岩国市ミクロ生物館

岩国市ミクロ生物館 メールマガジンバックナンバー

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 このメールは、過去にミクロ生物館の行事に参加された皆様、およびミクロ生物館から
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■━━━━━━━━━━  岩国市ミクロ生物館ニュース  ━━━━━━━━━━■
              ---  第13号  ---

    * * * * * * * * * * ミクロの世界にようこそ! * * * * * * * * * *

“本メールマガジンはミクロ生物好きな方のネットワークづくりをサポートすることを
目的として発刊されました。ここでしか得られない特別な情報など、特典盛りだくさん
で毎月26日(26日が火曜日の場合は27日)に配信いたします。ぜひご活用ください!”


<目次>

 ☆ ミクロ生物スペシャルコラム
    “「顕微鏡下のふしぎ」に魅せられて”  高知大学理学部 教授  松岡 達臣

 1】 ミクロ生物館 今春までに何が変わる?

 2】 原生生物に関するセミナーが山口大学(吉田キャンパス)で開催されます

 ◎ 編集後記



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            ミクロ生物スペシャルコラム
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         ***** 「顕微鏡下のふしぎ」に魅せられて *****

    松岡 達臣 (MATSUOKA Tatsuomi)    高知大学理学部 教授


 僕は、ミクロ生物館のある由宇町のとなりの周東町で生まれ育った。もともと理科は
好きな方だったが、水中の微小な生き物に特別な興味を抱いたのは中学1年のときの
夏休みであった。きっかけは、夏休みの自由研究であり、小中学生向きにやさしく書か
れた「顕微鏡下のふしぎ」という本であった。毎日、家の近くの田んぼを覗き込み水を
とってきては、友人から夏休み中借りっぱなしの顕微鏡で微生物をさがし、この1冊の
本をたよりに種類を調べたものだった。きれいなのを見つけると、何とか美しい色や形
を残したままの永久標本をスライドガラス上に残そうと苦闘したのだが、うまくはいかな
かった。短い夏休みが終わり、僕の科学者のまねごとも終わった。顕微鏡下の静かな
世界の印象と科学に馳せた思いは、その後の現実的な学生生活の中に埋もれて
いった。経済学部にでも入ってどこかの会社に就職して----。大学受験も近くなった
ある秋の夜、ひと息ついて本棚にあった「顕微鏡下のふしぎ」を引っ張りだして読み始め
たときのこと。あの夏休みのことが鮮明に呼び覚まされ、本を棚にもどした明け方には
生物学コースを受験することを決心していた。

 大学4年の卒論研究のとき、研究室の先生にブレファリスマという繊毛虫を見せて
もらった。ゆっくり泳ぐ鮮やかなピンク色をしたこの大きな繊毛虫から受けた大きな衝撃
は言葉ではうまく表現できないが、今から思えば、この美しいピンク色は、中学生のとき
顕微鏡下に探し求めたまぼろしの原生動物だったような気がする。そのとき僕は、
ブレファリスマを使って研究ができたらどんなにいいだろうと思ったのだが、すぐに
それは実現した。大学院に入ってから、ブレファリスマが光に反応するというささやかな
発見をしたのだった。そして英語で論文を書いた。これが僕の最初の論文であり、研究者
としてのデビューであった。論文にするほど価値がある発見のようには思わなかったの
だが、論文を書かないと博士の学位がとれないので、ずいぶん苦労したあげくやっとの
思いで論文を完成させた。ところが、その後しばらくして想像だにしなかったことがおきた。
世界中の多くの光生物学者や光物理化学者たちがブレファリスマの光受容の研究を
始め、ブレファリスマ類の光受容研究は光生物学の重要な一領域にまでなってしまった。

 光受容分子(ピンク色の色素)の構造や光受容の分子メカニズムの解析のためには
膨大な量のブレファリスマが必要となる。毎日500 mlフラスコ10本以上も培養し遠心して
は集め、塊で1 mlものブレファリスマを毎日回収しすりつぶして分子レベルの解析に使う。
この頃から僕はブレファリスマを何匹ではなく、塊で何mlという単位でみるようになって
いった。顕微鏡で眺めることもほとんどなくなった。あれから15年くらいたった今、外国の
研究者との競争も終わり光受容の研究もひと段落ついた。僕は昔のようにまたブレファ
リスマを細々と培養し、のんびり顕微鏡で眺めながら、1匹、2匹といった具合に数えて
いる。


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1】 ミクロ生物館 今春までに何が変わる?

