岩国市ミクロ生物館

岩国市ミクロ生物館 メールマガジンバックナンバー

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 このメールは、過去にミクロ生物館の行事に参加された皆様、およびミクロ生物館から
 の情報配信を希望された皆様にお送りしています。
 各種お問い合わせ、配信停止についてはこのメールの後方をご覧ください。
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■━━━━━━━━━━  岩国市ミクロ生物館ニュース  ━━━━━━━━━━■
              ---  第11号  ---

     * * * * * * * * * * ミクロの世界にようこそ! * * * * * * * * * *

“本メールマガジンはミクロ生物好きな方のネットワークづくりをサポートすることを
目的として発刊されました。ここでしか得られない特別な情報など、特典盛りだくさん
で毎月26日(26日が火曜日の場合は27日)に配信いたします。ぜひご活用ください!”


<目次>

 ☆ ミクロ生物スペシャルコラム
    “ゾウリムシはレースのカーテンの宇宙船” 石巻専修大学 教授  芳賀 信幸

 1】 赤潮研究の現場を見学してきました!
   〜「赤潮プランクトンマップをつくる会」活動報告 〜

 2】 “ミクロ生物館 交流掲示板”のご利用(無料)が可能になりました

 ◎ 編集後記



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             ミクロ生物スペシャルコラム
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       ***** ゾウリムシはレースのカーテンの宇宙船 *****

     芳賀 信幸 (HAGA Nobuyuki)        石巻専修大学 教授 


 私の仕事は、「生き物」をある断面で切り取って見ることです。といっても、ナイフ
などで実際に切るのではありません。生きたままで、細胞の内部の仕組みを調べること
です。
ゾウリムシは目で見ると白い点のようにしか見えません。ところが、顕微鏡で
拡大して見ると、とても美しい姿が見えてきます。特に、微分干渉顕微鏡という特別な
顕微鏡を使うと、生きたままで原形質流動や繊毛の動きなどをリアルタイムで見ること
ができるようになります。私は毎年、これを2年次の学生さんに見せて、感想を聞きます。

 「宇宙船が、星空をゆっくりと進んで行くようだ」 (女子)
 「レースのカーテンが風になびいているように、繊毛が動いていた」 (男子)


 微分干渉顕微鏡で見たゾウリムシの細胞には、小さな粒子の流れや、一定のリズムで
収縮する円形の構造、神秘的な影をたたえた大きな核、などたくさんの構造体が見え
ます。とても躍動感あふれる世界です。

 「たった一個の細胞でも、こんなに複雑な世界になっているんだ」 (女子)
 「これが、ゾウリムシの生命か。自分の命とはどんな関係になっているんだろう」(男子)


 「生物」をある断面で切り取ったときに見える新しい輝き。これは、「生命」に対する
偏見や誤解が解き明かされた瞬間であります。この時、生物学者は一つの大きな「矛盾」を
乗り越えたという感動を味わいます。私は顕微鏡を見ながら、生きているゾウリムシに
注射をするという方法で、細胞の一断面を切り取ってみました。そして、ゾウリムシの中を
流れる時間について、新しい輝きを見つけたのです。その輝きはあるタンパク分子に象徴
されていました。その分子はゾウリムシの「幼少時代」を決めている働きをしていました。
これまで、どの生物にも見つかっていなかった分子なので、イマチュリンと名前を付け
ました。イマチュリンとは、「未熟にするもの」という意味です。実際、成熟したゾウリ
ムシにイマチュリンを注射するとその細胞は、未熟に逆戻りするのでした。


 私は、ゾウリムシの中を流れる時間に興味を持っていたので、「幼少時代」のゾウリムシ
と「成人」ゾウリムシを使ってさらに詳しく実験をしました。その結果、「幼少時代」の
時間は核の中に痕跡を残しながら流れている、ということがわかったのです。さらに、
ずっと後になって、細胞の中を流れる時間の速度は細胞内部の場所によっても異なっている
ことがわかりました。これは、私の学生が調べ上げた殊勲の成果です。彼は、核、細胞質、
細胞の表面構造、繊毛などの働きを約1000回分裂まで継続的に調べました。そして、それ
ぞれの場所の老化する程度を比べてみました。その結果、それぞれの働きには、老化する
速度に遅い、速いの違いがあったのです。あたかも、時間が速く流れている場所とゆっくり
流れている場所があるかのように、です。


