岩国市ミクロ生物館

岩国市ミクロ生物館 メールマガジンバックナンバー

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 このメールは、過去にミクロ生物館主催の行事に
 参加された皆様、およびミクロ生物館からの情報
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■━━  岩国市ミクロ生物館ニュース  ━━■
      ---  第 2 2 号  ---

  * * * * ミクロの世界にようこそ! * * * *

“本誌はミクロ生物好きな方のネットワークづくりの
サポートを目的として発刊されました。ここでしか
得られない情報など特典盛りだくさんで毎月26日
(26日が火曜日の場合は27日)に配信致します。
ぜひご活用ください!”


<目次>

☆ミクロ生物スペシャルコラム
 “どぶ川の中の小さなドラマ”
  滋賀県立琵琶湖博物館 主任学芸員  楠岡 泰

1】山口県高等学校教育研究会生物教育研究大会
  研修会がミクロ生物館で開催されました

2】明日、明後日の2日間、潮風公園みなとオアシス
  ゆうにて“ゆうゆうフェスタ”が開催されます

◎ 編集後記


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      ミクロ生物スペシャルコラム
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   ***** どぶ川の中の小さなドラマ *****

 楠岡 泰 (KUSUOKA Yasushi)
       滋賀県立琵琶湖博物館 主任学芸員

 どぶ川に対して、多くの人は良いイメージを持って
おられないと思います。臭いし、汚いし、生き物も
あまりすんでいないし、決して良い環境だとは
思われません。でも、都会のどぶ川を覗いてみると、
そのような環境だからこそ生きられる生物もすんで
います。

 私は学生のころ、どぶ川のミクロ生物、とくに
ツリガネムシの仲間(付着性の繊毛虫)について調べて
いました。そのきっかけは、博士課程に入って
まもなくの頃のちょっとした出会いでした。東京西部
を流れる善福寺川というどぶ川で水草を採ってきて
顕微鏡で覗いてみたら、水草の葉の上にツリガネムシ
が山のように付いているのです。“ツリガネムシが
山のように”というのはおかしな表現ですが、水草の
上を何種類ものツリガネムシが盛り上がった状態で
覆い尽くしていたのです。こんなにツリガネムシが
たくさんいたら、きっとどぶ川で重要な役割を
はたしているに違いないと思い、1週間後に再度、
善福寺川から水草を採ってきました。そうしたら、
今度はほとんどツリガネムシが付いていません。
なぜだろう??と疑問に思って、どぶ川でツリガネ
ムシの個体数変動を追跡することにしました。

 ツリガネムシは、多いときには1平方cmあたり
4,000個体にも達しますが、少ないときにはほとんど
いないことがわかりました。しかもその変化は
数日単位で起こるのです。いろいろ調べた結果、
ツリガネムシは大雨の後に増加することがわかり
ました。当時(1980年代)東京都内ではすでに下水道
はほとんど整備されていました。しかし、地域に
よっては合流式といって、下水と雨水が同じ下水管を
流れているため、ちょっとまとまった雨が降ると
すぐに下水管がオーバーフローして近くの川に下水が
流れ込んでいました。都会では土の地面が少なく、
アスファルトの道路やコンクリートのビルに覆われて
いるため、夕立などがくると雨水は一気に下水管を
あふれさせ、大量の汚水と共に川に流れ込み、川は
急激に増水します。当時から善福寺川は湧水も多く、
都内の川の中ではキレイな川で、魚もすんで
いました。しかし、ちょっとした雨が降ると、流水中
の細菌数は100倍以上増加しました。下水管の
オーバーフローによる増水は、ツリガネムシに対して
おいしいごちそうを供給していたのです。

