類したり、栄養要求性で分類
したりとさまざまな分類体系が提案されています。
共生藻の場合、自由生活している藻類と形が似て
いても栄養要求性が異なったり、光合成産物を
細胞外へ放出するなど生理学的特徴が自由生活して
いるものと異なったり、共生状態と宿主から分離
した状態で形が変わったりするため同定が難しい
のです。

 さらに、DNAの塩基配列を用いた分子系統解析の
結果から、Chlorellaの種の一部は他の属に移され、
Chlorellaが多系統であることが明らかとなり
ました。これまで報告されたChlorella類似の共生藻
は本当は何だったのでしょうか。再調査や新しい
試料をもとに行われた最近の研究によって、
これまで報告されたChlorellaに似ている共生藻の
1つはChlorella属の基準(タイプ)のChlorella
vulgarisである可能性が示唆されています。
また、1個体のミドリゾウリムシに形態学的特徴が
ほぼ同じで栄養要求性の異なる藻類が同時に共生
していることが明らかとなり、生息地の異なる
ミドリゾウリムシの共生藻を世界で調べると
現在のところ2つの系統に分けられるそうです。
さらに、Chlorellaとは異なる形態学的特徴をもつ
別属の藻類コリキスチスChoricystisが1個体の
ミドリゾウリムシにChlorellaと同時に共生して
いる例も発見されています。これらのことは
ミドリゾウリムシの共生藻の獲得は独立して
複数回あったことを示唆しています。今もミドリ
ゾウリムシはより都合のいい共生相手を探して
いるのかもしれません。

 今後、研究が進むとミドリゾウリムシの共生藻
として他の分類群が発見される可能性もあります。
一見、小さな緑の粒にしか見えない共生藻ですが
詳しく調べるといろいろあるのです。ミドリ
ゾウリムシの共生藻をきっかけに他の共生藻や
他の原生動物にも興味を持っていただければ幸い
です。


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1】企画展“クンショウモ・デザイン展
  - 微小藻が誘う美の世界 -”好評開催中!

西日本初開催! クンショウモが持つ芸術的な美の
世界を楽しめる企画展が9月20日(土)から10月5日
(日)まで、ミクロ生物館に隣接した展示スペース
にて好評開催中です(ミクロ生物館常設展示室と
ともに入館無料)。

クンショウモが持つ、美しく芸術的な魅力を
活かしたさまざまな作品や、クンショウモについて
映像とパネルで深く学べる学習展示、更には、
クンショウモの実物観察コーナーと、盛りだくさん
の展示内容です。
ぜひ、この機会に、クンショウモの魅力を存分に
味わってみられてはいかがでしょうか。

本企画展に関する詳細は、以下のURLをご参照
ください。
http://shiokaze-kouen.net/micro/info/page265.html

10月5日までの期間限定開催です。
皆様のご来場を心よりお待ち申し上げます。


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2】8月27日から9月26日までのミクロ生物館 NEWS

※ 詳細は各記事下のURLをご参照ください。

<< 8月30日(土)、31日(日)
8月の体験学習会「海のミクロ生物探検」開催
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page336.html

<< 8月9日(土)〜 31日(日)
岩国市青少年育成市民会議中学生ボランティアが活動
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page337.html

<< 9月4日(木)、5日(金)
「瀬戸内海研究フォーラム in 福岡」で活動発表
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page338.html

<< 9月4日(木)〜 7日(日)
「2008年日本プランクトン学会・日本ベントス学会
合同大会 in 熊本」で活動発表
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page339.html

<< 9月12日(金)
岩国市初任者グループ研修会を実施
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page340.html

<< 9月20日(土)〜
「クンショウモ・デザイン展」スタート!
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page342.html

<< 9月23日(火)
萩高校科学部のみなさんが研究活動
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page343.html

<< 9月25日(木)
岩国高校で理数科2年課題研究発表会が開催
されました
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page345.html


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  編集後記
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 前号のニューズレターで予告しました“瀬戸内海
 の微小生物図鑑”。現在、赤潮プランクトン
 マップをつくる会のメンバー総出で最後の仕上げ
 を進めておりますので、恐らく、来月号では、
 完成のお知らせを出すことができると思います。
 お楽しみに!           (末友)
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 E-mail:micro@shiokaze-kouen.net
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●次号の配信日は 10月26日です。お楽しみに!

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内容の充実に努めてまいります。
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