岩国市ミクロ生物館

岩国市ミクロ生物館 メールマガジンバックナンバー

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 このメールは、過去にミクロ生物館主催の行事に
 参加された皆様、およびミクロ生物館からの情報
 配信を希望された皆様にお送りしています。各種
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■━━  岩国市ミクロ生物館ニュース  ━━■
      ---  第 2 8 号  ---

  * * * * ミクロの世界にようこそ! * * * *

“本誌はミクロ生物好きな方のネットワークづくりの
サポートを目的として発刊されました。ここでしか
得られない情報など特典盛りだくさんで毎月26日
(26日が火曜日の場合は27日)に配信致します。
ぜひご活用ください!”


<目次>

☆ミクロ生物スペシャルコラム
 “ゾウリムシのおしっことうんちにまつわる話”
  奈良教育大学 理科教育講座 生物学教室
             准教授  石田 正樹

1】ミクロ生物館の培養生物がぞくぞく増加中!

2】3月26日から4月25日までのミクロ生物館 NEWS

◎ 編集後記


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      ミクロ生物スペシャルコラム
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***ゾウリムシのおしっことうんちにまつわる話***

 石田 正樹 (ISHIDA, Masaki)
  奈良教育大学 理科教育講座 生物学教室 准教授

 いきなり妙なタイトルで申し訳ありません。私の
研究は、しかしながら、この二つの事柄に密接に
関係しています。ゾウリムシに、“それら”がある
のか?と疑問に思われる方がいらっしゃることで
しょう。厳密には、多細胞動物のそれを比喩的に
用いていることに他ありませんが、ないことはない
のです。私は、それがどのようにして作られている
のかについて研究していますので、この場をお借り
して少しお話をしてみたいと思います。

 ゾウリムシは、分類学的には単細胞生物をひと
まとめにした原生動物門に属します。どの教科書
でも見かける原生動物(この他、アメーバやミドリ
ムシなどがあります)の一つで、ご存知の方も多い
かと思います。原生動物は、単一の細胞で生きて
おりますので、細胞の持ちうる機能の多くを発現
させています。私たちヒトを含めて多細胞生物
では、“器官”とよばれるものに、ある特定の機能
を分化させています。器官には、消化器、循環器、
呼吸器、泌尿器、生殖器、内分泌器、感覚器、運動
器そして神経系がありますが、つまりは、こうした
器官がそれぞれの役割を分担して体の中で分業を
行っているのです。生のいとなみには、このような
様々な機能が必要ですが、単細胞生物は一つの細胞
でこれら全てをまかなうため、つまりは“スーパー
細胞”と呼んで良いのかと思います。しがたって、
多細胞生物と共通した機能を、ゾウリムシにも
見つけることができます。私の研究課題は、そう
した生物一般に共通する機能を対象としており、
なかでも消化器や泌尿器に関係しているということ
です。

 ここで、少し細胞の話をしましょう。細胞の中
には、“細胞内小器官”とよばれる膜でしきられた
小さな構造物がいくつかあります。核、小胞体、
ゴルジ体、リソソーム、ミトコンドリアや葉緑体
などがそれにあたりますが、器官という名前がつく
くらいですから、それぞれに役割があります。
リソソームを例に挙げると、これは消化に関係する
酵素をもった小胞です。アメーバなどは、他の生物
を細胞膜により包み込み、食胞というものをつくり
ます。この食胞にリソソームが融合して消化酵素を
食胞内部に放出します。こうして食胞内部は酸性化
され、同時に消化酵素によって餌生物は分解されて
しまいます。分解は、細胞が利用できるアミノ酸や
糖になるまで続き、消化できなかったものは、
未消化物、つまりは“うんち”として排泄されること
になります。まるで、私たちの胃や腸で起こって
いるようなことが細胞の中でも起こります。また、
これは蛇足ですが、実は私たちの血液の白血球と
よばれる細胞の仲間には、アメーバのように動いて
は、体内に入り込んだ雑菌を食べているものも
います。

 それでは、もう少しほりさげて話をします。上述
した核の中には、遺伝情報が納められていますが、
この情報とはタンパク質に関するものです。
タンパク質は、酵素として、あるいは、細胞の構造
をきめる資材として働く大切なものですが、核の
情報をもとに主に細胞質で組み立てられます。この
時、特に細胞の外に分泌されるものや細胞内小器官
で利用されるものは、小胞体の膜表面で組み立て
られ、そして、小胞体からゴルジ体へ輸送し、
ゴルジ体で“標(しるし)”をつけて必要な場所に
出荷されます。この標は、とても大切です。消化
酵素を含む爆弾のようなものが、エネルギー工場で
あるミトコンドリアや核に間違って配送されると、
細胞自体が壊れてしまいます。細胞には、こうした
事が起こらないようなしくみが備わっています。
また、逆に、老朽化した細胞内小器官を積極的に
消化するしくみも細胞には備わっており、ここでは
別の標がつけられるようです。それらのしくみは、
まだ完全には判っていませんが、私の研究は
そうしたことに関係しています。