 「矛盾」に対する感性を磨きましょう。「矛盾した現象」には私たちの先入観や思考の
過ちを見直させてくれる力があります。私たちが観察する対象の中に「矛盾」の存在を
見つけることこそが、科学の第一歩ということになるのです。そして、その「矛盾」を
克服するたびに、新しい世界が立ち現われてくる、ということを科学の歴史は教えて
くれています。


 そうこうしているうちに、30年以上もゾウリムシとの付き合いが続き、その間に、私は
「筋の通った教科書的な話」よりも、「矛盾に満ちた研究成果」の方にずっと引かれる
ようになりました。微分干渉顕微鏡で、ゾウリムシを見ていると、彼らは時々立ち止
まったり、頭部をゆっくりと回転させて進むべき方向を探しているかのように見えたり、
急に思い立ったように後ろ向きに泳ぎだしたりします。彼らのこんな行動を見ていると、
だれでもきっとゾウリムシは思考し、学習する能力を持っているのではないか、と思うに
違いありません。
実際、何十年も前に、ゾウリムシの学習能力を調べた人たちがいたのです。しかし、この
問題はまだ解決されてはいません。


 「まるで、何かを考えながら泳いでいるようだ」(男子)
 「泳いでいる姿には知性を感じる。強く引きつけられるものがあった」(女子)

この感想を残した二人が卒業して、もう10年が経ちました。
誰か、ステキなアイデアで、この問題にチャレンジする人があらわれてこないかと、私は
期待しています。でも、ゾウリムシの知性を研究するのはとても大変なことでしょう。
少なくとも彼らよりは優れた知性を持っていないと、結局は、理解できなかった、という
結論に終わってしまうからです。ヒトはゾウリムシよりも高い知性を持っていると私たち
は考えます。ですが、それも先入観の一つに過ぎないのではないかと思ったりすると、
なおさらゾウリムシの知性問題には興味が尽きません。



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1】 赤潮研究の現場を見学してきました!
   〜「赤潮プランクトンマップをつくる会」活動報告 〜


「赤潮プランクトンマップをつくる会」の佐野と申します。
当会では、これまで、独立行政法人水産総合研究センター瀬戸内海区水産研究所赤潮
環境部の松山幸彦研究員のご指導のもと、赤潮プランクトンについて学習や観察を行って
きました。

活動を通じて赤潮の現状を知り、数々の赤潮プランクトンと出会っていくうちに、「ぜひ
赤潮研究の現場を見てみたい!」という思いがわいてきた当会の会員たちは、今回
ついにミクロ生物館を飛び出して、瀬戸内海区水産研究所を見学させていただきました。

見学会では、松山先生から研究所の概要について説明を受け、所内を案内していただき
ました。
最先端の研究や電子顕微鏡を始めとした大がかりな研究機器を目にし、会員一同いつも
以上の緊張と興奮でいっぱいでした。
個人的には、赤潮環境部だけで20台以上はあるというグロースチャンバーの立ち並ぶ
光景が特に頭に焼きついています(うらやましくて)。

また、松山先生一押しの“ウミヘビ”のように泳ぐプランクトン(Gymnodinium catenatum)
を顕微鏡で観察させていただきました。
この予想外の不気味な形と動きに、さすがの会員たちも大半の顔が引きつり、「もう
見られない」という者もおりました。
しかし、「おもしろい!何時間でも見ていられる」と喜ぶ女性会員もおり、プランクトンも
人間も奥深いものだと思いました。

当会にとって今回のような館外活動は初めてのことでしたが、赤潮研究の現場を体感
することができ、とても有意義な経験をさせていただきました。
またみんなで学習や採集に出かけていきたいと思います。
最後になりましたが、このような素晴らしい機会を作ってくださった我らが講師、松山幸彦
先生に心より御礼申し上げます。

                       赤潮プランクトンマップをつくる会
                         佐野 明子


※当会の情報はミクロ生物館のホームページに紹介されています。
・活動内容について
http://shiokaze-kouen.net/micro/info/page133.html
・今回の見学会の写真など
http://shiokaze-kouen.net/micro/news/page243.html


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2】 “ミクロ生物館 交流掲示板”のご利用(無料)が可能になりました

