岩国市ミクロ生物館

岩国市ミクロ生物館 メールマガジンバックナンバー

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 このメールは、過去にミクロ生物館主催の行事に
 参加された皆様、およびミクロ生物館からの情報
 配信を希望された皆様にお送りしています。各種
 お問い合わせ、配信停止についてはこのメールの
 後方をご覧ください。
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■━━  岩国市ミクロ生物館ニュース  ━━■
      ---  第 3 0 号  ---

  * * * * ミクロの世界にようこそ! * * * *

“本誌はミクロ生物好きな方のネットワークづくりの
サポートを目的として発刊されました。ここでしか
得られない情報など特典盛りだくさんで毎月26日
(26日が火曜日の場合は27日)に配信致します。
ぜひご活用ください!”


<目次>

☆ミクロ生物スペシャルコラム
 “奇跡の進化:葉緑体”
  筑波大学 生命環境科学研究科 准教授
                 石田 健一郎

1】夏の体験学習会“海のミクロ生物探検”
 参加者募集中!

2】夏休みに向けて、錦川産まれのボルボックスなど
 館内の展示生物の増強を計画中!

3】5月26日から6月25日までのミクロ生物館 NEWS

◎ 編集後記


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      ミクロ生物スペシャルコラム
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     *** 奇跡の進化:葉緑体 ***

 石田 健一郎 (ISHIDA, Kenichiro)
      筑波大学 生命環境科学研究科 准教授

 わたしたちヒトを含む地球上のほとんどの生物は、
食物を食べ、酸素を吸って生きている。「そんなこと
はあたりまえだよ」と、どこからか聞こえてきそう
であるが、それくらいわたしたちは普段この事実に
対して無関心である。しかし、よく考えてみると、
食物も酸素ももとを辿れば全て葉緑体で光合成に
よってつくられたものなのだ。さらに、最近大きな
問題となっている地球温暖化の主要な原因は化石燃料
の燃焼であるが、それによって排出される二酸化炭素
は、太古の昔に葉緑体が固定した二酸化炭素という
ことができる。同時に、温暖化防止のカギとなる
のも、現代の葉緑体の二酸化炭素吸収によって
どれだけ大気中の二酸化炭素濃度を低下させられる
か、であろう。このように、葉緑体は地球環境と生命
の根源に直接関係するたいへん重要なオルガネラ
(細胞小器官)なのである。

 ところでこの葉緑体、まるで奇跡としかいいようの
ない進化の結果生まれたことをご存知だろうか?
葉緑体は、光合成をするシアノバクテリア(ラン藻)
が捕食性のプロティスト(原生生物)の細胞内に取り
込まれる、いわゆる一次共生によって誕生したこと
は、高校の生物学の教科書にも載っており、よく
知られている。さらに、こうして葉緑体を獲得した
プロティストが別系統のプロティストの細胞内に取り
込まれる二次共生も起こっており、これにより葉緑体
はプロティストの様々なグループへと水平伝播して
多様な光合成性プロティストが生まれたことも
知られるようになってきた(ミクロ生物館メール
マガジン号外:ミクロ生物スペシャルコラム増刊号
参照)。でも、一次共生や二次共生のような細胞内
共生によって葉緑体ができる、とは一体どういうこと
だろうか?全く異なる2つの生物だったものが、
1つの生物として生きるようになる、こんなことが
そう簡単に起こるのだろうか?

 そう簡単でないことは、葉緑体とその祖先である
シアノバクテリアを比較してみると容易に想像
できる。まず、シアノバクテリアに比べて葉緑体に
保持されている遺伝子の数は極端に少ない。実は
葉緑体で機能するタンパク質の遺伝子の多くは宿主
(シアノバクテリアを取り込んだ細胞)側の核に
存在するのだ。つまり、共生シアノバクテリアが
葉緑体になる過程で遺伝子が宿主側の核に転移し、
自身の遺伝子がどんどん失われていったのである。
これは次のようなことを意味する。

1)まず、シアノバクテリアの遺伝子が宿主の
ゲノムに組み入れられなければならない。

2)その遺伝子は、宿主のゲノムの中でちゃんと
読み取られるようにならなければならない。次に、

3)読み取られた情報をもとに細胞質でタンパク質
ができなければならない。そして、

4)そのタンパク質は葉緑体を取り囲む膜を通って
葉緑体の中へ運ばれなければならない。

これは偶然を積み重ねてできるにはあまりにも複雑
すぎるように思える。しかし実際にはこの一連の
偶然が核へ転移した全ての遺伝子に起こったの
である。それだけではない。共生藻が葉緑体として
維持されるためには、宿主の細胞分裂に葉緑体の
分裂のタイミングを合わせる必要があるし、宿主が
光を感じることができるようになる必要もある。
これら全てがあり得ないような偶然の積み重ねに
よって達成されてきたのである。そして、同様の
進化が二次共生においても起こったのである。