 私の代表的な仕事は、ゾウリムシの“収縮胞”と
いう細胞の浸透圧を調節している細胞内小器官に
かかわる研究です。淡水で生活する原生動物の仲間
は、細胞内の浸透圧が外界の淡水より高い状態に
ありますから、放っておくと外界から入り込む水で
破裂する危機に直面しています。そこで、水を常に
細胞からくみ出しているのです。収縮胞は、少なく
ともカリウムイオンやナトリウムイオンおよび塩素
イオンのような塩分をため込むことにより、細胞質
よりも高い浸透圧状態になっていることが考えられ
ます。この浸透圧差により収縮胞の中に細胞質より
水を呼び込み塩類とともに排泄しています。これは
未確認なのですが、代謝終産物なども収縮胞に含ま
れている可能性があります。もしそうであれば、
この収縮胞から排出される液体は、いわゆる
“おしっこ”のようなものであるといえます。
つまりは、ヒトの腎臓や小腸でおこっているしくみ
に似た反応が、ここでは起こっているのだと類推
されます。

 どうでしょうか、原生動物は単細胞で単純かと
思われがちですが、実はとても複雑な生き物である
ことがお判り頂けましたでしょうか。その奥の深さ
が、私にはなんとも興味深く、たまらないのです。
また、たまらなければ“それら”は大なり小なり
快いということ…お後がよろしいようです。

最後になりましたが、以下は私が管理しているHP
です。御参考にして頂ければ幸いに存じます。

http://mail2.nara-edu.ac.jp/~masaki/

http://biol-zukan.nara-edu.ac.jp/Top.html

http://biol-zukan-2.nara-edu.ac.jp/
NUEinsectZUKANindex.html


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1】ミクロ生物館の培養生物がぞくぞく増加中!

 ミクロ生物館では、動物園や水族館と同じく、
館内でさまざまな生き物を飼育しています。大きな
動物でしたら種類を一種類増やすために、お金も
場所も必要になりますが、大きくても数ミリしか
ない原生生物なら、そのような心配は全くござい
ません。
ということで、少しずつではありますが、培養生物
の種類は、スタッフの手により日々増加しています。
ここ最近は、地元岩国生まれの原生生物たちが増え
つつあります。激しく形を変化させるものから、
単細胞とは思えないくらいに巨大なものまで、
バリエーション豊富です。

原生生物の多くは環境の変化に敏感なため、顕微鏡
展示を行うためには長時間の展示に耐えられるよう
にする工夫が必要だったりと、課題がありますが、
皆様のお目にかかれる日を、原生生物たちもきっと
?待ち望んでいるはずですので、早期に課題を
クリアできるよう、職員一同、努力したいと思い
ます。
学校の授業などでも活用していただけるよう、
培養生物のリストなども今後ホームページで閲覧
できるようにする予定です。

今後いったいどのような生き物が展示されるのか?
皆様どうぞご期待ください。


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2】3月26日から4月25日までのミクロ生物館 NEWS

※ 詳細は各記事下のURLをご参照ください。

<< 3月26日(水)
岡山大学教育学部の研究室がセミナーを行いました
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page319.html

<< 4月4日(金)
愛媛大学理学部の研究室がセミナーを行いました
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page318.html

<< 4月18日(金)
高川学園中学校1年生の皆様が体験学習会に参加され
ました
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page321.html

<< 4月20日(日)
ボーイスカウト岩国暁団カブスカウト隊の皆様が
館内見学に参加されました
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page322.html


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  編集後記
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 少しずつ、着実に、夏休みが近づいてきました。
 夏休みといえば自由研究です。他の宿題と比べて
 手間がかかることから、大半の小・中学生は本や
 インターネットのホームページに掲載されている
 実験をそのまま再現するだけで終わってしまって
 いるようですが、今年は気合を入れて、ミクロな
 生き物をテーマにした本格的な研究を行ってみま
 せんか。やるなら、予約が比較的埋まりにくい
 5月、6月がチャンスです。ネイチャーラボ設備を
 利用すれば、費用もほとんどかかりません。
 興味を持たれた方は、まずは一度、メールにて
 ご相談ください。ミクロ生物館のアドレスは、
 micro@shiokaze-kouen.net です。皆様からの
 ご相談をお待ちしております(職員が2名しか
 おりませんので、回答に時間がかかる場合が
 ございます。予めご了承願います)。(末友)
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 住所:〒740-1431
 山口県岩国市由宇町有家浦
 潮風公園みなとオアシスゆう 交流館内
 Fax:0827-62-0156(24時間受付)
 E-mail:micro@shiokaze-kouen.net
 Website: http://shiokaze-kouen.net/micro

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●次号の配信日は 5月26日です。お楽しみに!

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岩国市ミクロ生物館ニュースは、これからも
内容の充実に努めてまいります。
皆様のご意見、ご感想等、お待ちしております。
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発信元: 岩国市ミクロ生物館
メールマガジン担当: 末友 靖隆

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