 2006年11月25日より、ミクロ生物館の運営する電子掲示板、“ミクロ生物館
交流掲示板”のご利用が、当館のメールマガジン“岩国市ミクロ生物館ニュース”
ご登録者(新規登録者含む)に限り、可能になりました。
もちろん、登録、参加ともに無料です。

本掲示板は、微小生物やミクロ生物館に関心のある方どうしの情報交流を目的に設置
したもので、数ヶ月前より、ミクロ生物クラブ会員限定で暫定開放してまいりました。
このたび、登録者であればどなたでもご利用いただけるようになったことで、利用の幅が
更に広がることを期待しております。

それでは、実際の活用例を見てみましょう。


Q) 中学生Tさん
キートセロスとそうでないケイ藻の見分け方を教えて下さい。

A) 専門家Mさん
キートセロスは学名のとおりにトゲが生えた珪藻ですので、無色透明なトゲがゲジゲジの
ように細胞の縁から生えているものは、大小に関係なく全部キートセロスと見て間違い
ないです(例外はコレトロン)。このトゲは体が沈みにくいように水の抵抗を増やす作用が
あるとともに、動物プランクトンに食べられにくくするなど(栗の実の原理です)重要な
役割を果たしています。我々のプランクトンネットを目詰まりさせる常習犯でもあります。


このように、日常生活から研究活動の場に至るまで、さまざまなところで湧き上がる疑問
を、ひとりで悩むことなく、他の掲示板登録者からの懇切丁寧なアドバイスによって実に
スッキリ解決することができるのです。

また、“○月○日に○○で微小生物に関するフォーラムを開催します”など、微小生物に
関するさまざまな情報を共有する場として掲示板を活用することも、もちろん大歓迎です。


メールマガジンを登録されている方は、メールタイトルに

“ミクロ生物館交流掲示板登録申請”

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 ご氏名(必須):
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をご記入のうえ、岩国市ミクロ生物館メールアドレス
micro@shiokaze-kouen.net
まで、お送りください。

ご連絡いただいてから折り返しメールにて、パスワードと掲示板ご利用方法に関する
ご連絡を差し上げます(多少、日数がかかる場合がございますが予めご了承願います)。


メールマガジンを登録されていない方は、当館のホームページ
http://shiokaze-kouen.net/micro/info/page127.html
より、メールマガジン登録に合わせて、お申込みいただけます。
(メールマガジン購読されていない方は掲示板をご利用いただけません)


活用方法はあなた次第。専門家から小学生まで、皆様のご参加、お待ち申し上げます。

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  編集後記
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 今月の17日から19日まで、第39回日本原生動物学会大会が佐賀県にて開催され、
 私も参加してまいりました。会員数何千人という大規模な学会ではありませんが、規模
 が大き過ぎないぶん、参加者の誰もがすぐに顔見知りとなれるので、誰もが真剣に、
 かつ楽しく議論できる、実に内容の濃い3日間を過ごすことができます。今年の発表、
 講演も、例年に引けをとらぬ魅力的な内容ばかりで、本メールマガジンや館内展示にて
 全ての発表テーマを紹介させていただきたくなるほどでした。今回の大会で得たことは、
 ミクロ生物館の今後の展示や活動に大いに活用していく予定です。ご期待ください。
 それから、忘れてはならないのは20日に岩国で開催された“公開講演会”と、原生動物
 学会関係者による“ミクロ生物館見学会”。こちらの模様につきましても今号にて
 レポートさせていただきたかったのですが、容量の関係で掲載できませんでした。
 次号のメルマガで掲載させていただく予定です。        (末友)
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●岩国市ミクロ生物館 お問い合わせ先
住所:〒740-1431
      山口県岩国市由宇町有家浦 潮風公園みなとオアシスゆう交流館内
電話:0827-62-0155 (受付時間:9:30〜17:30)
FAX:0827-62-0156 (24時間受付)
  E-mail:micro@shiokaze-kouen.net
  HP: http://shiokaze-kouen.net/micro

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●次号の配信日は12月25日です。お楽しみに!

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岩国市ミクロ生物館ニュースは、これからもご提供する情報やサービスを充実
させてまいります。ご期待ください。ご意見、ご感想、どしどしお待ちしております。
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発信元: 岩国市ミクロ生物館
メールマガジン担当 (文責): 末友 靖隆

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