岩国市ミクロ生物館

岩国市ミクロ生物館 メールマガジンバックナンバー

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 このメールは、過去にミクロ生物館主催のイベントに参加された
 皆様、およびミクロ生物館からの情報配信を希望された皆様に
 お送りしています。各種お問い合わせ、配信停止についてはこの
 メールの後方をご覧ください。
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■━━━━━━  岩国市ミクロ生物館ニュース  ━━━━━━■
          ---  第16号  ---

 * * * * * * * * ミクロの世界にようこそ! * * ** * * * * *

“本誌はミクロ生物好きな方のネットワークづくりのサポートを目的と
して発刊されました。ここでしか得られない情報など特典盛りだくさん
で毎月26日(26日が火曜日の場合は27日)に配信いたします。
ぜひご活用ください!”


<目次>

 ☆ ミクロ生物スペシャルコラム
     “土の中にはゾウリムシがいますか?”
        宮城教育大学環境教育実践研究センター
                     准教授  島野 智之

 1】 “赤潮プランクトンマップをつくる会”新規会員募集中!

 2】 原生生物カードゲームの第2弾セットは5月上旬発売開始!

 3】 原生生物の世界を映像で楽しめるDVDが完成しました!

 4】 5月、6月のミクロ生物館体験学習会開催日のお知らせ

 ◎ 編集後記


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         ミクロ生物スペシャルコラム
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    ***** 土の中にはゾウリムシがいますか? *****

  島野 智之 (SHIMANO Satoshi)
       宮城教育大学環境教育実践研究センター 准教授

 「ゾウリムシのなかまは、どこにいると思いますか?」という質問に、
多くの方は池や湖水と答えるでしょう。もちろん間違いではありま
せん。でも、土の中にゾウリムシの仲間が住んでいると言うことを、
ご存じの方はどのくらいいらっしゃるでしょうか。

 実は、土の中は原生生物のもう一つの生息場所なのです。そして、
それが私の研究している生き物なのです。

 個体数を調べるために、培養と統計を用いて個体数を推定する
MPN法を使用すると、原生生物のひとつであるゾウリムシの仲間
(繊毛虫類)が、草原の地表近くの土壌1gには、2万個体から20万
個体が生息していることが明らかになりました。1gの土壌とは、大人
の小指の先ほどの土です。アメーバも同じ1gの土壌には、1万個体
ほどがいるようです。彼らの多くはシストといって、硬い殻のような
構造を身体の表面につくって、すこし小さく丸くなって休眠状態を
とっています。そして、いつもは乾燥に耐えて、自分たちが生きていく
のに最適な条件ができたときに、再び活動体になります。もちろん、
ゾウリムシ(学名: Paramecium caudatum)は、水中にしか生息して
いません。ゾウリムシはシストを作ることが出来ないと考えられている
からです。繊毛虫類のなかでも、シストをつくって、土壌中で乾燥に
耐えられる種類だけが、土壌中に生息していると考えられています。
このことは、いったん乾燥した土壌に水を加えると、3日後には、
ひとめでわかるほど多くの繊毛虫類が泳ぎ出していることを、簡単に
実験できることからもわかります。

 それでは、ゾウリムシの仲間のごく一部のものだけが、土壌に生息
しているのでしょうか。どうもそうでもないようです。水棲の種との共通
種は、予想以上に多くの種類が含まれるようです。土壌からは、これ
までに2000近くの種が、新種として記載報告されています。また、
土壌に生息する繊毛虫種の70%近くがまだ、名前もついていないと
言われています(未記載種であると考えられています)。残念ながら、
現在の日本には、水生陸生に限らず繊毛虫類を研究する分類学者
は少なく、これまでは、野外種、特に土壌から見つかる種は、名前も
よくわからないと思われてきました。

 さて、私はこれまで土壌動物について研究をしてきました。土壌
動物とは、土壌に生息する生物のうち環形動物(ミミズ・ヒメミミズ)、
節足動物門(ダニ・トビムシ)、緩歩動物門(クマムシ)、軟体動物門、
線形動物門(自由生活性を含むセンチュウ類)などの分類群の動物
で、文字通り土壌または、土壌に堆積した落葉や、有機物などの
植物遺体に生息する動物のことをよびます。多くは微生物との相互
作用を通じて有機物分解過程に作用するので、狭義の分解者である
微生物に対して、広義の分解者として捉えられています。

