岩国市ミクロ生物館

岩国市ミクロ生物館 メールマガジンバックナンバー

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 このメールは、過去にミクロ生物館主催のイベントに参加され
 た皆様、およびミクロ生物館からの情報配信を希望された皆様
 にお送りしています。各種お問い合わせ、配信停止については
 このメールの後方をご覧ください。
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■━━━━━  岩国市ミクロ生物館ニュース  ━━━━━■
         ---  第19号  ---

* * * * * * ミクロの世界にようこそ! * * * * * * *

“本誌はミクロ生物好きな方のネットワークづくりのサポートを
目的として発刊されました。ここでしか得られない情報など特典
盛りだくさんで毎月26日(26日が火曜日の場合は27日)に配信
致します。
ぜひご活用ください!”


<目次>

 ☆ ミクロ生物スペシャルコラム
    “湿原は原生生物の宝庫!”
         法政大学 自然科学センター
                    教授 月井 雄二

 1】ネイチャーラボでSDS-PAGEなど、タンパク質レベルの
   実験が行えるようになりました

 2】8月のミクロ生物館体験学習会開催日のお知らせ

 ◎ 編集後記


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       ミクロ生物スペシャルコラム
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       ***** 湿原は原生生物の宝庫! *****

  月井 雄二 (TSUKII Yuuji)
            法政大学 自然科学センター 教授

 夏になると登山をする人がたくさんいますが、登山の楽しみ
の一つに、山上の湿原に咲く可憐な高山植物,貴重・希少な
野鳥や昆虫を観察することがあります。しかし、湿原はその
ような植物や動物の住処だけでなく、原生生物の宝庫でもある
ことをみなさんは御存知でしょうか?

 私は10年以上前から野外採集した原生生物を写真撮影し、
それらをインターネット上で公開する活動を続けています
http://protist.i.hosei.ac.jp/index-J.html)。当初は、
近所の池や沼・水田等で採集をしていましたが、4年程前から
フとしたきっかけで山の上にある湿原で採集をするようになり
ました。それまでは、6、7月になっても残雪のある冷涼な
場所(標高1000m〜2000m)には、原生生物はあまりいないの
ではと思っていたのですが、採集してみると意外や意外、平地
とは比較にならないほど膨大な数(種類)の原生生物がいま
した。

 湿原には、必ずという訳ではありませんが、池塘(ちとう)
と呼ばれる場所があります。冷涼な高山帯では、池や沼に育っ
たミズゴケなどが枯れた後、分解されずに泥炭化し堆積する
ことで湿原が生まれます。その過程で部分的に残った水たまり
が池塘です。原生生物が多くいるのはこの池塘です。池塘は
数百年ないし数千年もの間、水が滞留した有機質の多い場所と
して存在し、長い年月、安定した水環境が保たれたことで、
たくさんの原生生物が住み着くことができたと思われます。
 また、単に種類が多いだけでなく、湿原には平地では見られ
ない湿原固有の種がたくさんいます。アミカムリ(Nebela)
という殻を持つアメーバの仲間は大型で種類も多いのですが、
私はこれらを平地で観察したことは一度もありません。また、
緑藻類のミカヅキモ(Closterium)にはたくさんの種がいます
が(私がこれまでに観察したのは47種)、平地で見つかるのは
そのうちの数種のみで、ほとんどは湿原にいます。さらに、
最近なにかと話題の細胞内共生についても、平地ではクロレラ
を共生させているミドリゾウリムシが有名ですが、湿原では
数多くの繊毛虫類や肉質虫類(アメーバ、太陽虫の仲間)が
クロレラを細胞内に共生させています。

 一方、湿原に比べて気温が高い平地の水田や池沼では、アオ
ミドロやアミミドロなど特定の種が大量増殖していることが
多くみられますが、種類でみるとじつに貧弱な場合がほとんど
です(つまり限られた種だけがたくさん増えているということ)
。しかし、これは平地はもともと原生生物が少ないというの
ではなく、人間の活動の影響を長年受けてきた結果なのかも
知れません。というのは、平地でもごく希にたくさんの原生
生物が見つかる場所があるのですが、それらはいずれも人為の
及ばない、ないし制限された地域に限られているからです。

 私がいる法政大学の脇にはかつての江戸城の外濠があります。
南側をJRの線路、北側は外堀通りという交通量の多い道路に
挟まれ、お世辞にも良好な自然環境とはいえない場所です。
ここは夏になるとアオコ(原核生物)が大発生して悪臭を放ち
ますが、外濠にはアオコだけでなくたくさんの原生生物が生息
しています。一般の公園の池等でも同じようにアオコが発生
しますが、通常、公園の池には原生生物はあまりいません。
この違いは外濠は公園の池のように時折水底を掃除するために
水が抜かれるなど人手が加えらることなく、安定した水辺の
環境が長年月保たれてきたことによると思われます。

 また、既述したように、水田に生息する原生生物の種類も
通常は限られていますが、かつて千葉県にある成東・東金食虫
植物群落という自然保護地区を訪れた際、その周辺の水田から
採集したサンプルにはたくさんの原生生物がいました。これは
自然保護地区の周辺では農薬の使用が控えられてきたためと
思われます。

