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岩国市ミクロ生物館
岩国市ミクロ生物館 メールマガジンバックナンバー
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このメールは、過去にミクロ生物館主催の行事に
参加された皆様、およびミクロ生物館からの情報
配信を希望された皆様にお送りしています。各種
お問い合わせ、配信停止についてはこのメールの
後方をご覧ください。
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■━━ 岩国市ミクロ生物館ニュース ━━■
--- 第 2 6 号 ---
* * * * ミクロの世界にようこそ! * * * *
“本誌はミクロ生物好きな方のネットワークづくりの
サポートを目的として発刊されました。ここでしか
得られない情報など特典盛りだくさんで毎月26日
(26日が火曜日の場合は27日)に配信致します。
ぜひご活用ください!”
<目次>
☆ミクロ生物スペシャルコラム
“私の研究生活”
山口大学大学院理工学系研究科博士後期課程
日本学術振興会特別研究員 DC2
児玉 有紀
1】微小生物映像アート製作グループ“微生部II”の
皆様が映像アート作りに来館されました
2】体験学習会“海のミクロ生物探検”参加ご予約
受付中! ゴールデンウィークに微小生物たちと
ふれあいませんか?
◎ 編集後記
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ミクロ生物スペシャルコラム
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***** 私の研究生活 *****
児玉 有紀 (KODAMA Yuuki)
山口大学大学院理工学系研究科博士後期課程
日本学術振興会特別研究員 DC2
私は、山口大学でミドリゾウリムシと共生クロレラ
を使って細胞内共生が成立する仕組みを明らかにする
研究を行っています。細胞内共生とは、大型の細胞が
宿主となって、その中に他の細胞が侵入し共に増殖を
行う現象です。今日は、山口大学での私の5年間の
研究生活を紹介します。私と同様に、研究者になる
ことを夢見る若者に読んでいただければ幸いです。
ミトコンドリアと葉緑体は、それぞれ、約21億年前
に大型の細菌の中に侵入して共生した好気性(酸素を
用いて呼吸を行う)細菌とラン藻(光合成を行う
細菌)に由来する構造と考えられています。細胞内
共生は、現在でも繰り返して行われ、細胞に新たな
構造と機能を与え、細胞の進化の原動力となって
います。しかし、その成立条件はまだ明らかにされて
いません。細胞内共生の成立条件が明らかになれば、
任意の細胞の組み合わせで人類に有用な機能を持った
細胞を作り出すことができるかもしれません。その
ためには、実験室で簡単に細胞内共生を誘導できる
研究材料が必要です。多くの共生生物は宿主外では
増殖することができないように退化しています。
しかし、ミドリゾウリムシとその共生クロレラは
それぞれ単独でも増殖でき、さらに混合すると細胞内
共生を成立させます。どこの淡水にもいるミドリ
ゾウリムシですが、実は、細胞内共生成立の研究材料
に必要な最高の能力を維持していたのです。クロレラ
が細胞内共生すると、宿主はクロレラから光合成産物
をもらえるので、酸素や餌不足の状態でも長生き
できるようになります。動物細胞が光合成能力を手に
入れ、日光浴するだけで栄養を補給できるように
なったわけです。すごい進化です。一方、クロレラは
光合成に必要なアンモニアや二酸化炭素を宿主から
もらい、天敵のクロレラウイルスからも守られます。
クロレラは、暗闇での培養や除草剤で簡単に宿主から
除去できます。一方、共生クロレラも宿主外で増殖
できます。クロレラを除去した白いミドリゾウリムシ
と共生クロレラを混合すると、クロレラはゾウリムシ
の口から食胞に取り込まれ、消化を免れたクロレラが
食胞から脱出して数時間後には再び細胞内共生を開始
します。つまりミドリゾウリムシは顕微鏡下で細胞内
共生を開始する瞬間を観察できる細胞なのです。この
瞬間は何度見ても感動します。私は、このミドリ
ゾウリムシを使って細胞内共生の成立機構を分子
レベルで明らかにすることを目的として実験を行って
います。この研究が進めば、動物を緑色にすることが
できるかもしれません。
ミドリゾウリムシというミクロ生物に魅せられて
からこれまでの5年間は研究のみに専念してきました。
ミドリゾウリムシに出会うまでは1つのことに夢中に
なったことが無かったので、自分でも驚いています。
研究を始めてから国際会議での発表のために初めて
外国に行きました。初めての国際会議で賞を取ること
ができました。たくさんの有名な研究者に会うことも
できました。人前で話すことが苦手で、学会発表
なんて自分には絶対にできないと思っていましたが、
今では1年に4回 (国際会議1回、国内学会3回) は大勢
の前で自分の研究成果を口頭発表しています。すごい
進化です。
体長0.12 mmほどの小さなミドリゾウリムシが私の
人生を大きく変えてくれました。学部の4年生に
なって現在の研究室に所属するまでは、暇な時間を
持て余し、このままではいけないといつも思って
いました。しかし、研究室に入ってからは、実験や
論文執筆やデータの整理等で毎日が忙しく、暇な時間
はほとんどありませんが今の生活にとても生き甲斐を
感じています。私の夢は大学の教員になって一生
ミドリゾウリムシの研究を続けることです。今年の