 土壌に生息する生物は、これら土壌動物と、土壌微生物とがいると
一般に考えられています。しかし、土壌に生息する土壌原生生物は、
これまで日本でも土壌動物や土壌微生物と比べるなら、非常に
少ない研究しかありませんでした。つまり、土壌生態系において、
土壌微生物(主としてバクテリア)を中心に摂食する原生生物は、
ミッシングリンクとされてきたのです。そこで私は原生生物についての
研究が必要だと思い、研究をはじめたというわけです。

 なぜ、そのようなことが起きたのでしょうか。おそらく、過去の動物
の研究者は微生物学的手法が必要となることや、繊毛虫類のような
身体の柔らかい単細胞生物の取り扱いなどに苦労したことでしょう。
また、微生物学者は、形態によって種を同定しなければならない
繊毛虫類のような、原生生物の取り扱いに苦労したのではないで
しょうか。しかし、近年、分子生物学的手法が、土壌生態系の分野
でも用いられるようになりました。そのひとつが、直接土壌からDNAを
抽出する手法です。もちろん、これだけで土壌中の原生生物の生態
が明らかになるわけではありませんが、研究のための大変に有効な
ツールであることは間違いありません。

 さて、おそらく皆さんが感じている疑問について、私は、まだ触れて
いないのではないかとおもいます。その皆さんが感じている疑問と
いうのは、土壌にたくさんの数のシストとして生息している繊毛虫類
は、「どのような条件が整えば、活動体として動き出すのですか?」
「なにが、最適な条件なのですか?」という疑問ではないでしょうか。

 答えの一つは、「乾燥している土壌に、雨が降るなどの水分が加え
られたとき」です。通常は、土壌団粒中には、実は我々が通常に
考えるより多くの間隙水が保たれているようです。そして、繊毛虫類
などは、これら間隙水の中で生きていくことが可能であるといわれて
います。しかし、よく乾燥した土壌に水分が加えられたときには、
まず、土壌中のバクテリアが増殖します。そして、これを捕食する
繊毛虫類も、 (1)活動体として動けるだけの間隙水が増加し、
(2)周囲の餌が増加に合わせて増殖を開始するようです。この場合
には、これらが条件の好適化の大きな部分であるといえそうです。

 答えのもう一つは、植物の根が伸張するときに、潤滑剤として分泌
される根端からの多糖類などが含まれた分泌液と出会ったときです。
毎日伸びていく植物の根のひとつひとつから、栄養分の含まれる
分泌物が土壌のあちこちに分泌されます。それは、周囲のバクテリア
を増加させ、そして、バクテリアは原生生物の餌となります。土の下の
植物根圏において、このような生態系があること、そして、そこでは
原生生物が中心となって植物の生長を促しているらしいことが、近年
明らかになってきたのです。さて、ここからが、本当は一番紹介を
したいところなのですが、大変に残念なことですが、原稿用紙がなく
なってしまいました。また、次の機会に、植物と微生物と原生生物の
秘密について、一緒に考えてみたいと思います。

 ここまで読んでいただいて、ありがとう御座いました。またお会い
するときまで、土の中にも沢山の原生生物がすんでいることを、
ときどきは思い出してくださいね。彼らは、芝生の土、公園の林の土
など、おそらくどんな土の中でも、あなた方に見つけてもらえる時を、
ワクワクしながら待っているのですから。


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1】 “赤潮プランクトンマップをつくる会”新規会員募集中!

ミクロ生物クラブ「赤潮プランクトンマップをつくる会」では、新規会員
を募集しています!