 こう考えると、葉緑体がまさに奇跡の産物である
ことがよくわかる。そして何よりも、それは全て
プロティスト、つまりミクロ生物の進化の中で
起こったのである。ミクロ生物が奇跡の進化の結果
獲得した葉緑体によって、現在の地球環境は形成
され、多様な生物が進化し、わたしたちも他の生物
たちもみんなその葉緑体に依存して生きているの
である。そして、わたしたちや地球の未来もまた、
植物やミクロ生物がもつ葉緑体にかかっていると
いえるのだ。


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1】夏の体験学習会“海のミクロ生物探検”
 参加者募集中!

梅雨が明ければ夏本番! 海水浴シーズンの到来
です。今年の夏は、海水浴を楽しみつつ、海で
一緒に(?)泳いでいる小さな仲間たちのことも
学んでみませんか?
夏の海は動物プランクトンの宝庫ですので、動き
まわる小さな生き物たちを観察できます。

お申込みは当館ホームページ
http://shiokaze-kouen.net/micro/info/page261.html
の“お申込みフォーム”から行えます。

夏休みの主な開催日は以下の通りです。
7月20、21、26、27日
8月16、17、30、31日
時間は全て、16時開始、17時30分終了です。

これらの日程以外をご希望の方にも、応相談で
対応しておりますので、お申込みフォームより
お気軽にお問い合わせください。

また、本格的な自由研究を希望される方には、
ラボ設備のご利用もお勧めです。
(詳細、予約は以下のアドレスをご覧ください)
http://shiokaze-kouen.net/micro/info/page135.html

予約制ですが、一般の方でも1名様あたり
1日350円で顕微鏡や消耗品をご利用いただけます。

皆様のアイディアを、当館の施設を活用することで
形にしようではありませんか。
皆様のご利用、お待ちしております。


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2】夏休みに向けて、錦川産まれのボルボックスなど
 館内の展示生物の増強を計画中!

当館で一番人気のコーナー“顕微鏡観察コーナー”
が、更にパワーアップします!
展示生物の数を一気に増やし、館内の半分が観察
コーナーになる予定です。
小さいけれど実は凄い、まさに原生生物そのものの
ような施設となるよう、これからも精進してまいり
ます!

更に! 当館の販売コーナーに、国立科学博物館
の特製“勲章藻(くんしょうも)レターセット”が
加わります。
国立科学博物館名誉研究員の渡辺眞之博士がデザイン
し、商品化されたもので、勲章藻のことを熟知して
いる方にも、そうでない方にも、このレターセット
を使って手紙を送れば、喜ばれること間違い無し!
1セット200円のお手頃価格です。
当館オリジナルグッズと合わせていかがですか?


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3】5月26日から6月25日までのミクロ生物館 NEWS

※ 詳細は各記事下のURLをご参照ください。

<< 6月1日(日)
「水と環境と私たちの暮らし2008」に出展
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page327.html

<< 6月13日(金)
山口県の赤潮同定技術研修会に参加
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page328.html


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  編集後記
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 今月号のコラムはいかがでしたか。冷静に考え
 れば考えるほど、細胞が葉緑体を獲得するに至
 るまでの一連のプロセスの複雑さと、それを
 成し遂げてしまった陸上植物や藻類の凄さに
 感動してしまいます。石田先生も文中で述べら
 れていますが、私たちは、苦労の末に葉緑体を
 獲得した生き物たち、つまり、陸上植物や海藻
 それに、小さな小さなミクロ生物たちのおかげ
 で、こうして今日も元気に暮らすことができて
 いるわけなのです。ほんと、植物さまさまです
 ね。               (末友)
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 住所:〒740-1431
 山口県岩国市由宇町有家浦
 潮風公園みなとオアシスゆう 交流館内
 Fax:0827-62-0156(24時間受付)
 E-mail:micro@shiokaze-kouen.net
 Website: http://shiokaze-kouen.net/micro

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●次号の配信日は 7月26日です。お楽しみに!

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岩国市ミクロ生物館ニュースは、これからも
内容の充実に努めてまいります。
皆様のご意見、ご感想等、お待ちしております。
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発信元: 岩国市ミクロ生物館
メールマガジン担当: 末友 靖隆

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ください。
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