3月に博士(理学)の学位を取得し、4月からは日本
学術振興会の特別研究員として筑波大学で、現在の
研究テーマを継続することになりました。大学院を
修了後も現在と同じテーマで研究を続けられることは
とても幸せなことです。
私のコラムを読んでミクロ生物の研究をする仲間が
増えてくれればとても嬉しく思います。博士後期課程
まで進学するのはたくさんの費用と時間がかかります
ので、心配をされている方がたくさんいらっしゃると
思いますが、研究を頑張れば授業料の免除や、日本
学術振興会による若手研究者育成の制度や、私の
ような女性研究者を援助してくださる団体もあります。
ミドリゾウリムシを見たことがないという方は、
ぜひ、由宇町の「岩国市ミクロ生物館」でご覧に
なってみてください。宝石のようにきれいなミドリ
ゾウリムシに皆さんもきっと魅了されるはずです。
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1】微小生物映像アート製作グループ“微生部II”の
皆様が映像アート作りに来館されました
知る人ぞ知る微小生物映像アート製作グループ
“微生部II”の皆様が、今月上旬、ミクロ生物館に
来館されました。 これまでに微小生物を題材に
した映像作品や展示物を手がけてこられ、数々の
賞を受賞されてきた、実力ある芸術家集団です。
当館との交流は、あのカードゲーム“マイクロ王”
がきっかけで始まりました。
さすがはグループ名が“微生物”にちなむだけあり、
生物学科の学生さんかと思ってしまうほどの微小
生物に対する強い関心と熱い情熱で、当館が誇る
最新の微分干渉顕微鏡などを駆使し、さまざまな
微小生物をオリジナリティあふれる手法を用いて
撮影されました。 今回記録した映像データは、
さっそく次の映像作品に活用されるそうです。
微生部IIの皆様の映像作品は、3月中旬より、当館
の映像展示コーナーにて放映予定です。 工夫と
オリジナリティに溢れる、一度見たら忘れられない
魅力あふれる作品です。 感動ものですよ。
微生部IIの皆様の活動や、これまでの作品に関して
は、以下のホームページをご覧下さい(当館ホーム
ページからもリンクしております)。
http://www.geocities.jp/mijinko_satoshi/text/bi.html
なお、本記事はホームページでも写真付きで紹介して
おります。 あわせてご覧下さい。
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page315.html
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2】体験学習会“海のミクロ生物探検”参加ご予約
受付中! ゴールデンウィークに微小生物たちと
ふれあいませんか?
当館の体験学習プログラム“海のミクロ生物探検”
は、夏の多忙期を除き、お好きな日のお好きな時間
帯に実施することが可能です。 今が一年で最も
水温が低い時期ですが、これから春が近づくにつれ、
さまざまな動物プランクトンが姿を見せてくれる
ようになります。 肉眼では見えない小さな生物
たちとふれあえる本学習プログラム。
今年のゴールデンウィークは微小生物達とふれあう
癒しのひとときを過ごしませんか?
体験学習会に関する詳細・ご予約は
http://shiokaze-kouen.net/micro/info/page261.html
をご覧下さい。
ご家族でも、グループでも、事前予約さえして
いただければどなたでもご参加いただけます。
皆様のご利用、お待ちしております。
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編集後記
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春が近づいてきました。 目の前の海の海水温
は10度前後とまだまだ冷たいですが、アメリカ
人のご家族が、目の前のビーチで早くも水遊び
をされていました(さすがに泳いではおられま
せんでしたが)。 海水中でもアクティブに動
きまわる微小生物が増えてきました。 大人に
なると岩に張り付いて移動できなくなってしま
うフジツボの幼生などは、今がまさに最盛期。
ユーモラスな姿でひょこひょこと泳ぎ回る姿は
癒し効果抜群です。 (末友)
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●岩国市ミクロ生物館 お問い合わせ先
住所:〒740-1431
山口県岩国市由宇町有家浦
潮風公園みなとオアシスゆう 交流館内
Fax:0827-62-0156(24時間受付)
E-mail:micro@shiokaze-kouen.net
Website: http://shiokaze-kouen.net/micro
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●次号の配信日は 3月26日です。お楽しみに!
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岩国市ミクロ生物館ニュースは、これからも
内容の充実に努めてまいります。
皆様のご意見、ご感想等、お待ちしております。
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発信元: 岩国市ミクロ生物館
メールマガジン担当: 末友 靖隆
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