 平地では人間の影響を受けていない場所を探す方が難しく、
そのためもともとどれくらいの原生生物がいたかわからなく
なっています。もしかすると、すでに数多くの種が絶滅して
しまっているのかも知れません。その意味で、湿原の保護は
動植物だけでなく原生生物にとっても重要であるといえます。

 ところで、私は車を運転しませんので、湿原を訪れる際は
鉄道や路線バス等の公共交通機関を利用しています(希に
タクシー)。しかし、近年、人々の多くは自家用車やマイクロ
バスを使って湿原を訪れるようになっています。湿原に向かう
鉄道や路線バスは、もともと過疎化が進んでいる山あいの地域
を走っていますので、湿原を訪れる人々がそれらの公共交通
機関を利用しなくなったことで、ますます利用者が減り、近年
これら(とくに路線バス)が廃止される傾向にあります。路線
バスの廃止は高齢化が進む地域の住人にとって深刻な問題です。
廃止を防ぐため、また、地球温暖化防止の観点からも、湿原を
訪れる際は是非とも公共交通機関を利用していただくよう願っ
ています。

 なお、私は昨年から採集する際の周囲の様子をデジカメで
撮影し、それらを「採集の記録」
http://protist.i.hosei.ac.jp/PDB/Sampling/index.html
として公開しています。これらを元に近々「湿原は原生生物の
宝庫」と題して湿原に生息する原生生物の観察結果をまとめ
たいと考えています。完成した暁には、上記の「採集の記録」
からリンクするようにしますので、ご覧いただければ幸いです。


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1】ネイチャーラボでSDS-PAGEなど、タンパク質レベルの実験
  が行えるようになりました

 このたび、ミクロ生物館のネイチャーラボ設備において、
SDS-PAGE (SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動)など、タン
パク質レベルの実験が行えるようになりました。DNAの単離操作
などは、高校などでも近年盛んに行われるようになりましたが、
それだけでは物足りないという好奇心旺盛な高校生の皆様や、
学校での課題研究に取り組まれている皆様、また、個人的に
タンパク質レベルでの研究を行ってみたいという個人や学校の
先生方に、ぜひご活用いただきたいと思います。

 当館が誇る高性能な光学顕微鏡とうまく組み合わせれば、
ひとつの生命現象を解明することも夢ではありません。あなた
も大学レベルの研究に携わってみられませんか。

 ご興味を持たれた方は、より詳細な情報をご希望の方は、
ミクロ生物館のメールアドレス
( micro@shiokaze-kouen.net )まで、お気軽にお問い合わせ
ください。皆様のご利用、お待ちしております。

※ 実験操作には劇物に指定された試薬等を使用します。この
  ため、高校生のご利用は保護者または引率の先生同伴にて
  ご利用いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。
  また、中学生以下のご利用は原則としてお断りさせていた
  だきます。予めご了承願います。

※ 設備の管理上、遺伝子組み換え生物等、隔離されたスペース
  での管理が必要な生物を用いた実験はお断りさせていただき
  ます。制約が多くて申し訳ございませんが、ご了承の程、
  よろしくお願い申し上げます。


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2】8月のミクロ生物館体験学習会開催日のお知らせ

8月のミクロ生物体験学習会は以下の内容で実施します。

8月11日(土)、12日(日)、25日(土)、26日(日)

時間: 16時〜17時30分
定員: 各4組様 (1組あたり4名様まで)
参加費: 1組につき800円(4名1組参加の場合、1名あたり200円)

詳細情報・ご予約は電話( 0827-62-0160 )、またはホーム
ページ
http://shiokaze-kouen.net/micro/info/page126.html
をご覧ください。

さすがは夏休み! 早くも予約が埋まりつつあります。
参加ご希望の方は、お早めにお申込みください。 夏休みの自由
研究に、思い出にどうぞ!
皆様のご参加、心よりお待ち申し上げます。


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  編集後記
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  やっとのことで梅雨が明けました。当館の目の前に広がる海
  は海水浴真っ盛りという状況ですが、よくよく見ると、時折
  海水面が赤っぽくなるような状況に出会います。赤っぽい
 ときは、それほど気にしなくても良い場合が多いのですが、
 これが茶色かったりすると魚や貝などに重大な影響を及ぼす
 可能性があります。赤潮の監視にも気を引き締めて取り組ん
 でいきたいと思います。池や川でのサンプリングも面白い
 シーズンですので、これからの季節、実に充実した毎日を
 過ごすことができそうです。最後になりましたが、新潟県
 中越沖地震で亡くなられた方々のご冥福と、被災地の一日も
 早い復興をお祈り申し上げます。      (末友)
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     ゆう交流館内
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FAX:0827-62-0156(24時間受付)
  E-mail:micro@shiokaze-kouen.net
  HP: http://shiokaze-kouen.net/micro

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●次号の配信日は8月26日です。お楽しみに!

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やサービスの充実に努めてまいります。皆様のご意見、ご感想
等、お待ちしております。
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発信元: 岩国市ミクロ生物館
メールマガジン担当 (文責): 末友 靖隆

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