岩国市ミクロ生物館

岩国市ミクロ生物館 メールマガジンバックナンバー

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 このメールは、過去にミクロ生物館主催の行事に
 参加された皆様、およびミクロ生物館からの情報
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■━━  岩国市ミクロ生物館ニュース  ━━■
      ---  第 3 2 号  ---

  * * * * ミクロの世界にようこそ! * * * *

“本誌はミクロ生物好きな方のネットワークづくりの
サポートを目的として発刊されました。ここでしか
得られない情報など特典盛りだくさんで毎月26日
(26日が火曜日の場合は27日)に配信致します。
ぜひご活用ください!”


<目次>

☆ミクロ生物スペシャルコラム
 “ドイツ研究留学”
  山口大学大学院 理工学研究科 非常勤研究員
                 中村 欽光

1】ミクロ生物館発! 瀬戸内海にすむ微小生物を
  楽しく学べる図鑑がまもなく完成します!

2】7月26日から8月26日までのミクロ生物館 NEWS

◎ 編集後記


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      ミクロ生物スペシャルコラム
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       *** ドイツ研究留学 ***

 中村 欽光 (NAKAMURA, Yoshimitsu)
   山口大学大学院 理工学研究科 非常勤研究員

 2008年7月29日、念願であったドイツ研究留学を
終え、大きな収穫と次なる挑戦への闘志を胸に成田
空港へ降り立った。

 2007年8月、それまでポスドク研究員として働いて
いた、山口大学理工学研究科藤島研究室を一端退職
し、ドイツ、シュトゥットゥガルト大学理工学部動物
学科のハンス-ディーター・ゲルツ教授のもと、一年
間ポスドク研究員兼、教育指導員として、研究に
加えて学生の教育指導にも携われる幸運な機会を得た。
 現在の日本の研究体制、規模、質とどれをとっても
ヨーロッパやアメリカと比較して遜色なく、日本が
世界のトップを走る分野は枚挙に暇がないほどである。
それはミクロ生物館で身近にふれることの出来る
ミクロ生物の分野でも同じ事が言える。つまり海外で
研究を行う必要性が少なくなってきているのである。
 では何がいったいそこまで私をドイツ研究留学へと
駆り立てたのだろうか?
 大きな要因は、海外の同じ分野の研究者と交流を
持ちたい、一緒に働いてみたい、成功を分かち合って
みたいと強く願っていたからであろうと思う。
さてその目論見は???

 バーデン・ビュルテンブルク州の州都シュトゥット
ガルトは、街の中心部が丘陵に囲まれた緑豊かな大変
美しい都市である。煉瓦作りの家々が丘陵地帯の緑の
間に立ち並ぶ姿を見ると、その美しさについ時間を
忘れてしまう。人口は約60万人、メルセデス・ベンツ、
ポルシェなど大企業の本拠地であり、ドイツでは最も
豊かな都市である。
 シュトゥットガルト大学は学生数約1万人で、
理工学系の学部は、郊外の緑豊かなファイヒンゲンの
森の中にキャンパスがあり、10階建ての建物が立ち
並ぶ。すぐ近くには有名なマックス・プランク研究所
もあり共同研究も盛んだ。
 生物系の研究室は、動物学や分子生物学など約10の
部門があり、それぞれ1〜4のグループに分かれて研究
している。広大な敷地内には数十棟の学生寮が林立
し、ヨーロッパだけでなく世界中から学生が集まり、
いろいろな言葉が飛び交う。アジア系では断トツで
中国からの留学生が多く、今シュトゥットガルトで
一番多い名字は‘王’なのだと、ドイツ人の友人から
聞き大変驚いた。
 研究室は学生や研究員の入れ替わりがとても頻繁
で、外国人も多く、3〜6ヶ月単位で滞在し、共同研究
している。朝早く、夜早くが基本なので、夜遅くまで
が基本の日本人にとってはその点が少し窮屈かも
しれない。

 私はドイツ滞在中、二度ほど学会発表をする機会を
得た。ドイツ原生動物学会とイタリアでの細胞内共生
研究会である。
 イタリアの細胞内共生研究会は、我々シュトゥット
ガルト大学のグループとピサ大学のグループ合同での
小さな研究会であった。しかしながらその内容は、
私にとっては、これまで味わったことがないほど濃い
ものであった。なぜなら全20題の発表すべてが、私の
専門分野である原生動物と共生バクテリアの細胞内
共生に関連した発表だったからである。内容も多岐に
わたっており、ゾウリムシの新規細胞内共生細菌の
系統解析、ヒメゾウリムシの細胞質内共生細菌
カエディバクターの研究など大変参考になった。
是非定期的に参加したいと思った。
 ドイツ原生動物学会は、規模は日本原生動物学会と
同程度であった。ゾウリムシを研究対象とした発表
が、意外にもかなり少なく、海洋性の原生動物を対象
とした発表の割合が非常に高いという印象を持った。
そのためかゾウリムシを研究しているグループの、
特に若手同士が休憩時間やパーティーでは自然と
集まってきて議論を交わし、友好を深めた。彼らとの
親交は私にとってかけがえのない財産である。

