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岩国市ミクロ生物館
岩国市ミクロ生物館 メールマガジンバックナンバー
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このメールは、過去にミクロ生物館主催の行事に
参加された皆様、およびミクロ生物館からの情報
配信を希望された皆様にお送りしています。各種
お問い合わせ、配信停止についてはこのメールの
後方をご覧ください。
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■━━ 岩国市ミクロ生物館ニュース ━━■
--- 第 2 4 号 ---
* * * * ミクロの世界にようこそ! * * * *
“本誌はミクロ生物好きな方のネットワークづくりの
サポートを目的として発刊されました。ここでしか
得られない情報など特典盛りだくさんで毎月26日
(26日が火曜日の場合は27日)に配信致します。
ぜひご活用ください!”
<目次>
☆ミクロ生物スペシャルコラム
“「 9 」の謎”
東京大学大学院理学系研究科 准教授 廣野 雅文
1】“げんせいせいぶつストラップ 第一弾 ぞうり
むし”の通信販売を開始しました!
2】“原生生物DVDシリーズ 淡水編 Vol.2 繊毛虫の
なかまたち”は来年1月末より販売開始!
3】11月27日から12月26日までのミクロ生物館 NEWS
◎ 編集後記
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ミクロ生物スペシャルコラム
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***** 「 9 」の謎 *****
廣野 雅文 (HIRONO Masafumi)
東京大学 大学院理学系研究科 准教授
生き物は幾何学的な形を作ることがよくあります。
例えば 6角形のハチの巣穴、5枚の花びらが放射型に
並ぶサクラの花、5角形のヒトデなどです。今ここに
例としてあげた形はすべて回転対称性の図形と言い
ます(ある角度で回しても元の形と重なる図形のこと
です)。ミクロ生物館の主役である原生生物も、実は
多くがこのような図形を持っています。
それはゾウリムシなどが生やしている繊毛(せん
もう)の中にあります。繊毛の輪切りを電子顕微鏡で
観察すると、時計の文字盤のように見えます。ただし
並んでいる文字はすべて 8の字のようなダルマ型。
これが円の縁に沿って 9個並んだその真ん中に「0」
が 2個あって、これを繊毛の「9+2構造」と言い
ます。どこを切っても同じ、つまり金太郎飴型
なので、繊毛は 9本と 2本の長い繊維からできている
ことがわかります。輪切りの中に見える、9個の文字
が並んだ回転対称図形は大きさもきれいにそろって
いるとても印象的なものです。
繊毛は原生生物だけではなくいろいろな生物が
持っています。動物はすべて繊毛を持っていると
言ってよいでしょう。人間の繊毛は、例えば気管や
輸卵管(ゆらんかん)の内壁面に生えています。腎臓
(じんぞう)や脳室というところにもあって重要な
働きをしています。繊毛ができなかったり動きが
悪かったりすると、腎臓や脳の重い病気になること
からもその重要さがわかります。また、繊毛の異常に
よって心臓が右にできたりする「体の左右性」の異常
が起こることもわかってきました。動物以外では、
コンブなどの藻類やイチョウなどの裸子(らし)植物
にもあります(ただしこれらが持っているのは鞭毛と
いう名前ですが、繊毛と同じものです)。
驚くべきことは、これらの様々な生物の繊毛・鞭毛
も、内部をみるとすべてが「9+2構造」になって
いることです(たまに「9+0構造」もありますが)。
これだけ多様な生物が共通して持っている回転対称
図形というのはちょっと他に思いつきません。例えば
ヒトデの 5角形という形は、棘皮動物という仲間に
だけ共通するものです。花は花びら 5枚型が多いの
ですが、例えばユリなどは 6枚型です。「9+2」が
多くの生物に共通する理由の1つは、繊毛という細胞
器官が進化的にとても古いものだからです。細菌を
除く、動物、植物、藻類、菌類などの生物(真核生物
と言います)の共通の祖先が現れたときにはもう
持っていたと言われています。繊毛の構造はそれ以来
10億年以上も変わっていないのです。
このように、とてつもなく古い先祖から受け継が
れた深遠な図形ですが、なぜ頂点の数が「 9 」で
なければならないのか、ということはまったく
わかっていません。繊毛が運動するときに繊維が 9本
じゃないと都合が悪いのかもしれませんが、だれも
「どうして都合が悪いのか」を説明できません。
また、どのようにして「 9 」の回転対称図形ができる
のかについてもわかっていませんでした。繊毛の根元
には基部体(きぶたい)という構造があって、9本の
繊維が並ぶ「9+0」の形をしています。新しい繊毛は
これを土台として作られるので「9+2」になるのです
が、その基部体がどのようにしてできるのかがわから
なかったのです。
ところが、最近になって私たちはこの仕組みの一端
を明らかにすることに成功しました。研究に使った
のはクラミドモナスという、2本の鞭毛を使って泳ぐ
原生生物です。明らかになった仕組みを簡単に言うと
基部体ができるときには、ちょうど傘の骨のような
放射型の構造が最初に現れて、それぞれの骨の先端に
基部体の繊維ができる、ということです。骨の数が
9本なら基部体は正常な「9+0」。骨をつくるタンパク
質を遺伝子操作して傘構造を変えてやると「8+0」の
基部体ができます。また、突然変異で傘構造がなく
なると「7+0」から「11+0」までいろいろなパターン