 その後フィールドを谷沢川という別の川に移して、
ツリガネムシの現場での移入、増殖、死亡、移出率の
推定を試みました。

 夏の水温が高い時期にはツリガネムシの増殖速度は
高く、1日に3回程度分裂していました。3回分裂する
ということは、2の3乗すなわち1日に1匹が8匹に
増えることを意味します。個体数が毎日8倍ずつ増加
すると仮定すると、数日で川はツリガネムシで
いっぱいになってしまいます。しかし、実際には
3日目までは個体数は急激に増加しますが、その後、
増殖速度は低下し、死亡率が増加するため、ツリガネ
ムシの数は急激に減少しました。そして、1週間も
すると元の低い密度に戻りました。雨が降らない
安定した時期に死亡率を推定したら、ツリガネムシ
が24時間後に生きている確率は10%以下でした。
死亡の原因を調べてみると、他の微小動物による
捕食が主な原因でした。

 ツリガネムシにはたくさんの天敵がいます。
ツリガネムシを専門に食べるTrachelius や
Amphileptusなど繊毛虫やEosphoraなどのワムシ、
動く物なら何でも口にする水生ミミズの
Chaetogasterなどさまざまです。増水が起こると、
これらの捕食者は濁流に押し流され、減少します。
下水由来の細菌が多いため、ツリガネムシは豊富な
餌と少ない天敵の環境で急激に数を増やすことが
できます。しかし、数日すると餌の量が減り、
捕食者が次第に増加し、ツリガネムシの数は低い
状態に保たれました。ツリガネムシにとって安定
した環境は決して良い環境ではありません。安定
した環境では餌が少なく、天敵が多いからです。
時々下水がオーバーフローして増水が起こる
どぶ川はツリガネムシにとっては理想的な環境と
いえます。

 皆様も今度どぶ川を覗いてみてください。意外と
おもしろい発見があるかもしれません。


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1】山口県高等学校教育研究会生物教育研究大会
  研修会がミクロ生物館で開催されました

2007年10月12日(金)、山口県高等学校教育研究会
生物教育研究大会の研修会がミクロ生物館で開催
され、山口県高等学校教育研究会生物部会の皆様
(44名)にご参加いただきました。

ミクロ生物館の活動内容や微小生物の教材としての
活用例、館内の設備案内や培養・展示生物の観察
などを行い、最後に、今後の連携について意見交換
を行いました。

皆様、ご多忙の中ご来館いただきありがとう
ございました。

こちらの記事で当日の様子をご覧いただくことが
できます
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page303.html


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2】明日、明後日の2日間、潮風公園みなとオアシス
  ゆうにて“ゆうゆうフェスタ”が開催されます

10月27日(土)から28日(日)にかけて、ミクロ
生物館のある潮風公園みなとオアシスゆうにて
“ゆうゆうフェスタ”が開催されます。
27日は夜に花火大会が、28日はさまざまな催し物や
出店がありますので、近隣の皆様はぜひご来訪
ください。
28日はミクロ生物館の顕微鏡観察コーナーも増強
される予定です。

当日は大変混みあいますので、電車等のご利用を
お勧めします。


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  編集後記
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 昨日のことです。海水のサンプリングをしようと
 プランクトンネット片手に海に行くと、海水面に
 無数の波紋があり、水面全体がまるで生き物の
 ように波打っているではありませんか。海面が
 波紋だらけになるのは、クラゲの小さいものが
 大量発生したときに何度か見ていますが、今回の
 ものは、より細かく、波紋の数も比較にならない
 ほどたくさんあります。果てさて・・・と思い
 つつ、サンプリングしたのですが、すぐに原因が
 わかりました。大型(といっても3〜5 mm程度
 ですが)のカイアシ(小型の甲殻類です)が
 大量発生していたのです。周囲に群がる稚魚たち
 はとても幸せそうでした。    (末友)
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 住所:〒740-1431
 山口県岩国市由宇町有家浦 潮風公園みなと
 オアシスゆう 交流館内
 Fax:0827-62-0156(24時間受付)
 E-mail:micro@shiokaze-kouen.net
 Website: http://shiokaze-kouen.net/micro

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●次号の配信日は11月26日です。お楽しみに!

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皆様のご意見、ご感想等、お待ちしております。
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