 私の専門分野は、原生動物と共生バクテリアの
相互作用による共進化、その中でも特に、繊毛虫
ゾウリムシと核内共生バクテリアであるホロスポラの
細胞内共生の研究である。ゲルツ教授は、我が恩師
藤島教授と共にこの分野における草分け的な存在
である。
 私は、敵対する生物同士が(一方は捕食者
\"ゾウリムシ\"、他方は被捕食者だがしかし侵入者
\"ホロスポラ\")、ある時期、非常にうまくその均衡を
保ちながら共存する機構に魅了された。敵同士が
厳しい環境下においては、一時休戦し、互いに生き
抜くために協力し合っている。つまりこれは、現在の
真核細胞がミトコンドリアを獲得するに至った進化の
道筋を再現しているのである。
 詳しくは以下を参照↓
 http://www3.interscience.wiley.com/journal/
 118655461/abstract?CRETRY=1&SRETRY=0
 ゾウリムシとホロスポラの関係は大きく三つに類別
される。
1)食胞を経由した核内への侵入、
2)宿主核内での増殖、
3)宿主細胞外への脱出
である。それぞれの段階において、これらの共生関係
を解明する上で重要な発見が、主にドイツ、日本、
ロシアで相次いでなされていた。しかしながらさらに
深く理解するためには、遺伝子導入、遺伝子破壊技術
など、宿主の外で増殖できないホロスポラでは、
行うことが大変難しい技術を取り入れなければ
ならない。
 ゲルツ教授は以前からその案を温めておられ、
同じ大学のシステム生物学の専門家であるロビン
・ゴッシュ教授と共同研究を行う準備をし、ちょうど
研究を行う研究員を捜しておられた。私は大変幸運
にもそのメンバーに加わることが出来たのである。
三者三様の思惑が一致し、大変よく練られた共同研究
プロジェクトを開始することが出来た。
 研究の進め方は日本で行っていたやり方とほぼ同じ
で、その日行うことを先生方と前日かその日の朝に
確認し、終わったら報告、改善点や変更点を
ディスカッションする。これを英語で行うのが大変
であるが、新鮮でとても楽しいのである。実験が失敗
すると、ゴッシュ教授からはいつも‘君は新しいこと
に挑戦しているのだから失敗するのは当たり前だ。
自信を持て’と言われ、励ましていただいたことが
心に残っている。私のつたない英語に、根気よく
耳を傾けてディスカッションに応じて下さった両先生
方には大変感謝している。

 このドイツと日本の共同研究プロジェクトは、
山口大学に復帰させていただいた現在も進行中で、
大きく発展する可能性を秘めている。成果が上がる
日をわくわくしながら日々研究に勤しんでいる。
 このようなすばらしい研究留学の機会を与えて
下さった、藤島先生には大変感謝の気持ちでいっぱい
である。またゲルツ教授、ゴッシュ教授のご恩に
報いるためにも、大きな成果を得たいと考えている。

 最後に、私の当初の目論見はもちろん大成功で
あったことを加えておく。


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1】ミクロ生物館発! 瀬戸内海にすむ微小生物を
  楽しく学べる図鑑がまもなく完成します!

 現在、ミクロ生物館では、館長と専門職員2名、
(独)水産総合研究センター主任研究員の松山幸彦
先生、それに、ミクロ生物クラブ“赤潮プランク
トンマップの会”会員が中心となって、瀬戸内海に
すむ微小生物を楽しく学びながら調べられる図鑑
作りに日々励んでいます。

 本図鑑は、海産の微小生物について小・中学生
でもわかりやすく学習できる、一般向け図鑑です。
随所に写真やスケッチを配置することで、顕微鏡
で観察している生物が何という生物であるか、
ひと目で探し出すことができます。

 それだけではありません。本図鑑は、“赤潮
プランクトンマップの会”のメンバーが中心に
なっているということで、既にお察しの方も
おられるかもしれませんが、私たちの暮らしにも
大きく関わっている“赤潮”の原因になる微小生物
が詳しく紹介されている点も見逃せません。

 “この生物が見つかると、そこの海域の汚染度は
高い”という、汚染度指数を各生物に設定している
点も、特長の一つです。

 更に! 微小生物たちは、“動き”でも、種類を
ある程度特定できる場合が多いことから、代表的
な生物の映像を収録したDVDまで添付しています。

 実用性は、ミクロ生物クラブの活動で既に証明
済み!

 価格もこの手の図鑑としてはお手頃となるよう
設定するつもりですので、皆様、どうぞご期待
ください。発売日が決定しましたら、またご連絡
差し上げます。


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2】7月26日から8月26日までのミクロ生物館 NEWS

※ 詳細は各記事下のURLをご参照ください。

<< 7月29日(火)
岩国市立由宇小学校「親と子のわくわく体験教室」
にてミクロ生物観察会を実施
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page331.html

<< 8月2日(土)、3日(日)
山口県立萩高等学校科学部が酵母等の観察と実験を
行いました
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page332.html

<< 8月3日(日)
「赤潮プランクトンマップをつくる会」2008年8月の
観察会
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page333.html

<< 8月7日(木)、8日(金)
山口県立岩国高等学校理数科2年生の課題研究を実施

<< 8月9日(土)、10日(日)
青少年のための科学の祭典2008 in 岩国にブース出展
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page334.html


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  編集後記
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 いつのまにか秋らしくなってきました。ほんと
 一年はあっという間ですね。一日一日、無駄の
 無い充実した日を過ごせるよう、これからも
 頑張ります! この9月には、企画展も予定
 していますので、また詳細が確定しましたら、
 号外にて皆様に連絡させていただきます。
 どうぞご期待ください。    (末友)
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 山口県岩国市由宇町有家浦
 潮風公園みなとオアシスゆう 交流館内
 Fax:0827-62-0156(24時間受付)
 E-mail:micro@shiokaze-kouen.net
 Website: http://shiokaze-kouen.net/micro

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●次号の配信日は 9月26日です。お楽しみに!

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岩国市ミクロ生物館ニュースは、これからも
内容の充実に努めてまいります。
皆様のご意見、ご感想等、お待ちしております。
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メールマガジン担当: 末友 靖隆(専門職員)

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