ミクロ生物館の映像展示が増強されます! 既存の映像展示のように、大画面の迫力は
ありませんが、顕微鏡展示と組み合わせることで、小粒でもピリリと辛い、魅力ある展示を
行っていく予定です。今春までには新規展示物の更新等が完了する予定ですので、皆様
どうかご期待ください。

また、ネイチャーラボの利用方法が少し変わりました。ご利用いただける日時がより幅広く
なりましたので、これまで以上にご利用いただきやすくなりました。学術研究からクラブ
活動、個人的な趣味の実験など、さまざまな用途にぜひご活用ください。

上記2点の他にも、皆様からお寄せいただいたさまざまなご意見をもとに、ミクロ生物館は
今後も進化し続けてまいります。ご期待ください。


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2】 原生生物に関するセミナーが山口大学(吉田キャンパス)で開催されます

演題: 繊毛虫テトラヒメナの核アポトーシス
演者: 東 浩(金沢大学大学院自然科学研究科生命科学専攻 助教授)
日時: 平成19年2月8日(木) 17:50 - 19:20
場所: 山口大学(吉田キャンパス)理学部1号館 第22講義室

講演内容:
 ゾウリムシやラッパムシという生き物の名を知らない人は日本ではほとんどいないと
いってよいくらい有名な生物である。一方、それほど有名ではないテトラヒメナは、研究者
の間ではようやく認知され、ゲノム解析もほぼ終了し、モデル生物としての地位を占め
つつある。彼等は原生動物繊毛虫類に分類される単細胞の真核生物だが、その実像は
あまり知られていない。繊毛虫類は単細胞のボディプランを維持したまま進化を続けて
きた生物であり、また極度に特殊化した進化戦略を採用してきた生物であると言える。
 繊毛虫類は同一の細胞質内に、生殖系列である小核と体細胞系列に相当する大核と
いう2種類の核をもつことが特徴である。繊毛虫では接合と呼ばれる有性生殖過程を
経て次世代が作られる。このとき、受精核から新たに新大核が分化するが、同一細胞質
内には一時的に3種類の核が共存することになる。すなわち、親由来の旧大核、子孫の
受精核由来の新小核と新大核である。繊毛虫の子孫細胞は、卵と精子のような細胞の
融合をすることなく、接合を終えると分離して親の細胞質をそのまま引き継ぐため、選択
的に旧大核が取り除かれる必要が生じる。この過程はプログラム核死(PND)あるいは
核アポトーシスと呼ばれ、プログラム細胞死(PCD)との関連が注目されている。テトラ
ヒメナのプログラム核死研究の現状、特にミトコンドリアの主要な役割を紹介する。

山口大学の教職員向けのセミナーですが、今回は特別に、本メールマガジンをご購読
いただいている一般の方もご参加いただくことが可能です。皆様多数、ご出席下さい。


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  編集後記
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 今回、コラムをご執筆いただいた、高知大学の松岡達臣教授は、ミクロ生物館のある
 山口県岩国市のご出身です。ミクロ生物館のある山口県東部地域周辺は、松岡先生
 の他にも、私が存じているだけでも2名の著名な原生生物研究者のご出身地である
 ことから、生物学の研究や理科教育活動に適した、全国屈指の素晴らしい環境である
 のかもしれません。この素晴らしい環境を利用して、さまざまな実験・研究活動を行う
 ことができるネイチャーラボを、個人や組織の研究活動に、学校のクラブ活動に、皆様
 もぜひご活用ください。皆様のご利用、心よりお待ち申し上げます。   (末友)
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  E-mail:micro@shiokaze-kouen.net
  HP: http://shiokaze-kouen.net/micro

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●次号の配信日は2月26日です。お楽しみに!

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させてまいります。ご期待ください。ご意見、ご感想、どしどしお待ちしております。
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メールマガジン担当 (文責): 末友 靖隆

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