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岩国市ミクロ生物館
岩国市ミクロ生物館 メールマガジンバックナンバー
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暑い夏の日々、皆様いかがお過ごしでしょうか。暑い中、仕事に、勉強に、家族のために
毎日頑張っておられる皆様に、ささやかなプレゼントをお贈りします。
<目次>
☆ ミクロ生物スペシャルコラム
藻類: 生物進化の「のぞき窓」
筑波大学大学院生命環境科学研究科教授 井上 勲
◎ 編集後記
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ミクロ生物スペシャルコラム
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***** 藻類: 生物進化の「のぞき窓」 *****
井上 勲 (INOUE Isao) 筑波大学大学院生命環境科学研究科教授
藻類という生き物の面白さは、想像もしなかったいろいろな性質や現象を見せてくれる
ことである。なかでも、微細藻類と呼ばれる単細胞の生き物たちは、生命現象の不思議
の宝庫である。顕微鏡の下で繰り広げられるさまざまな現象は見ていて飽きない。
くねくねと変幻自在に形を変えるミドリムシ、光に向かって優雅に泳ぐ群体ボルボックス、
水面に立ち上がって、入射する光を反射して黄金色に輝くヒカリモ、互いに滑りあって
南京玉すだれのような運動をする珪藻の群体、ハプトネマという名の細い糸を使って
細菌などを捕らえて食べるハプト藻など、枚挙にいとまがない。文字で伝えるのは難しい
が、形もいろいろで、特に走査型電子顕微鏡でみれば、多様で精緻なミクロの造形に
溢れている( http://www.biol.tsukuba.ac.jp/~inouye/ino/phycological_images.html を参照)。
単細胞の藻類たちになぜこれほどの多様性があるのだろうか。卒業研究でつきあいを
始めた1970年代には、藻類は「下等な植物」というのが大方の理解だった。しかし、この
30年の間に藻類の多様性への認識は大きく変化して、現在では、藻類は生物進化を
理解するための「のぞき窓」として重要な役割を果たしている。生物観の革命的な変革期
を渦中で体験することができたことは、稀に見る幸運だったと思う。
世界中の研究者の努力で、生物の世界について明らかになった重要な事実が二つある。
1) 真核生物が独立性の高い数十の生物群から構成され、私たち動物もそのなかの一つ
にすぎないこと、そして、2) 光合成を行う生物が真核生物の複数の系統で独立に出現した
ことである。これらが意味することは、真核生物の多様性の大部分は、原生生物あるいは
プロティスタと呼ばれる単細胞の生物にあり、藻類の大部分もプロティスタに属していると
いうことである。
異なる系統に分散して藻類が存在するのは、光合成を行う生物が細胞内共生といわれる
現象によって生物の間を移動した結果である。生物進化の秘密の一つは、シアノバクテリア
という細菌で生まれた光合成が、細胞共生を通じて、複数の進化の道筋を横断して受け
継がれていることである。シアノバクテリアを細胞内に取り込んで葉緑体を獲得した生物が
真の意味での植物である。緑色植物(木や草を含む)と紅色植物(アサクサノリなど)など
で、一次植物と呼ばれる。植物に一次も二次もあるものかと思われるだろうが、それがある
のである。一次植物の緑色と紅色の植物を取り込んで新たな植物になる進化的現象があり、
二次共生と呼ばれ、その結果として新たに生まれた植物を二次植物と呼ぶ。コンブなどの
褐藻や珪藻が二次植物である。二次共生の発見によって、動物と植物という一般に理解
されている生物の枠組みは完全に崩壊し、生物の世界は、これまでとは異なる視点で理解
しなければならなくなった。藻類をのぞき窓として使うことで、融通無碍で、ダイナミック
な進化が見えてくるのである。
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編集後記
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今回のスペシャルコラム、いかがでしたでしょうか。目に見えない世界の広大さ、
というよりも、目に見える世界が実は全体の一部に過ぎないということに驚かれた
方が多いのではないでしょうか。コンブのような海藻が、実は草花とはとは全く異なる
起源というのも、初耳の方が多いのではないでしょうか。本コラムに対するご意見、
ご感想を大募集お待ちしておりますので、ミクロ生物館 micro@shiokaze-kouen.net
まで、どしどしお送りください。お待ちしております。
次号のスペシャルコラムもご期待ください! (末友)
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●次号(第8号)の配信日は8月26日です。お楽しみに!
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メールマガジン担当 (文責): 末友 靖隆
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