の基部体ができます。このときできる鞭毛は「8+0」
や「10+4」といった、これまでみたこともないような
構造を持つようになります。
じゃあどうやって骨の数が 9本に決まるのか、と
いうのが次の疑問です。私たちは数を決めているのは
傘の軸の部分だとにらんで、そこがどのような
タンパク質でできているのかを明らかにしようと研究
を進めています。それがわかればなぜ「 9 」なのか
という謎に対するヒントが得られるかもしれません。
そう簡単にはいかないと思いますが、めでたく私たち
の手でそれを解明して、またここでお知らせできる
ことを願っています。
ここで述べた話についてもう少しだけ詳しい説明を
したサイトがありますので、多少なりとも興味を
もってくださった方、こちらをご覧ください。
http://www.s.u-tokyo.ac.jp/info/press/press-2007-25.html
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1】“げんせいせいぶつストラップ 第一弾 ぞうり
むし”の通信販売を開始しました!
新聞各紙で紹介された“げんせいせいぶつストラップ
シリーズ”。現役の大学の研究者が、実際の原生生物
の姿を忠実に再現しつつ設計・開発した、リアルさと
可愛さを兼ね備えた“ぬいぐるみ”手造りストラップ
です。
その第一弾である、全身に生えた繊毛がお茶目な
“ゾウリムシ”の量産体制がこのたび整いましたので、
通信販売をミクロ生物館ホームページ
http://shiokaze-kouen.net/micro/content/omiyage.html
にて開始致しました!
知っている人にしかわからない、魅力あふれる
デザインが大人気!
カバンや携帯電話のアクセントにいかがですか?
ふわふわですよ。
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2】“原生生物DVDシリーズ 淡水編 Vol.2 繊毛虫の
なかまたち”は来年1月末より販売開始!
ゾウリムシやツリガネムシ、それにラッパムシなど、
名前は知っているけれど、写真くらいしか見たこと
がない・・・といわれる生き物たち。
これら知名度はあるものの、なかば都市伝説と化し
てしまっている生き物たちの生の姿を鮮明な映像で
紹介するDVDが間もなく販売開始です!
学校の授業に、趣味に、ぜひご活用ください。
正式な販売日時は未定ですが、来年1月末頃より
当館のホームページより通信販売を開始する予定
です。ご期待ください。
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3】11月27日から12月26日までのミクロ生物館 NEWS
※ 詳細は各記事下のURLをご参照ください。
<< 12月1日(土)
下関市立しものせき水族館「海響館」解説ボラン
ティアの皆様がミクロ生物館の見学と体験学習に参加
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page313.html
<< 12月5日(水)
2007年10月20日(土)の“赤潮プランクトンマップ
の会”の活動にて採集された、南方系のコクロディ
ニウム・コンボルタム(Cochlodinium convolutum)
に関するNHKの取材がありました。当日の取材の
模様は山口県ローカルのNHKテレビ、ラジオにて放送
されました。
<< 12月12日(水)
12月上旬より山口県東部地域で発生したヤコウチュウ
による大規模な赤潮が“海のオーロラ”として、
フジテレビの全国版ニュース番組で紹介されました。
当館からは中島篤巳館長が出演されました。
<< 12月15日(土)
赤潮プランクトンマップをつくる会 観察会
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page314.html
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編集後記
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今年はこの時期になってもヤコウチュウによる
大規模な赤潮が発生したり、晩秋ではあまり
出現しない、南方系の微小藻類が出現したり
するなど、話題に事欠かない一年でした。
来年もミクロ生物館ニュースをよろしくお願い
申し上げます。来年も皆様にとって素晴らしい
一年でありますよう、心よりお祈り申し上げ
ます。 (末友)
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住所:〒740-1431
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潮風公園みなとオアシスゆう 交流館内
Fax:0827-62-0156(24時間受付)
E-mail:micro@shiokaze-kouen.net
Website: http://shiokaze-kouen.net/micro
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●次号の配信日は 1月26日です。お楽しみに!
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岩国市ミクロ生物館ニュースは、これからも
内容の充実に努めてまいります。
皆様のご意見、ご感想等、お待ちしております。
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メールマガジン担当: 末友 靖隆
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