瀬戸内海では、40年くらい前から赤潮による漁業への被害は大きな
問題となっています。そこで、“赤潮プランクトンマップをつくる会”では
2006年7月より、主に瀬戸内海沿岸で見つかる赤潮プランクトンの
分布を調査し、赤潮プランクトン分布図を作成しています。

あなたも“赤潮プランクトンマップをつくる会”のメンバーになり、身近
な海の環境を知り、自然環境との共生のあり方を考えてみませんか。
現在の参加者は、男性7名、女性3名(うち中学生3名、20代
4名、40代1名、60代2名)です。

募集期間: 2007年5月12日(土)まで
応募方法: 下記までお問い合わせください。郵送にて資料をお送り
します。

*お問い合わせ先*
岩国市ミクロ生物館 ミクロ生物クラブ担当まで
電話: 0827-62-0155
FAX: 0827-62-0156
メール: micro@shiokaze-kouen.net

詳しい情報は“赤潮プランクトンマップをつくる会”ホームページを
ご覧ください。
http://shiokaze-kouen.net/micro/club/akashio/


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2】 原生生物カードゲームの第2弾セットは5月上旬発売開始!

原生生物カードゲーム“単細胞遊戯マイクロ王”の第2弾セットの発売
時期が5月上旬に決まりました! 第1弾に輪を掛けて深みを増した
カードたち。それらから学び取れる知識を全て身につければ、あなた
も立派な原生生物研究者です!

現在品切れで通信販売受付を停止している第1弾セットも同時に販売
が再開されます。販売開始は当館のホームページにて告知します。
ご期待ください。


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3】 原生生物の世界を映像で楽しめるDVDが完成しました!

先月よりアナウンスしておりました、原生生物の世界を鮮明な映像で
お楽しみいただけるDVDがこのたび遂に完成致しました。第一弾は
藻類・鞭毛虫・アメーバ編です。

優雅に泳ぐミドリムシや自在に変形しながら這いまわるアメーバなど、
さまざまな原生生物たちの姿を目で楽しみながら学べます。

対象は小学校高学年以上、価格は1,500円(予価)となっております。

何から何まで手作り感あふれるDVDですが、どうか温かい目でご鑑賞
いただけましたら幸いです。小・中学校の授業にも最適です。

販売開始は当館のホームページにて告知します。

ミドリゾウリムシやラッパムシ、ツリガネムシなど、繊毛虫たちの世界
をお楽しみいただける第二弾も現在鋭意製作中です。こちらもご期待
ください!


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4】 5月、6月のミクロ生物館体験学習会開催日のお知らせ

5月、6月のミクロ生物体験学習会開催日は以下の通りです。

5月4日(金)、5日(土)、26日(土)、27日(日)

6月23日(土)、24日(日)

時間: 15時〜16時30分
定員: 各4組様 (1組あたり4名様まで)
参加費: 1組につき800円

詳細情報・ご予約は電話( 0827-62-0155 )、またはホームページ
http://shiokaze-kouen.net/micro/info/page126.html
まで。

皆様のご参加、心よりお待ち申し上げます。


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  編集後記
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 赤潮の原因になることで有名なヤコウチュウ(夜光虫)。先月末頃
 から彼らを頻繁に目にするようになりました。ヤコウチュウの生の
 姿をご覧になられたい方は、いつでもミクロ生物館にお立ち寄り
 ください。その日海から陸揚げされたばかりの新鮮なヤコウチュウ
 たちが皆様のお越しをお待ちしております。海を臭くしてしまうこと
 で有名な彼らですが、その姿はなかなか愛らしく、豚のお尻と尻尾
 で表現されることもあるくらいです。
 号外に掲載する予定のスペシャルコラムにつきましては、こちらで
 準備が整い次第配信させていただく予定です。ご期待ください。
 (末友)
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住所:〒740-1431
      山口県岩国市由宇町有家浦 潮風公園みなとオアシスゆう
      交流館内
電話:0827-62-0155 (受付時間:9:30〜17:30)
FAX:0827-62-0156 (24時間受付)
  E-mail:micro@shiokaze-kouen.net
  HP: http://shiokaze-kouen.net/micro

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●次号の配信日は5月26日です。お楽しみに!

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サービスを充実させてまいります。ご期待ください。ご意見、ご感想、
どしどしお待ちしております。
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メールマガジン担当 (文責): 末友 靖隆

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